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011 眠らないで見る夢

昨晩、僕は自分の母親から…、

「彼女が、熱を出している」と言う話しを耳にしました……。

僕の記憶の中に存在する彼女は、

体調が悪い時にはいつも、不安で押し潰されそうな表情をしています。

『今回も、不安そうな顔をしているだろうな…』

不安そうにしている事を指摘すると直ぐ怒り出す彼女の事を思い出し、

僕の中で笑いが込上げてきて、何だか一人、にやけ…、

どうせ今直ぐには会いに行けないので、

その夜は彼女を喜ばす事を考えながら、そのまま寝ました。


翌朝、僕は…、早起きして出掛ける支度を整えます。普段なら…、

13時からの面会時間に少しフライングする程度の時間に家を出ますが、

今日は珍しく、数時間早く出る事にしていました。


今日は、彼女の夢の実現に向けて、

「小さな夢の欠片」を「具現化」した様な「プレゼント」を用意しようと、

僕は病院に向かう前に買い物に出掛ける事にしています。

『きっと、歓ぶぞ!』

彼女の笑顔を思い浮かべ、僕は期待を膨らませていました。


部屋を出る前、彼女の為にオーダーした「花束の注文書」を持ち、

女友達に教えて貰った「アクセサリーショップの地図」を携え、

颯爽と自室を出て行きます。


気の早過ぎる母が、彼女用に準備した愛らしい部屋の前を通り、

母好みに華美にデコられている廊下を通り過ぎ…、

気を使って通らなければイケナイ階段を下り…、

これまた、乙女チック仕様の玄関へと向かいます。


家を出る前に僕の母が僕に気付いて、

『ママね…義理の兄妹の恋愛って嫌いじゃないから』と、

心なしか、いつもよりハイテンションで、

「ロマンスコミック」片手に、いつもの盛大な御見送りをしてくれます。


ハーレクイン好きの僕の母親は、

僕と彼女の間にロマンスを求めてくれていたりするのです。

正直、その事に関して…吝かではありません。寧ろ本望です。

僕は…、彼女が自分から僕の事を異性として好きになってくれたなら、

「結婚前提に全身全霊で受け止めよう」と思うくらいに好きなのです……。


そして「僕が彼女をどれくらい好きなのか」は、

彼女には…まだ、内緒です……。

「謝礼」の様な「好き」は嫌だから、とか周囲に言いながら…、

僕の彼女に対する気持ちと行動はいつも、少しばかり裏腹、

若干矛盾しまくりだったりしてるかも知れません……。

彼女には僕の事を何にも制約されず、自ら好きになって欲しいけど…、

他人に横取りされるのは嫌なので…、

雰囲気で推察した「彼女に思いを寄せる相手」には圧迫感を与え…、

密かに「退場」して頂いてしまっているのは…、

彼女にだけは「秘密」の方向で御願いしています……。


と、余談を挟み…、快晴の青空の下、心地よい風吹く中…、

僕は地図にある、

商品の品質に定評のあるアクセサリーショップへと突き進みます……。


そして、女友達推薦の店に到着すると、

僕は店内を見回し、迷わずカウンターに足を向け、

趣味の良さそうな服装の女性店員さんの一人をキープしました。


彼女の部屋のカレンダーに、

こっそり記入されていた「僕と彼女が出会った1周年記念日」まで、

後、数日しかありません。

それに気が付くのが遅れて、シフト変更が間に合わなくて、

当日、バイトで…確実に、面会時間内に会いに行けない僕は、

「奮発して高価な物を選んでもいいだろう」と…、

女友達に相場を聞き出し、予算は多めに準備、

更に昨日の彼女の体調不良も考えて、品質の良い物を選びたかったのです。


だからまず、プレゼントを贈る相手の体の弱さを伝えてから、

彼女が「ピアス」を欲しがっていた事、ピアスに憧れを抱いていても、

彼女にはまだ「ピアスホール」が無い事と、予算を告げて、

僕が選んだ女性店員さんに、選ぶのを手伝って貰う事にしました。


更に感染症を考慮して、

健康になってからでないとピアスホールを開けられない現実、

彼女を「家の子」にして、

健康体にするまでには、まだまだ、必要だと判断し、

「劣化しにくい材質の商品」が欲しいのだと告げました。


店員さんに対し…ある程度、事情を細かく相談すると…、

一般的に考えると…、金属アレルギー対策を考え、初ピアスは…、

「18K以上」もしくは「ステンレス製」のが御勧めなのだそうですが…、

『大切な子へのプレゼントなら「24K」又は「PT900以上」』を推奨、

『妥協はしない方が良いわよ』との事……。

これは、応援してくれている女友達全員の意見でしたが、

僕が選んだ店員さんも同意見だったので、その範囲で選ぶ事にしました。


それから僕は、店員さんと相談しながら、

彼女へのプレゼントを「天使」モチーフでPT900のピアスに決定しました。

それを綺麗にラッピングをして貰い。

僕は、今までの人生で一番の高価な買い物を済ませ、

現実に触れる事のできる「彼女の夢の一部」を入れた小さな袋を持って、

病院へと足を向けました。


病院の前に辿り着くと、

救急外来の出入り口付近に停まった「洋型霊柩車」を目にしました。

それを見て、少し不安になりながら正面入り口から病院に入り、

何時もの様に、その近くにある病院内の花屋と、

喫茶店の店員に声を掛けます。そのどちらの女店員も、

彼女への見舞いに来るようになってからの顔馴染です。


病院の花屋は基本、花を除菌したり、花粉を除去してくれたり

患者に配慮した花を準備してくれるので…、

彼女へ贈る花は、ここで買う事が望ましく…、

喫茶店には時々、早く来過ぎて…病棟に入れて貰えない事があるので、

割合的に2~3週間に1回は、ここへ顔を出しています。


面会時間くらいから混み出す花屋と喫茶店は、まだ空いていました。

まだ、面会時間開始までには時間があるのです。

僕は窓辺の席に陣取り、ランチセットを食べながら…、

さっきから気になって仕方がない、

救急外来の出入り口前の「洋型霊柩車」を見詰め、

意味も無く、見た事も無い老夫婦を見送りました。


その後は、いつもの時間まで、何故か苛苛しながら時間を潰し…、

「洋型霊柩車」を見てから続く不安に駆られ…、勘定を済ませ、

注文していた花を受け取ってから、決死の思いで走り出します……。

振動を少なくする為に遅く設定されたエレベーターがモドカシク…、

ボタンを押したモノの、待ち切れず…、結局、彼女が居る筈の病棟の、

彼女が入院する階まで、階段を駆け足で登りました……。


僕は、眠らないで見る夢が、悪夢でない事を祈りながら走ったのです……。

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