おや? 〇〇のようすが・・・
ヤシロ達が洞窟を出発してから約半日。
その頃ヤシロ達の新たな住処では
コーーーン!! コーーーン!! コーーーン!!
コーーーン!! コーーーン!! コーーーン!!
コーーーン!! コーーーン!! コーーーン!!
ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ!!
ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ!!
ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ!!
トン!テンカン! トン!テンカン!
トン!テンカン! トン!テンカン!
トン!テンカン! トン!テンカン!
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木材を加工する音がそこかしらから響いていた。
見ればそこには多くの家屋の骨組みがヤシロが作った家の前から少し離れたところでまるで商店街のように軒を連ねており、その数は百を超えていた。
そんな家屋の上では
「おーい、この木材どこだ?」
「おいそれは向こうの屋根のやつだ、こっちじゃねえぞ」
「誰だ!1階の柱一本持ってた奴は?!」
「すいません!俺で「ばかやろー!」 げぼはあ?!」
「ちゃんと見て持ってけ!!」
大工姿の山羊人達の怒声が響いていた。
そして一人の山羊人が殴られ、綺麗な放物線を画きながら宙を舞っている中、その下では一人の大柄な山羊人・・・・・・ボスが腕組みをしながら建設中の家屋をながめ呟く
「この調子ならあと半日でできるな」
そう呟く大柄な山羊人、そんな山羊人に一人の女性の山羊人・・・・・・姐さんが近づいてきた。
「調子はどう?」
「予定通りだ、あと半日もあれば完成する」
姐さんに呼び掛けに気付いたボスは顔だけをそちらを向けそう言い放つ。
姐さんはボスのそんな返答に驚いた顔をした
「早いわね、ヤシロ君はゆっくりやってもいいって言ってたけど?」
そう言う姐さんにボスは「ふっ」と笑ったあと
「あいつの驚く顔を拝んでみたいと全員思ってるみたいでな」
口の端をつり上げながらそう言い放った。
しかしそんなボスに姐さんは
「本音は?」
「早く作り上げてあいつが言っていたいろんな施設を作りたい はっ?!」
「やっぱりね」
「謀ったな! お前!」
姐さんはそんなボスに呆れた表情を浮かべた後、
「あなたね、それはヤシロ君達が帰ってきてからって言ったでしょう!」
「いやだって、すっごい魅力的じゃん! ジンジャブッカクとかダイセイドウとか、ヤシロから聞いた話だけでもすっごいわくわくすんだぞ俺!」
「神社仏閣と大聖堂でしょ・・・・・・まったく、そういっても現物を知るのはヤシロ君だけなんだからあなたが勝手にやっても分からないでしょう?
それに作りたいならまず計画書に書かれた居住地、それとヤシロ君が言っていた下水道?とかいうものと浄水施設を作りなさいよね」
「下水道ならもう作ってるよ!地面の下にあるから見えないけどよ。それと浄水施設はほとんどできてる、あとはヤシロが帰ってきてから最後の仕上げだ。
それよりも計画書って何だ?」
「・・・・・・あんた本気で言ってんの?ヤシロ君からわたされたでしょ?」
「ああ・・・そういえば行く前になんかもらったなどこ持って行ったっけか げばふう?!!」
「計画書のことも頭から抜かして家建ててたの あなた?」
「あいだだだだ!!! お、折れる!折れるうう!! ご、ごめんなさい!!」
・・・・・・何が起こったか説明しよう。
姐さんがボスの後頭に蹴りを入れ、前のめりに倒れたボスの背中に姐さんはまたがりそのまま流れるように逆えびソリ固めを決めていた。
「あいだだだだだだだだだだ!!! (ボキ!)あっ」
ボスの背中から変な音が聞こえた。
そして次の瞬間
ぎゃあーーーーーーーーー!!!!!!
大音量の絶叫が辺りに響いた。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
パラ パラ パラ
「ふーん、成る程ね」
姐さんが手元の計画書を見ながらそう呟く。
あの後、姐さんの逆えびソリ固めを受けたボスは腰をやって動けなくなり、現在姐さんの下で伸びていた。
姐さんは姐さんでそんなボスの背中に腰掛けながら、先程ボスへのお仕置きを済ませたあと近くにいた山羊人が持ってきてくれた例の工事の計画書をめくっていた。
「うう~、痛え・・・」
「痛くないでしょ?あなたこの程度じゃびくともしないほど頑丈なんだから」
「痛いのは心なんだよ こ・こ・ろ!!」
「それよりもこの計画書なんだけどさ」
「無視しないで?!」
騒ぐボスを無視し姐さんは続ける
「あなたこれ、建物の数と道足りてないわよ」
「・・・はい?」
「だから、足りてないの道も建物も」
「・・・・・・嘘でしょ?」
「本当本当、見てみなさいよ」
そういって姐さんは手元の計画書をボスの目の前に置いた
「ほらこれ、全体の図の中心のこれ、これってあの岩でしょ?」
そういって姐さんは指を指す。
その先には巨大な岩、いや岩と言うよりはもはや小山と行ってもいいだろうその山は見える範囲でその高さ約五十メートル直径は三十メートルはあるだろう、しかもその大岩はさらにそれより大きい湖の真ん中にそびえ立っていた。
「ほらあの岩と湖を中心に道を作るようにこの計画書には書かれてるでしょ?だからあなた、多分これあと半日じゃ終わらないわよ」
計画書にはその大岩と湖を中心に東西南北の大通りと碁盤状の道が書かれており、ぱっと見歴史の教科書の紛らわしい二つの都の古い方にそっくりであった。
そんなことより未だに地面にうつ伏せに倒れているボスは
「フフ、フフフフフフ」
計画書を握りしめながら急に笑い出した。
そして
「おっっっっっっしょあああああああああ!!!!!!」
「きゃあ?!」
思いっきり飛び起き、その反動で背中に腰掛けていた姐さんが宙に投げ飛ばされたがそのままボスにキャッチされた。
そしてそんなボスの大声に周りにいた山羊人達はその足と手を止めそちらを向く。
「ヤシロめ! やってくれるな!」
そういって凶悪な笑みを浮かべるボス。
しかしその笑みは怒りとかではなく例えるならば試練に立ち向かう挑戦者の目をしていた。
「この俺にこんな無理難題をした大きな試練を与えるとはやってくれるなあの小僧! いいだろうその挑戦受けて立ってやろう! そして貴様が帰ってくるまでにここに書かれている全てを終わらせてくれるわ がはっ?!」
「その前に降ろしなさい、このばか!!」
そう宣言するボスに、ボスの腕に抱えられているお姫様抱っこをされ顔を赤くした姐さんからボスの顎へと強烈な拳が突き刺さった。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
バサッ
そんな音を立てながらボスがあるものを羽織る。
それは現代では珍しい半纏、その背中にはクロスした二つの大槌とその真ん中に山羊の絵が描かれていた。
そんな半纏を着たボスの目の前には先程まで家屋を作っていた山羊人総勢三十名がズラリと並んでいた。
「てめえら、すまねえな。
俺がヤシロからもらった計画書をきちんと見てないせいで工事をミスちまった。本当にすまねえ・・・」
そんなボスの謝罪に山羊人達は分かっているのか静かに聞いていた。
「だがな、あいつの計画書、これははっきり言ってむちゃくちゃだ。こいつには今作っている建物そして道を今の十倍以上作るよう書いてあった・・・ はっきり言おう、無理だ!」
しばらくの静寂、しかし山羊人達の顔は変わらない。
そんな仲間達にボスはにっと笑ったあと
「俺達以外はな!! そうだろうてめえら?!!」
『『『『『おーーーーーーー!!!!』』』』』
ボスの確信したようなその言葉に山羊人達はその口元に笑みを浮かべ大地を揺らさんがばかりに叫ぶ
「無茶な工事? そんなんしってらー! だがよー、あの小僧・・・ヤシロが「俺達ならできる」って思ってここまで書いてんだ! ならその期待に答えてやろうじゃねえかよー てめえらーー!!!!」
『『『『『おーーーーーーーーー!!!!!!!!!』』』』』
「よっしゃーー!! それじゃあてめえら現在途中の工事をさっさと済ませな! だけど手は抜くんじゃねえぞ!! 半端な家建てたらぶっ飛ばす!! その後大規模工事、この計画書の「大通り」に取りかかる!
てめえら気合い入れろ!!!!!!!!!」
そんなボスの怒号と同時に山羊人達は走り出し建築途中の家屋を素早くそれでいて丁寧に作り始めた。
そんな中ボスはというと
「さてとそれじゃあ俺は下地を作ってくるか」
そういって計画書に書かれていた道の下地を作るために大岩に向けて歩いて行っていた。
そんなボスの背中を見つめる姐さん、そしてボソリと
「やっぱりヤシロ君の言うとおり、「ボス」というよりは「親方」の方が合ってるわね」
そう言いながらほんのりと頬を赤く染めながらボスもとい親方の背中を見つめていた。
そしてヤシロ達が帰ってきた三日後には計画書に書いてあった大通りが完成された。そしてその近くでは泥だらけになった親方達が死んだように眠っていたとか。
次回、ヤシロさんはあるお土産を連れて帰ってきます




