戦後処理、からの異常《回復魔法》
『ヘッ! ヘッ! ヘッ! ヘッ! ヘ!』
息を切らすような軽快な息遣いだけが聞こえる中、アセリアは気絶していた。
「うっ・・うーん・・・・」
間の抜けた声を上げ、目を覚ますアセリア。
(ワふっ? ここは? 私はどうなったのだ?)
彼女は瞼を未だ閉ざした状態で、ゆっくりとその頭を覚醒させながら気絶するまでの記憶を思い出していた。
どこからか聞こえるテンポの良い息遣いを片方の耳からもう片方の耳に流しつつ、アセリアそのまま閉じた瞼をゆっくりと広げる。
そして目を開けたアセリア目の前には
『ヘッ! ヘッ! ヘッ! ヘッ! ヘ! ワふっ!!』
アセリアの顔を覗き込む真っ白な犬? が舌を出しながら元気よく吠えた。
「わへっ?」
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『ワふっ!』
「ワへ?」
元気のいい鳴き声と間抜けな声が俺の耳に入った。
声のする方向からするにどうやらハティアちゃんのお姉ちゃん、アセリアさんが起きたみたいだな。
なので
「おっ?! お姉ちゃん起きたみたいだよハティアちゃん」
現在寝そべっている俺の背中で、寝ているサクラとモミジを見てくれていたハティアちゃんに声をかける。
ハティアちゃんは俺の声に耳をピンッとたて、四つん這いで俺の頭の上まで来ると
「ワふっ?! 本当?!」
嬉しそうな顔をしながらそう聞いてきたので
「おう、見てきてみな」
尻尾をブンブンと振っているハティアちゃんにそう言うと、ハティアちゃんは巨狼状態の俺の背中からピョンと飛んで一目散にアセリアさんの元へと駆けていった。 速っ・・・・
「あんな全速力で・・・・よっぽど嬉しいのねハティアちゃん。」
「それは、そうですよクレア姉さん。 たった一人の姉が目を覚ましたんですから嬉しくないわけないじゃないですか。」
「お、 もう終わったのかクレア、ノア」
走り去って行くハティアちゃんと入れ替わるようにクレアとノアが歩いてきた。 二人にはゴブリンに捕まって服を剥ぎ取られていたコボルト達(主に雌)の服を作って周ってもらっていたのであった。
「ふふふ、服を作って着せるだけなんだから直ぐ終わるわよ。ねえ、ノア」
「ええ、私達のやれることはそれだけですし。それに一番の問題である治療についてはあれらがやってくれていますから全然大丈夫ですからね。」
「いや、ものみたいに言わないでよノア。 一応、というか多分? 俺の一部みたいなものなんだから、あれ。」
「失礼、以後気をつけます。」
「でも本当、なんなのあの子達? 」
「さあ?分からん。」
「分からん、って・・・・あれ出したの貴方でしょヤシロ。」
「確かにあれ出したのは俺かもしれないけれどさ、俺にもなんなのかさっぱりわかんないんだよね。 ・・・・・・っま、害はないみたいだし別に気にしなくていいんじゃない。」
「「いや、それでいいの?」」
俺の適当な対応に突っ込みを入れる二人を横目に俺は現在目の前で横にしているコボルトたちの間を行ったり来たりしている元真っ黒、現在何故か真っ白になっている謎の狼たちに視線を向けた。
(というか本当になんなんだろうなこの狼達。)
そう思う俺の目の前で謎の狼達はコボルトの間を移動し、それぞれ重症のコボルトを見つけては傍に寄り添うように座り、何故か《回復魔術》を使いコボルトを癒したかと思うとしばらくしてまた移動するということを繰り返していた。
(うん、本当になんなんだろうな、何故か《回復魔術》使えてるしそれに使ったら何でか俺みたいに真っ白になるし・・・・ん?俺みたいに?もしかしてステータス見れば何か分かるんじゃねえのか? ん?)
考え事をしている俺の足を誰かがつついた。そっちの方に目を向けるとそこにはいつのまに来ていたのか一匹の謎の狼が見上げるようにこちらを見ていた。
「どうしたお前? ん?」
つついてきたその狼をヤシロはその場で屈んで優しい手つきで撫でた。そして撫でた際その狼が何かを咥えているのに気づいたかと思うとその狼は咥えていた何かをそっと地面に置いた。
狼が咥えていたもの、それはというと
「糸?」
糸であった。しかも見覚えのある、というかよく知っているその糸はどうみてもクレアのものであった。
「何でクレアの糸を・・・・」
ヤシロが不思議そうにそう呟くや否や、今度は目の前の狼が何故か点滅するように発光し始めた。
「へッ ヘッ ヘッ ヘッ ヘ!」(ピカー、 ピカー、 ピカー、 ピカー)
「いやなんで点滅してんだよお前。
タイマーか? 活動限界一分前ですって言う合図なのか?」
そんな冗談を言ってみるが目の前の狼は舌を出しこっちを、というか現在俺の手の平にあるクレアの糸を交互に見ながら何かを訴えかけるように見つめていた。
・・・・・・・・もしかして
「この糸に俺の《回復魔術》を使えっていってるのか?」
「ウォン!!!」
何気なく口に出した予想にまるで肯定するかのごとく吠える狼。
「まじか・・・・何が起こるんだ?」
俺は手に持ったクレアの糸と目の前の狼を交互に見たあとクレアの糸をグッと握り《回復魔術》を使用した。 すると
「うお!? なんだ!?」
黒狼から《回復魔術》を仕様状態の淡く光る白狼になったヤシロ。そしてその手に握られているクレアの糸も同じように淡く光りだしたかと思うとまるで導火線のように白い光が糸を伝わって行き出した。糸を伝っていく淡い光りはまるで管を流れる水のように糸に伝わっていったかと思うと、途中で分岐し更に分岐しどんどんとその数を増やしていった。増える淡く光る糸達、そしてその糸の先には未だ傷が癒えていないコボルト達がいた。
「まさかこれ全部のコボルトにつながってんのか?!!」
ヤシロはその手に握られている糸を顔まであげながら目の前の狼達が持ってきた糸の正体に驚きの声をあげたそれと同時に、糸を伝わっていった《回復魔術》がコボルト達に届きその体を淡い光が包み込んだ。
重傷者、軽傷者含めて五百を越えるコボルト達が一斉に淡い光りに包まれ辺り一帯はまるで閃光弾が爆発したかのごとく眩い光に包まれたかとおもった次の瞬間
「・・・・・・まじか」
俺は目の前で起こったその光景に無意識にそう呟いてしまった。 なぜなら
ざわざわざわざわ・・・・・・・
にわかに周り騒がしくなり、次々と先程まで地面に寝かされていたコボルトたちが起き上がり始めた。
そしてその体には先程まで痛々しく残っていた傷がまるで幻だったかのように一切なくなっており当のコボルト達もまるで夢でも見ていたかのような不思議な顔をしながら自身の手や足、体に触れ一部ではお互いの体を交互に触りながら先程までついていた傷がないことを確かめ合っていた。
「・・・・《回復魔法》、すげえな、おい」
「いや、《回復魔法》がすごいというよりもあなたの方がすごいと思うんだけど」
手に持っているクレアの糸と完全に回復したコボルト達を交互に見ながらそう呟く俺に隣にいるクレアから何故かツッコミが入った。
「え? なんで? すごいのは《回復魔法》じゃねえのか?」
「あのねえ、《回復魔法》もすごいけれど、これだけのコボルト達を一斉に、しかも完全に回復させるなんて普通じゃできないわよ、しかも完全に回復させることができたとしても普通は一人二人が限界の筈なんだけれど。
しかも、よく見なさいよ。あれ!」
「あれ?」
そう言ってクレアが指差した方向に目をやるとそこには他のコボルト達よりも少々大きなコボルト達(約一体倍以上の巨体がいる)が他のコボルト達と同じように五体満足な自身の体を不思議そうに眺めていた。
えっと確かあいつらってはティアちゃんとは別の部族のコボルト達の族長達だったけ? あれ?そういえばあいつらって確か全員どこかしら欠損があったような・・・・・
「・・・・すげえな《回復魔法》。欠損も治せるんだ」
「治せないよ普通は‼︎」
「ヤシロ、《回復魔法》は最高でも深い切り傷か切断面の綺麗な手足をくっつけて治すのが限界です。なのに欠損部分までもが再生するのはおかしい・・・いえ、異常です。」
はっきりと「異常」と発言するノア。
・・・・・・・・・・・・ちょっと傷つくな。
「異常って・・・・・・でも現に治ってるんだからどうしようもないじゃん」
「そりゃあ、そうだけれども」
俺がそう返すと今度はクレアが何か不服そうな顔をしながらこちらを見る。 不覚にだがちょっとかわいいと思ったのは内緒だ。
俺がそんなそんなアホなことを考えていたそんな時
「父上‼︎ 母上‼︎」
辺りに響くような悲壮感漂う叫び声が聞こえた。
そちらの方に目をやるとハティアちゃんと先程目覚めたお姉ちゃんそしてフォウロ君他知らないコボルト三人がいまだ横になっている二人のコボルトのそばに集まっていた。
なんだろう?
半年近くお待たせして申し訳ありません。
これからも学園転移の方の応援よろしくお願いします




