ワン! ワン! ワン!! 2
俺達がコボルト達にあったのは三日前。
ちょうど旧住処である洞窟を出てしばらくしてからのことだった。
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ノッシ ノッシ ノッシ ノッシ ノッシ ノッシ ノッシ
ノッシ ノッシ ノッシ ノッシ ノッシ ノッシ ノッシ
ゆったりとした足取りで森の中を歩く巨大狼
言わずもだがその狼は俺である。
行き先は新住処であり、現在親方達による「居住地計画」で工事を行っているはずの岩壁に囲まれた大森林の中で唯一開けた湖と草原に向かってその足を進めている。
そんな俺の背中では
「ふっふっふ、 今度こそ私が勝つわ ノア(パラ!)」
「ふふ、それはどうですかねクレアさん (パサッ!)」
「ぷるぷる(ぷるぷるぷる!)」
クレアとノアとぷるぷる&目玉が真剣な顔つきで
「・・・・・・スッ」
(ドクン!)
「・・・・・・・・」
(ドクン!)
「・・・・・・・・」
(ぷるるん)
「・・・・・・スッ」
(ドクン!)
「・・・・・・・・」
(ドクン!)
「・・・・・・・・」
(ぷるりん♪)
「・・・・・・スッ」
(ドクン!)
「・・・・・・ピクッ」
(ドクン!)
「・・・・・・・!」
(ぷるぷる)
「スウ・・・・・・・」
(ニヤ・・)
「(キュピーン!!)バッ!」
((?!!))
「・・・っと、見せかけてそこだー!!」
(シュパーン!!)
「っつ! しまった!!」
「(ペラッ!)・・・しゃあ!! そろった!!」
(パサッ!)
ババ抜きをしていた。
「ははは! これで残り二枚! 私の勝ちが見えてきたわよノア!」
そんな宣言をするクレア、その横ではノアが何故か俺の背中に広げているちゃぶ台に突っ伏しながら悔しそうな顔をしていた。
その後高らかに笑い声を上げるクレアにノアは自身のその口の端を歪めながら
「ふっふっふ・・・、クレアさんもう勝った気でいるのですか?
まだ勝負は終わってませんよ!!」
そういってクレアを挑発しだした。
だがそんなノアに対してクレアはというと
「挑発しても無駄よノア! 今度こそ私が一番最初に上がるのだから! そして「一日ヤシロを自由にしていい券」を手に入れるのは私だ!」
「くっ!! しかし私は諦めない! ここから何としてで追い越し、そして「一日ヤシロを自由にしていい券」を我が手に!!」
何やら熱い展開に・・・・・・果たして優勝はどちらの手に!
そして優勝賞品「一日ヤシロを自由にしていい券」を手に入れるのはどちらなのかって・・・おいっ!!!!
「いつの間にそんな賞品決めたんだよ?!! 本人初耳なんですけど!!」
危うく聞き流しそうだったけどそれって確実に本人の了承とってないよね?!
だって俺聞かれてないし!!
そんな俺の突っ込みに二人はというと
「安心してヤシロ、この券は本当に丸一日というものではないの」
「これは、夜の生活を一日独占するという意味の券だから大丈夫ですよ。」
「・・・・・・・・・いやそれでも俺を交えなさいよ。俺の知らないところでそんな話を進めないで頼むから」
そんな俺のつぶやきに二人は「「分かったわ(りました)」」と答えたあとババ抜きを再開し始めた。
それから十分後
「(パサッ)ぷるるるる♪」
ババ抜きはスライムさんと目玉さんのペアの勝利で終わった
「負けた・・・」
「まさか、あそこから逆転するなんて・・・」
クレアとノアが四つん這いになりながら絶望したような表情を浮かべる横では、スライムが頭の上に乗せた目玉さんをまるでジャグリングのように回しながら喜びを表していた。
というかスライム、そろそろ目玉さんをジャグリングするのをやめなさい、目玉さんなんか目を回し始めてるぞ。
まあそんなこんなで俺達はわいわいとしながら新住処を目指していた。
(※ババ抜きの景品はスライムさんがクレアとノアの二人に半分にして渡しました。)
そんな時であった
「ん?」
「どうしたのヤシロ? 急に立ち止まって?」
「いや、何か聞こえ・・・こっちだ」
俺はそう言いながら新住処への道を外れ森の中に入っていく。
「寄り道するのですか?」
背中の上で皆を代弁してそう聞いてくるノア
「ああ、何か気になるんでな。それに今すぐ帰っても俺達にはなにもすることがないと思うし、それなら少しくらい寄り道してもいいだろうし。」
「・・・・・・それもそうですね。それに兄さんなら今帰ったら『じゃま! どっか行ってろ!』っていいそうですしね。」
「さすがにそんなこと・・・・・・いやいいそうね、あの山羊ちょっと建築馬鹿を超えてるし、ヤシロが渡していった工事の計画表、 半分くらい終わらそうとしてそうだし。」
そう真剣な表情でそんな予想を言うクレア。
それじゃあ決まりだな。
「んじゃ、寄り道しますか。」
そういって俺はそのまま森の中を進んでいった。
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ヤシロ達が森の中を進み始めた頃、その先の森ではある二種類の種族が激しい戦闘が繰り広げられていた。
ガン ガン ガン ガギャ!!「ぎゃん?!!」
「ギャッ ギャッ ギャ!!」
甲高い笑い声を上げるのは体長二メートルを超えるゴブリン、その体にはどこからか奪ったのか、レザーメイルを着ていおりその手には円い円盾と刃こぼれしたロングソードを持っていた。
そんなゴブリンに吹き飛ばされた方を見る。
そこには腕から血を流し地面に片膝をつきながらもゴブリンを睨みつけている
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犬がいた。
いや犬と言うには語弊があった。
その犬はどう見ても普通の犬よりもでかい。
しかも二足歩行をしているのか、その前足は五本の指がしっかりとあった。
毛むくじゃらで犬の頭と鋭い爪があり、人間のように二足歩行をする彼らはいわゆるコボルトという種族である。
そんなコボルトの周りでは、先程片膝をついているコボルトとは別のコボルト達が俗に言う石槍を持ってゴブリン達と戦っていた。
そんなコボルトと交戦しているゴブリン達はロングソードを持つゴブリンよりも小さなゴブリンや、更に大型のゴブリン等が数多くおり、戦っているコボルト達はじわじわとその数の多さに押され始めていた。
そんな状況にも関わらずコボルト達は逃げる素振りも見せない。
逆にどれだけ傷つこうとも彼らは己の武器を手に取り立ち上がりゴブリンに向かって行っていた。
何故か・・・・・・それは彼らが守っている者達にあった。
戦っているコボルト達の後ろ、ちょうど崖を背に半円を描くように立ち回っている彼らの中央には十数名の小さなコボルト達がいた。
よくよく見ればその十数名のコボルト達は女と子供のようであり、お互いに抱き合いながら震えるものと、震える手で石のナイフを構える者がいた。
ゴブリン達はその十数名が狙いなのかじりじりとコボルト達を押し込んで行っている。
そして、とうとう
「ギャッ! ギャッ! ギャッ! テコズラセヤガッテ クソイヌドモガ!」
そう耳障りな笑い声を上げながらロングソードを肩に乗せるゴブリン。
そんなゴブリン達の目の前には先程まで必死にゴブリン達に応戦していたコボルト達が全て倒れ伏していた。
「ぐっう・・・」
「オット、マダイキガアッタカ、シブトイヤツメ」
「ぐあっ!!」
呻き声を上げるコボルトの背中を思いっきり踏みつけるゴブリン、そして周りのゴブリン達はそんなコボルトが上げた悲鳴に皆その口の端をつり上げていた。
「オトナシク女、子供ヲワタシテイレバコンナコトニナラナカッタノニ、オ前タチハ馬鹿ダナ
イヤ、馬鹿ダッタカ ギャッ! ギャッ! ギャッ!」
「ぅ、 うるさい・・・我々 は 貴様らに く、屈しない ワン!!」
「ギャギャ!! エラソウナクチヲタタクナ・・・・・・ソウダイイコトオモイツイタ オイ、オマエタチ! 2、3ニン遊ンデモイイゾ」
ロングソードのゴブリンは下卑た笑みを浮かべ周りで笑っていたゴブリン達に命令した。
周りのゴブリン達は一瞬呆けた顔をした後直ぐに同じように下卑た笑みを浮かべ一塊になっているコボルト達の方へと我先にと走っていく。
「や、 やめろ・・・手を、だすな!! ぐるるる!!」
「ギャギャギャギャ!! オ前ハソコデ仲間ガ蹂躙サレルノヲ指ヲクワエテミテイナ!!」
走りゆくゴブリンをどうにかしようとコボルトはその傷だらけの体でもがくが背中を踏みつけているゴブリンの足は一向に緩まない。逆にゴブリンはそんなコボルトを見下すような目で更に足に力を入れる。
そんなことをしている内にゴブリン達は口の端から涎を垂らしながらもどんどんとコボルト達に群がるようにかけていく。
コボルト達はそんな迫り来るゴブリン達に恐怖し目を背けその小さな体を更に縮め自身に降りかかる不運を幻視した
その時
「?」
それに最初に気付いたのは石のナイフを持ち、迫り来るゴブリン達にその目に涙を浮かべ足が震えながらも立っていたコボルトであった。
ぼろぼろの布で隠れたその体はほんのりと凹凸があるに見るに雌なのだろう。
そんな彼女はゴブリン達の頭上に不意に影がささったことにこの場でただ一人気付いた。
そして次の瞬間
「ぬわーーー!!! どけーーー!!!!!」
そんな声が響き迫り来るゴブリン達も身を縮ませていたコボルト達も反射的に声が聞こえた方、つまり頭上を見上げた。
そして
ドオオオオオオオオオオオオオン!!!!
そんな落下音と共にものすごい土煙がコボルト達に降りかかった。
しばしの静寂。
そしてもうもうと立ちこめる土煙の中なにかが動き声が聞こえる。
「げほっ、げほっ、 あー、死ぬかと思った」
「『死ぬかと思った』はこっちの台詞よ! いきなり落ちないでよ! サクラとモミジ落としそうだったわよ!」
「クレア姉さん、スライムさんと目玉さんも加えて下さい」
「ぷ、ぷるるるる~~」
そんな喧嘩声がしたかと思うと少しづつ土煙が晴れ出し声の主が見え始めた。
そしてコボルトは見た、土煙の向こう側
漆黒の巨狼とその背に乗る二人の異形の美女を
そして漆黒の巨狼が辺りを見渡したかと思うと
「どうゆう状況 これ?」
そんな素っ頓狂な言葉と共にその首を捻った。




