コボルトVSゴブリンVS人狼 3
ああー、やっちまった。
そんなことを思う俺の目の前には俺より大きなゴブリンが頭部分を地面に埋めた状態で逆さまになっていた。
ハティアちゃんのお願いでハティアちゃんの家族、というか一族をとりあえず助けるため、逃げた(逃がした)ゴブリンを追ってゴブリンの群れを見つけたまでは良かったけどさ。
まあ、その後がいけなかったな うん。
とりあえずわざと逃がしたゴブリンを頭から急速に凍らせて砕いてハティアちゃんのお姉ちゃん探すために呼んでみたらまさか目の前にいるとは、しかもなんかでかい豪華なゴブリンに捕まってついでに全裸で。 いや少し服残ってたから半裸か? どっちでもいいか。
まあとりあえず カッとなってやった。反省も後悔もしていない!
開き直った犯人みたいなことを思いながら目の前で地面にめり込んでいるゴブリンを見るヤシロ。 その肩にはまるでどこぞの武闘家のように腕を組んでめり込むゴブリンを見下ろすノア、ゴブリンがアセリアに何をしようとしていたのか、同性としてそれを感じ取ったためかその眼には隠しようもない嫌悪が見て取れる。
そんな二人の後方ではクレアがゴブリンから解放したアセリアをどこから取り出したのか毛布で包み込み片手で何かを作りながら寄り添っていた。 そして毛布で包まれたアセリアは状況がまだ飲み込めてないのか先程までの冷静な表情が何処かへと行き目を白黒させていた。
「ど、 どうなってるにゃ・・・お前達はいったい誰にゃ?」
アセリアが絞り出すようにそう口にする。 ・・・・・・おかしな語尾をつけて。
「誰って・・・、俺達はただお願いされてあんたらを助けに来た通りすがりの人「せいや!」(ゴキン!!)ろぉげぇ?!!」
某破壊のライダーのようなことを言いながら体ごと振り向こうとしたヤシロ、しかし肩に乗ったノアがいきなりかけ声と共にヤシロの首を反対側に回した。
変な悲鳴を上げながら180°一歩手前、約120°程首を回されたヤシロは奇っ怪な声を上げたがなぜか普通に立っていた。 そして
「ちょっとノアさん?! いきなり首を回さないでくれませんかねえ?! 一瞬綺麗な川が見えたんですけど?!!」
そう言いながら未だに首を反対側に回した状態で押さえつけているノアに抗議していた。
普通首をほとんど反対側に回されたら死ぬと思うのだが、ヤシロは全然平気そうだった。
(ちょっと臨死体験しているみたいだけど。)
「ヤシロ、どんな反論をしても無駄です。あなたは見ず知らずの女性の裸を故意でないとはいえ見ようとしたのです。 だからこれは正統な行為です。それでも見たいというのであれば住処に帰ってから私がじっくりと見せてあげますので我慢してください。」
何気に自身の欲望を言ったノア、それを聞いたクレアが「私も忘れないでね♪」とさらっと参戦を希望。
そんな二人にヤシロは「ちょ、ちょっと待って!!」と焦り、 近くで聞いていたアセリアは「にゃ、にゃにゃにゃにゃにゃ?!!」とまたもや『違うだろ』という語尾で顔を真っ赤にし目をぐるぐる回していた。
そんな中耳の良いコボルト達(主に男)数人が自然とイチャつく三人を見て血の涙を流しながら歯を食いしばり嫉妬のオーラを出しながらヤシロを睨んでいた。 そのオーラにびびったのかコボルト達を押さえ込んでいるゴブリン達が若干引き気味である。
そんなカオスの中先程から片手で何かを作っていたクレアの指が止まり
「できた!」
そう言いながら作っていたもの、おそらく服であろうそれを持ちながら、先程から毛布一枚を羽織っているアセリアの方を向き
「せいや!(バサッ!!)」
「へ? ・・・・・・ニャアああああああああ?!!!」
毛布を剥ぎ取った。
毛布を剥ぎ取られたアセリアは自身がしっかりと握っていた毛布が何の抵抗もなくスルッと抜けたことに一瞬呆けたあと、自身の今の素っ裸の状態に気付き驚きに似た悲鳴(?)を上げた。 (というかコボルトですよね?)
そんな彼女の悲鳴(?)が響き渡る中、クレアはというと
「そーれ っと!」
クレアの手が一瞬ぶれたかと思うと手に持っていた服は消え、そのかわりにいつの間にかアセリアは服を着ていた。
「あああああああああ!! ・・・・・・あれ?」
悲鳴(?)の後にまたもや呆けた声を上げるアセリア。
それもそうだろう。 素っ裸にされたと思ったらいつの間にか服を着ているのだから。
「へ? あ? え??」
何が起こったか分からず自身の体を見て狼狽えるアセリア。 そんな彼女にクレアは笑顔で声をかけた。
「どう? きつくない?」
「え? あ っはい ・・・全然きつくないです。」
「良かった! 即興手縫いだからちょっと手抜きになっちゃったから心配だったんだけど。」
そう簡単に言うクレア。
でもね、どう見ても手抜きには見えないよクレアさん。
現在アセリアの着ている服は旅館などで目にする浴衣、そしてその浴衣は帯まで真っ白で確かに彼女の言うとおりぱっと見手抜き見える。 しかしよく見ればところどころに雪の結晶のマークがならんでおり、はっきり言って『本当に手抜きか?』と聞きたくなるような出来栄えであった。
「うんうん、よくできてるできてる♪」
そういって満足そうな顔をしているクレアに対し、俺の頭の上で俺の首を回した状態で乗っているノアがどこぞの少女漫画のような顔をしてクレアを見て呟く。
「即興手縫い・・・しかも手抜きでこれ・・・・・・クレア姉さん恐るべし!」
「いやノア、『恐るべし』の前にそろそろ手を離してくれない? 首が元に戻らなそうなんだけど?」
「あ、ごめんなさい。」
そう言いながらノアは俺の頭を固定していた手を外したので首を元に・・・元に・・・・・・元に・・・・・・・・・・・・戻らねえ・・・。
「ねえ ノア、 俺の首元に戻らねえんだけど どうすんの、これ?」
「・・・・・・(スッ)」
「いや、目をそらさないでノアさ「せいや!」(バキン!)ぐおおおおおお?!!!」
首を急に元に戻され、驚きと痛みが混じった変な叫び声を上げるヤシロ。 不意打ちで喰らったためか、少しふらついたが倒れるようなことはなかった。
そんなヤシロは首の後ろに手を当てながら涙目で未だ肩に立っているノアに文句を言う。
「ノアさん?!! 戻すときは一声かけて?! お願いだから!!」
涙目でそう言いヤシロに対しノアはというと
「分かった。 それじゃあ首、戻した。」
「戻す前に言って?!! 一声かけて!お願いだから!!」
不意打ちで首を元に戻しやノアに注意するヤシロ、それを見て口に手を当てながら肩を震わすクレア。 そしてそんな三人を見てどうすればいいのか分からないコボルト達とゴブリン達というちょっとした混沌な状況の中、その異変は起こった。
ぴく
それは本当に小さな異変。 先程までピクリとも動かなかった骨鎧のゴブリンの指が微かに動いたかと思うと。
ムク
そんな擬音が聞こえ骨鎧のゴブリンが起き上がり始めた。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
それに直ぐに気付いたのはアセリアであった。
「なに?!!!」
彼女の驚いた声に気付いた骨鎧のゴブリンはそちらを向き少ししたあとニヤリと笑い そして
「犬 ころ が、 よ くも やっ 「うるさい!! もう一回寝てろ!!!」(グオキン!!) てげらああ?!!」
『「「「「「「「「ええええええええ?!!!!!」」」」」」」」』
またもやヤシロに、今度は蹴りを入れられていた。
「だからブレイドホーンの肉は炭火焼きが一番簡単でうまいんだよ!」
「いいえ、ブレイドホーンはそのまま焼いてもおいしいですがやっぱり煮込みの方が一番です。そして骨も丸ごといれていたら煮込み汁も別の料理に使用できるので煮込みが一番です。」
「いや、何の言い争いしているんですか!! というかいつの間に話がブレイドホーンのおいしい食べ方に変わってるんですか!!」
「さっきからよ。 ちなみに私はブレイドホーンは揚げ物一択です。」
「「それだ!!」」
「『それだ!!』じゃないですよ!!」
天然ボケを出す三人に精一杯の突っ込みをいれるアセリア、そんな彼女からはどこか苦労人のようなオーラが出ていた。
「てめえ、一度までならず二度まで「何でだよ?!」(グアキン!!)もぎょ!!」
またもや復活した骨鎧のゴブリンの首に再度蹴りをたたき込むヤシロ、その時
「?」
ヤシロは蹴りを入れたゴブリンに変な違和感を感じた。
そして蹴りを入れられたゴブリンはというと
ググッ ドズン
首が横に90°以上曲がっているはずなのに、倒れるどころか少々バランスを崩した程度で何事もないように立っていた。
「嘘・・・」
後ろで無意識にそう呟くアセリア。
しかしそんなゴブリンにヤシロはその眼を細め静かに呟く。
「回復・・・いや再生している?」
静かにそう呟くヤシロ、骨鎧のゴブリンはヤシロの言ったとおり少しずつだが首が真っ直ぐになっていき数分後にはまるで最初から曲がっていなかったかのように元に戻っていた。 骨鎧のゴブリンはニヤニヤとした表情になりそのまま高らかに宣言する。
「見 たか !! こ れが 最強 の 戦士 で ある 俺の 力 だ!! お前 達 が 俺達 に勝 つこ と で きは な い。 だ か らお とな し く 俺 にひ れ伏 (ズパン!!)せ?」
何かが切り落とされた音と共に骨鎧のゴブリンの片手が地面に落ちた。 そして一拍遅れて響く絶叫。
「ふむ痛みは感じるのか」
そう言いながらいつの間にか手に持っていた鉈で肩を叩くヤシロ。
「当然です。相手だって生き物ですから」
そう言いながらいつの間にかヤシロの肩から下りていたノア、今度はヤシロの尻尾の中に手を入れ
ズッ ズズズズズズッ!!
尻尾の中から身の丈ほどありそうな巨大な錫杖と薙刀を組合わせたような武器を取り出した。
・・・・・・・・・おいちょっと待て。
「何でそんなものが俺の尻尾から出てくるんだ? どう見ても俺の尻尾の中に入らない大きさだと思うんだけど?」
「それはまあ、いろいろとしましたから」
「頑張ったのよそれ。」
「いろいろってなに? 頑張ったって何?! 一体俺の尻尾に何したの?!!」
「「・・・・・・(ふいっ)」」
「無言になるな、目をそらすな二人とも。 答えろ一体俺の尻尾に何をし「死 ねえ !! こ の クソ イヌ があああ!!!!!」(ドゴオオオオン!!!!)」
怒り狂った声を上げる骨鎧のゴブリン。手に持った大剣で未だ尋問を続けていたヤシロの頭にフルパワーで叩きつけた。
「・・・・・・・・・(ニヤリ!!)」
砂煙が舞う中勝利を確信しほくそ笑む骨鎧のゴブリン。
しかし
「危ねえな おい」
「?!!」
そんな声と共に砂煙が晴れた先にあったのはゴブリンの一撃を手に持っている鉈で受け止めている光景であった。
絶句する骨鎧のゴブリンに対し
ヤシロはゴブリンの一撃にものともせずまだクレアとノアに自身の尻尾に何をしたのか聞き出そうとしていた。 が、二人はなかなか口を割らない。
「ハアハア、仕方ねえ。 背に腹は代えられねえ クレア、ノア勝負しようか」
「「勝負?」」
「そうだ、勝負の条件は俺がこのゴブリンを倒す。お前達は二人がかりでこの周りにいるゴブリン倒す。先に条件を満たした方の勝ちという至ってシンプルなものだ。俺が勝ったら俺の尻尾に何をしたのか洗いざらい全部話してもらうぞ!」
「私達が勝ったら?」
「・・・何でも良い、俺ができる範囲で一日何でも言うこと聞いて「「乗った!!」」早っ?!!」
言い終わる前に勝負に参加する二人、こうしてゴブリン殲滅戦の幕が開けた。




