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学園転移~人狼になった俺の異世界生活~  作者: 蜜柑【オレンジ】
二章 蜘蛛と山羊と始まりと
33/52

幕間 side??? 隻眼の男《前編》

ざっ   ざっ   ざっ   ざっ



薄暗い森の中を一人の男が歩いていた。


男はその体を大きなローブで隠しフードを深く被っており、その表情は見て取れなかった。



ただ唯一、フードの奥から見える瞳が金色に輝いていることだけが見て取れた。







そんな時




がさがさがさ!!





男の近くの茂みが激しく揺れる。

その音に気づき、ローブの男はその足を止めそちらを向く。


がさがさ ぬおっ!!


そんな音が聞こえ、茂みから巨大な


「ぐるるるるるる!!」


六本足の虎が現れた。



六本足の虎は茂みから出て、すぐに男を見つけうなる。

そのうなり声は警戒か、それとも空腹か。どちらかといえば後者だろう、虎のうなる口の端からポタポタと落ちる涎がそれを物語っている。


ローブの男はそんな六本足の虎を前に


「・・・・・」


ただ無言で虎の方を向いていた。

取り乱すのでもなく、喚くのでもなく、男はただ無言で虎の方を向いているだけであった。


そんな男の様子に六本足の虎はうなるのをやめ、その大きな口を広げゆっくりと男を食べようとした。


その時




ズル




男のフードがずれ、その奥に見える金色の瞳が目の前の六本足の虎を写したその時。




ビクッ!





虎は一瞬震え、今し方男を食べようと近づけたその口を急に止め、ゆっくりと戻した。


そして


「く・・・くるるるるるる」


先程とはうってかわって、弱々しいうなり声を上げながら少しずつ後退していった。



男はそんな虎の様子を


「・・・・・」


特に興味もなさそうに見ていた。

そして


シッ シッ


まるで小虫でも追い払うように手を振った。

それと同時に六本足の虎は全力で方向転換し森の中に消えていった。



「はあ・・・」


男からそんな声が聞こえる。

それは安堵なのか、それとも・・・・・。








そんな時、森に大きく響く爆発音が聞こえた。




ドゴッーーーーン!!!!




その爆発音は大気を震わせ男の近く木から一斉に鳥が羽ばたいた。


そんな中男は


「?」


頭の上に疑問符をうかべながら爆発音のした方向を向いた。

そこにはふわふわと黒い煙が立ち上っていた。




「・・・・・」


男はしばし無言の後




ダッ!!


その立ち上る黒煙めがけて走って行った。


















▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



時は少し遡る。


場所は四方を森に囲まれた街道、本来なら静かなその道は現在戦場となっていた。




ガキン!!  ゴキン!!




ワーーーー!!!




剣戟の音と怒声が飛び交うそこには、一台の豪華な馬車を守るように戦う少人数の者達とその馬車を狙う盗賊達との戦闘が繰り広げられていた。



「〈アイスランス〉!!」 ドゴッ! ドゴッ!


そんな戦場の中、綺麗なドレスを着た一人の少女が横転した馬車の上から氷の魔法を放つ。少女の魔法は真っ直ぐに盗賊達に向かっていき盗賊達を攻撃する。

しかし盗賊達はそんな魔法を避けたり、弾いたりして対処していく。


「はあ  はあ」


長い間魔法を連続使用したのだろう、少女は肩で息をしながら悔しそうな顔をする。


「レイスティアお嬢様」


少女の後ろでは心配そうな顔をして少女を見る侍女服の女性。


そんな彼女にレイスティアと呼ばれた少女は、無言で「大丈夫」という目を侍女に向けた。



その時、目の前の盗賊達が声を上げた。


「どうしたお嬢ちゃん? ずいぶんと息が上がっているようだな? それならさっさと降参しな、今なら生きて助けてやるよ」

「ぎゃははは!お頭、そう言って手足もいじゃうんだろ? それならまだ死んだ方がましじゃねえか!」

「そうだそうだ、もぐんじゃなくてつけたままにしてくださいよ」

「うるせえ! そう言ってお前らこの前のすぐに壊したじゃねえか!」

「だってあれ、暴れるからつい」

「だから抵抗できないようにしてんだろうがバカが!」


目の前でそんな残酷なことを言う数十人の盗賊の男達、だがその顔には罪悪感などは見て取れない。



そんな男達の前には、護衛だと思われる剣を構える揃いの鎧を着た兵士らしき者達十名と四人組の冒険者のパーティー。

少ないと思われるかもしれないが、戦闘が始まる前はこの倍の人数がいたが、そのほとんどは



「うう・・・」

「痛え・・、痛えよ・・」

「た・・助けて」


呻き声を上げ兵士姿の者達と冒険者の者達が倒れていた。


よくよく見れば、彼らは全員手足だけが執拗にボロボロで胴体などはほぼ無傷という、明らかに苦しませながら生かすやられかたをしていた。




「なぜ、こんなことをするのですか?」


馬車の上から盗賊達に向けてレイスティアが叫ぶ。


盗賊達はそんな彼女の言葉に一瞬顔を見合わせた後


『ぎゃははははははははは!!!』


全員同時に声を上げ笑い出した。

そんな盗賊達に護衛の兵士達と四人組は意図せず後ろへ下がってしまった。


盗賊達はしこたま笑った後そのまま下卑た笑みを浮かべ


「そんなの決まっているだろう、ただのお遊びだよ、お

あ そ び !!


たまーに、こうやってよ貴族様とか商人とか襲ってよ! 殺して奪ってそんでもって犯して俺達は遊んでんだよ!


ただの遊びに、理由なんてあるのか?!」



絶句




そうとしか言い表せなかった。

こいつらは自分の欲望を満たすためにこんなことをしているのかと。


兵士達ですらそうであった、今まで彼らも盗賊にあったことはある。しかし彼らが今まで会ったのは、生活が苦しくなったりしてやむなく盗賊になった者だったり、楽に稼げるからなった者だったり色々だったが、ただ一つだけ彼らには共通点があった。


それは殺しを本気で楽しまないところであった。




だが目の前のこいつらはどうだ?

遊び、人を殺すことを本気で楽しんで遊びと称している。


兵士達、冒険者達の中で何かがふつふつと湧き上がる。

しかしその前に。


「ふざけないで・・・」

「ああ?」

「ふざけないでと言っているのです!」


馬車の上に立っていたレイスティアが怒鳴り声を上げる。

そして馬車の上から降りて


「人の命を何だと思っているのですか!」


叫ぶ




しかし盗賊達は


「ああ? 何キレてんだ?」


意味が分からないという顔をしていた。


「っつ! この、人間のクズが! 爆炎よ、かの者を焼き尽くせ!『エクスプロージョン』!!」


お嬢様が怒りの表情を浮かべたまま、自身の持つ最高火力の魔法を唱える。

それと同時に盗賊達の真上に赤い魔方陣が浮かび上がり


ドゴッーーーーーーン!!!!


巨大な火柱が盗賊達の真上に落ちた。

そして舞い上がる粉塵と熱風



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!



そしてしばらくして空に昇る黒い煙



「やったか?」


誰かがそう呟く、そして晴れていく粉塵の向こうでは



「危ねえ、危ねえ 俺がいなかったら死んでたぞ」

『?!』


何事もなくそこに立っている盗賊達がいた。


「なっ、何で・・・」


誰かがそう呟く

お嬢様ですら、自身の最高火力の魔法を防がれたことに呆然としていた。


そんな中盗賊達の頭の男が先程より更に下卑た笑みを見せながら


「残念だったな、俺は異能持ちだ」


そう言って頭の男は自身の手を前に出した。


「俺の異能は特殊系【盾】、決して砕けねえ最強の防御を持ってんだよぎゃははは!!」


盗賊の頭の言葉その場にいた兵士達は驚愕の表情を隠せなかった。


異能といえば、少なくはないが多くの人が持っている、しかし目の前の男の持つ特殊系はそうそういない、大国でも他の異能者が千人いようが特殊系はその内、片手の指でも足りる程だ


そんな兵士達の思いとは他所に笑い続ける盗賊の頭。

そんな男に、盗賊達の内一人が


「お頭、いいんですか異能のこと言っちゃって?」


心配そうに盗賊の頭に聞く。

しかし、盗賊の頭はニヤリとまたもや下卑た笑みを浮かべ


「いいんだよ、どうせ全員殺すんだし。それにこいつらの()()は握った」


そんなことを言う盗賊の頭にその場にいた全員は一瞬呆ける。

しかしレイスティアのみが何かに気づき、彼女が先程いた場所、横転した馬車の上に残る侍女の方を振り返った。


そこには


「頭! 捕まえたぞ!!」


そう叫び、先程まで侍女が抱えていた何かを片手で持ち上げる細身の男がいた。

男の足下では侍女が倒れており、気絶しているのかピクリとも動いていなかった。


「返しなさい!!」


レイスティアが細身の男に向かって叫ぶ。

しかし男はそんな彼女を嘲笑うかのようにニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべながら


「誰が返すかよバーカ!」

「この・・・」


男の小馬鹿にしたような態度に表情を歪める彼女、しかし次に彼女が何かを言おうとした瞬間背中に衝撃が走った。


「っつ?!」


彼女はそのまま前のめりに倒れその体を地面に押しつけられた。

彼女はその体制のまま、首だけを動かし自身を押さえつけている人物を見た。


「まったく、手間かけさせやがってよ! 女の癖に!」


彼女を押さえつけている人物は先程の盗賊の頭であった、そうこうしている内に周囲から悲鳴と何かが切られる音が聞こえてきた。

彼女は今度はその目を動かし周囲の状況を探る。



どうやら残りの盗賊達が無防備となった兵士達と冒険者達を襲っているようであった。


「この! 卑怯者!!」


そう言って人をのろい殺しそうな目をして盗賊の頭を睨むレイスティア。

そんな彼女の表情を見て楽しそうな顔をする盗賊の頭





そんな中、細身の男が持ち上げている何かから声が聞こえた。


「オギャーーー!! オギャーーー!!」


赤ん坊の泣き声が周囲に響く


「ぎゃは! 噂は本当だったのか!」


盗賊の頭が面白そうに呟く


だがすぐにうるさいという不機嫌な顔になり


「殺せ」


細身の男に命令した

その言葉に盗賊の頭に押し倒され身動きのとれないレイスティアは懇願するように叫んだ


「っつ?! やめて! その子を殺さないで! 私なら好きにしていいから! だから!」


そう必死に叫ぶレイスティアに盗賊の頭はニヤリといやらしい目を向け


「ああ? 何勘違いしてんだ? 好きにするさ、お嬢ちゃんは俺に捕まってるんだそんな取引最初っから意味ねえよ、それに俺はうるせえ赤ん坊とか大っ嫌いなんだよ!」


「やれ」という合図とともに細身の男が持っていた短剣を振り上げる


「やめてーーー!!」



ブシュウ!!




肉が裂ける音が響き辺りに鮮血が飛び散る




その一帯が無音になる中





「オギャーー! オギャーー!」





赤ん坊の泣き声だけが新しい響く




「あれ?」


細身の男が呆けたような声を出し自身が先程まで短剣を持っていた腕を見る




「ない・・・」



そう呟く男の腕は、二の腕から先がなくなっていた

そして数秒間の沈黙の後


「ぎゃああああ?! 俺の?! 俺の腕がーー?!」


細身の男が思い出したかのように自身の腕が無いことを知り叫ぶ。

その叫び声に周囲にいた盗賊達は驚き自身の獲物をつかみ周囲を見渡す


「どういうことだ?!」

「誰がやった?!」


周囲に怒号が響く中細身の男が呻きながら自身の腕を探していた。


「うう・・・、どこだ、どこにある俺の腕・・・」

「オギャーー! オギャーー!」

「うるせえ!!」


そう呟きながらも赤ん坊を話さない細身の男、どんどんと大きくなる赤ん坊の泣き声にイライラしながらも自身の腕を探して後ろを振り向いたとき


「?!」


何かがいた


「てめえ! いつからそこ・・・」 ズパンッ!!


細身の男が怒鳴るまえにその存在は男の首をはねた


細身の男が最後に見たのは、自身の目線が落ちていく光景とバラバラになった体、そして男のなくなった腕を投げ捨て捕まえていた赤ん坊を抱き寄せている謎の存在であった。









「オギャーー! オギャーー!」


赤ん坊の泣き声だけが響く中その場にいる全員の頭の中は混乱の極みであった。


殺されるはずだった赤ん坊は元気に泣き、赤ん坊を殺すはずだった男はバラバラにされたのだから。






そして男をバラバラの物言わぬ骸にした謎の男は


「・・・・・・」


しばし無言で赤ん坊の顔をのぞき込んでいた

そして何を思ったのか、その男はそっと人差し指を自身の顔の前まで持って行き


「しーーー」


黙ってと、ジェスチャーをしていた。

その様子が面白かったのか、赤ん坊はキョトンとした後


「キャッ! キャッ!」


と笑い出した。




今度は辺りに笑い声が響く中、盗賊の頭が鋭い目をし初め、そして


「てめえ! 何者だ!」


謎の人物に怒鳴り散らし始めた。



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