Lv4.ぼっちだってコンプがしたい! 第二章
「確かにタラクエではレベルを上げ過ぎた! ツインテールでは主人公を弱いままにしてしまった! 格闘ゲームだって純粋に楽しんでなかったさ! けど、けどこのゲームは違う!」
自分がこの世界……『ポケットデビル 苦労の書』に連れてこられたことを認めたくない俺は、イライラしながらラボちゃんに詰め寄っていかに自分がこのゲームを愛していたかを説明する。
「当時はまだネットも俺達には扱えなかった時代! そんな中、学校の友達と情報交換をしあったり、対戦したり、交換したり、通信ケーブルだって買った! そうして俺はデビル図鑑を完成させたんだ! なあそうだろ黄龍、あの時の俺は輝いてただろ?」
「えーと、小学校高学年の時? そうね、確かにあの時クラスの男子はポケデビばっかやってたわね、女子も何人かやってたくらいだし。アタシは外で男子と一緒にサッカーがしたかったから不満だったけど、皆すごく楽しそうだったわ」
「とにかく、俺はこのゲームに対する落ち度なんてない! 何なら当時流行っていたデビル666匹言えるかな? を歌ってやろうか!? メッチイルシファー……」
小学校時代の思い出を語る途中に心も小学生になってしまったのか、悪魔の名をすらすらと並べだす俺。突然の豹変ぶりに皆唖然としていたのかポカーンとしながら俺の歌を聞いていたのだが、100匹くらいでいつまで歌ってるんだと黄龍に殴られてしまった。
「ちゃんと666匹全部歌わせてくれ! 途中でやめたら呪われる!」
「うるさい音痴」
「みみがこわれちゃうよー」
「……あなたがこのゲームに並々ならぬ想いを持っているのはわかったわ。あなたが原因なわけじゃないから安心しなさい、強いていえば逆恨みね」
どんよりと曇った原宿の空を見ながら、死神の癖に慈愛に満ちた顔をするラボちゃん。いや、彼女は死神ですらないけど。
「確かにこのゲームは、ゲーム史を語る上で外せないくらい大ヒットしたわ。収集要素、育成要素、勧善懲悪だけではない、善悪を考えさせるシナリオ、秀逸な戦闘バランス……発売から10年以上経った今でも、最新のゲームに見劣りしない面白さ。後続のゲームに色々なノウハウを教えたゲームだけど、良い事ばかりじゃないの」
「良い事ばかりじゃない? そんなことはない、ポケデビは神ゲーだ」
「例えば、バージョン商法。出てくるデビルがちょっと違うだけ、主人公が違うだけのゲームを複数バージョン出して、特典までつけて全て買わせようとする……1つのソフトでは決して図鑑を埋めることができない、酷い商売ね」
「うっ……」
確かにこのゲームがヒットしたせいで、その後しばらくは似たようなゲームが乱発された。テリ犬のような名作だって産まれたし、メカロットやロボピョン、ピストルレシピのような佳作だって産まれたけれど、サンリクタイコネット、クォーツハンターのような駄作だってたくさん産まれた。しかもそのほとんどがバージョン商法を搭載していた。根源のポケデビはまだマシな方だ、苦労の書と別バージョンである悪化の書では主人公が明確に違うし、シナリオだって違う。けれど後続の亜種ゲーは、ちょっとデータが違うだけの別バージョンを恥ずかしげもなく複数出して、特典をつけることで何本も買わせようとしたのだ。その尤もたる例が、カードゲームの勇気王だろう。リアルで使える限定カードを餌に、手に入るどころか使えるカードが違うという有り得ないバージョン違いのゲームを売りさばいたのだから。
「じゃあなんだ、依頼人は女の子向けに発売したはいいがメインのユーザーが男の子ばかりだったためにあまり売れなかった悪化の書の主人公、奏過去か!?」
「いえいえ、悪化の書だって十分すぎる程に売れたわ。……ところで、あなたこのゲームの図鑑を全部埋めたって言ってたわよね。どうやって埋めたの?」
「そんなの、本編をやり込んで、悪化の書を持ってる友達と交換したり、合体したりして埋めたよ」
「友達がいない人はどうすればいいの?」
「……は?」
質問の意図がわからず混乱する俺。どうしてポケデビの話から、友達の話になるのだろうか。
「今はいいわよね、ネットが普及してるし。家に引きこもっていても、パソコン使って交換だってできるし、対戦だってできる。でもね、昔はそうじゃなかった。他人と通信がしたいなら、通信ケーブルと、通信してくれる相手が必要なの」
「そんなの当たり前じゃないか」
「もう一度言うわ。友達がいない人は、どうやってこのゲームを楽しめばいいの? 自分一人じゃ図鑑も埋められないし、対人戦を前提にしたバランスなのにCPUとしか戦えない、そんなゲームで!」
「そんな事言われても……」
「クラスの皆がこのゲームで盛り上がる中! 自分もやっているのにその輪に入れず、ただただ一人で育成している、そんな可哀想な子の気持ちがあなたにわかる?」
憐れむようにそう語るラボちゃん。気づけばその横には、真っ黒なオーラを身にまとった小学校高学年くらいの男の子がいた。
「……ねえねえ、見てよお兄ちゃん。僕こんなにデビル育てたんだよ、珍しいのばかりだし、皆強いんだよ。だから戦おうよ、交換しようよ、うええええええん」
よく見れば一人だけじゃない。俺達の周りには、小さな女の子や大人の男性とみられる、同様に真っ黒なオーラを身にまとった人達がうろうろしていた。
「図鑑が埋まらない、完璧主義の私が、図鑑を埋められない。どうして? それは、友達がいないから……」
「大人になってもゲームやってるなんて恥ずかしくて、一人でこっそりやってたけど、やっぱり寂しいよう、誰か相手してくれよお」
「くそ、リア充死ね、雑魚が、お前等のパーティーより、俺の方が強いだろ、くそっ、くそっ!」
見ているだけで居た堪れない気持ちになる連中を眺めながらラボちゃんはため息をつき、
「そんなわけで今回の依頼人は、ぼっちゲーマーの悲しみにより生みだされた残留思念達よ。この世界に大量にいるから、手当り次第交換したり対戦したりして絆を深めなさい」
「悲しい依頼だな……」
俺がこの世界でやるべきことを説明する。自分が何も悪いことをしていないとはいえ、ゲーマーの友達もいるし、最近恋人まで出来た人間がぼっちの相手をするというのは息苦しい。
「ていうか、この人達で交換したり対戦し合えばいいじゃない。ほら、そこの二人、年も近いし仲良くしなさい」
とりあえずどうするべきかと俺が考える中、近くにいた小学校高学年くらいの男女を捕まえて対面させ、二人で遊ばせて成仏させようとする黄龍。
「……」
「……」
頭の弱い黄龍にしてはまともな解決策だなと感心していたのだが、二人とも無反応。
「無駄よ、この人達は互いを感知できないの。あなた達が何とかするしかないわ」
「同じ境遇の人間が側にいるのに気づかず、孤独なままか……」
「しょうがないわね、お姉さんが遊んであげましょう。さあ、勝負よ。デビルとやらを出しなさい、全員倒してあげるわ」
残留思念もちゃんとした人間と遊びたいということだろうか。それならばと女の子に勝負を挑もうとする黄龍。女の子は懐から銃を取り出すと、地面に向けてそれを撃つ。この世界におけるデビルの召喚方法だ。魔法陣から赤い馬に乗った赤い騎士、ベリトが参上する。
「……行ける!」
「いけねえよ、そういうゲームじゃねえよこれは。こっちもデビル召喚して戦うんだよ。……つっても俺達デビル持ってないっぽいな。まずはデビルを捕まえて、育成しないと駄目ってことか。全力で戦って勝たないと、満足してくれないだろうしな」
ビビることなくベリトと戦おうとするその勇気は称賛に値するが、このゲームにおける俺達の役割は剣や銃を用いて戦う戦士ではなく、デビルを育てるトレーナー。
「交換もしないといけないんだったな、くく、骨が折れそうだ」
「その割には随分楽しそうね」
「そりゃ思い出のゲームだからな。カッコいいデビルを育てて戦う、男のロマンよ。うし、最初の一匹は近くにある学習塾で貰えたはずだから、とりあえず手分けしてデビルを集めることにしよう。あーちゃんは一人じゃ不安だろうから、ラボちゃんと行動ってことで。連絡はこの各自が持っている小型のパソコンでできるはずだから」
「わかったわ。アタシも何だか燃えてきた、強いパーティー作るから対戦しましょ」
最初の一匹としてケルベロスを手に入れた俺は、依頼人を満足させるため、童心に戻って楽しむため、凶悪なデビルが蔓延る魔界へと赴くのだった。
テリ犬……テリーのワンダーランド。くさったにくを未来の自分にあげよう
メカロット……メダロット。割と息が長い
ロボピョン……ロボットポンコッツ。漫画の奇乳っぷりが酷い
ピストルレシピ……ビストロレシピ。エロい
サンリクタイムネット……サンリオタイムネット。サンリオの闇
クォーツハンター……クロスハンター。漫画が有名
勇気王……GBの遊戯王4。曲芸商法と肩を並べる酷さ
自分一人じゃ図鑑も埋められない……妹もGB持ってたので、一人二台使って埋めました^^




