いろんな初めて
チュン チュン
チュン チュン
窓の外から鳥の鳴き声が聞こえる。
それに伴い、この部屋の主。大神 ヤシロはその意識を覚醒させていく。
「ん・・ふあ~、朝か」
大きなあくびをし目を覚ますヤシロ。
そのまましばらく仰向けのまま昨日の夜のことを思い出した。
(何か、凄い夢だったな。)
そんなことを思いながら、昨日のことを夢として片付けた。
「んんっ、 ん・・」
そんな時ヤシロの隣で声が聞こえた。
よくよく見れば、彼がかぶっていた布の両隣が不自然に盛り上がっていた。
しかも、ヤシロはその両腕を左右に伸ばしており、その腕の上には重みがあった。
俺はゆっくりと、その頭を声のした方向に向ける。
するとそこには。
「んん、 すー」
きれいな寝顔をしたクレアが俺の腕を枕に眠っていた。
(な、何でクレアがここに っつ?!)
そんなことを考えていた瞬間、俺はクレアの状態を見て言葉を失った。
クレアはその体を俺が使っている布で胸の上から隠しているのだが、どう見てもその下には何も着ていないのがはっきりと見て取れた。
続いてクレアとは反対の腕を見ると、そこには
「すー、 すー」
「・・・・誰だ?」
見たことも無い女性がクレアと同様、俺の腕を枕に静かな寝息を立てていた。
俺の腕を枕に眠るクレアと謎の女性に俺は混乱の極みだった。
「と、とりあえずこの腕を引き抜こうと、まずはそれからだ。」
そう言って俺は、とりあえずこの場から抜け出そうと枕にされている腕を引き抜こうとするのだが。
「ぬ 抜けん!」
枕にされている俺の腕はまるで接着剤でくっつけられたかのようにその場から少しも動かすことが出来なかった。
その後しばらく腕を引き抜こうともがくのだが、全然ぴくりとも動かないので、俺は二人が起きるまで現実逃避をすることにした。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
それから約三十分後
「んっ、んん~ ふあ~」
クレアが起きだし、その体をすこしづつ上げていった。
そして。
「ふ んーーー!!」
そんな声とともに固まった体を伸ばすようにのびをし始めた。
その一連の動作が終わった後、クレアは辺りを見渡した。
「あれ、ここは? 確か私昨日・・・」
そんなことを言い、クレアは昨日のことを少しずつ思い出していきそして。
ボンッ!!
そんな音が聞こえるくらいに、その顔を真っ赤にさせ急いで振り返った、その先には。
「おう、クレア。やっと起きたか。」
見たことも無い女性に裸で腕枕をしているヤシロが目に入った。
そしてそれを見た瞬間クレアは
「ヤシロ、その女誰?」
無表情でヤシロを問い詰めていた。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「ヤシロ、その女誰?」
いや聞かれても知りませんよ。
そんな言葉を言う前に飲み込み、俺はこの横で寝ている女性をじっと見てみた。
まず目を引くのはその髪、黒っぽい銀髪でサラサラとしており朝日に反射して輝いていた。
そして次に目を引くのはその肌、褐色でしわ一つ無い肌に一際目を引く巨大な胸、下手をするとクレアを抜くくらい・・・いや、すみませんでした。だからその絶対零度の微笑を向けないでくださいクレアさん、いやクレア様。
そんな事をしているうちに、その謎の女性は少し身じろぎをした後ゆっくりとその体を起こし、そして。
「ああ・・・おはよう、ございます。ヤシロさんクレア姉さん」
トロンと眠そうな目で俺達の名前を呼んだ。
え?もしかして・・・
「ノア・・か?」
そうやって、確認するように目の前の女性に聞いてみる。
「? そう、ですけど・・・どうしました?」
そう言って謎の女性、いやノアは肯定した。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
ヤシロ、クレア、ノアの三人はヤシロの部屋で向かい合うように座ってノアの状態について話し合っていた。(もちろん、服は着ている)
「ノア、その状態になったのに何か心当たりあるか?」
俺はまず、ノアに心当たりがないか聞いてみた。
「んー、ないですね。自分は見ての通り、最近進化したばっかなので進化した、というわけではなさそうですし。」
「でも、どう見てもそれ進化か、それに連なるスキルによるものでしょう。でも、ノアちゃんの言うとおりこんなに早く進化がおこることはないし、いったいどうして。」
ノアの心当たり無し、クレアも不思議そうな顔をしていた。
それよりも俺は少しきになることがある
「なあノア、お前角はどうしたんだ?」
「?」
ノアは曲がりなりにも山羊、昨日の時点ではあの特徴的な角があったはずだ。
しかし今の彼女はどこからどう見ても人間の女性にしか見えなかった。
「確かに、ノアちゃんいつもの角がないし、言葉もスムーズよね。どうしちゃったの?」
クレアも今気づいたのか不思議そうにノアに聞いていた。
「角? 角なら生やせますよ。 ほら」 にゅ!
そう言ってノアは、何でもないというようにその頭から後ろから前に突き出すような角を生やした。それと同時に耳がさっきまで
と違い、人間のような形から山羊の耳に変わった。
「それ、生やせるの?!」
俺は意外という感じでノアに突っ込んだ。
ノアはノアで特になんとでもないように、「はい」と答えた。
「なんとなく、体の構造が頭の中に入ってるので、角を出し入れすることが分かりました。」
ああ、そうなんだ。
とりあえず一旦このことを区切り、話を戻すことにした。
「しかし、どうして急に姿が変わったんだか。」
「分かりません、特に私は何もしていませんし。」
「そうよね。 ヤシロ、ノアちゃんになんか変なことしてないわよね?」
「何で俺が疑われるの?!」
「あなたなら、これくらいのこと簡単にできそうだから。」
「いやいやいや、そんな事簡単に・・・」
俺は一瞬考えた。
あれ? そういえばクレアって俺の血を飲んで今の姿なんだよな。
ちょっと待って、もしかして俺の血じゃなくても体液で進化がおこることってあり得るの?
もしそうだとしたら・・・、やべえ。
そんな思考が一瞬で俺の頭の中を駆け巡った。
そんな俺の様子にクレアとノアは不自然そうな顔をしていた。
「どうしたの?」
クレアが、動きを止めた俺の顔をのぞき込むようにして言った。
「すまん、もしかしたら俺のせいかも」
「「どうゆうこと?」」
きれいにハモるなこの二人
俺はそんな二人に自分の予想を話した。
「本当にすいませんでした。」
そう言って土下座する俺。
その向かい側では、顔を俯かせ赤面しているノアと、同じく顔を赤くし俺と同じように土下座するクレア、という不思議な絵図が出来ていた。
「本当にすまん、記憶がないが、多分俺のせいでそんな姿に」
「い、いいいいえいえ、そ、そ、そ、それよりも、本当に私達、その、ヤっちゃったんですか?」
「多分」
そう言った直後ノアが更に顔を赤くし今度は湯気が出始めた。
「うう、確かに裸で寝ていましたけど。私も昨日の記憶がないですけど。まさかそんなことが」
「いや、普通一つの部屋で男女に裸で寝てたらそう言うことじゃないの?」
「そういうこともなにも、その状況にしたのクレアだよ。」
「嘘でしょ?!」
「嘘も何も、最初に俺を転がして縛って襲ってきたのクレアだか「みゃああああああ!!」ら。」
それからしばらく、三人の謎の奇声が聞こえ続けた。
それが収まり三人が出てきたときには、太陽が真ん中に登っていたという。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
ズーーーーー
引き戸の扉が開き、中から疲れた顔をした三人が出てきた
「ああ、疲れた」
無意識にそんな言葉が出る。
あの後俺達は昨日のことをどんどん思い出していき最終的には三人とも悶絶という結果で幕を閉じた。
つーか、俺は一体昨日の夜に階段を何段飛ばしで駆け上ったんだろうか。
いや考えるのはよそう。てか、考えたくない。
そんな風に自分の中で突っ込みをしていると。
「あらー? 三人とも今起きたの?」
聞き覚えのないようで、聞いたことのあるような声が聞こえた。
不思議に思い、そっちの方に顔を向けると。
「おはよう、昨日はずいぶんと激しい夜だったのね♪」
またもや見たことも無い女性がその手にサクラとモミジを抱いてこっちに近づいギャバリャ?!!
突然俺の視界がブラックアウトし、遅れて首に鈍い激痛が襲ってきた。
な ぜ だ ?
沈みゆく意識の中何か騒がしい声だけが聞こえてきた。
「わーー!! 姐さん何て格好してるんですか?!」
「あらー、クレアちゃんどうしたの?そんな慌てて?」
「『どうしたの?』じゃないですよ! 何て格好で歩いてるんですか!! はいこれ!! 早くこれ着てください!!」
「あらあら、こんなのどこに持ってたの?」
「お姉ちゃんそんなにまじまじと見ないで早く着て」
「あらー?もしかしてノア? 初体験するとイメージが変わるって言うけど変わりすぎじゃない?」
「なっ?! にゃんでそのことを!!」
「ふふふ、私の耳は色恋話に限り凄いのよ。」
「うう・・」
「それよりも姐さん!もしかして他の子も・・・」
「?みんな同じ感じよ」
「やっぱり!! ノア急いで行くよ!!」
「了解クレア姉さん!! サクラちゃんモミジちゃん、あっちで倒れてるヤシロさん見ててね。お姉ちゃんも行くよ!」
「はいはい」
ドタバタ!! ドタバタ!!
そんな一連のやりとりを途中まで聞き、俺は意識を手放した。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「うーきゃあ」 ぱしぱし
「うー、ああー」 ぺしぺし
そんな無邪気な声が聞こえ、頬を叩かれる感触に俺はその意識を覚醒させる。
(別にMというわけでじゃないよ。)
「ん、んんー、ここは?」
確か、目の前から(ぺし)またもや知らない女の人が俺の名前を呼んで、(ぺし)振り向いた、(ぺしぺし)までは覚えてるんだけど。(ぺし)
んー、思い出せ「きゃう!」(ぺし)
「こーら、モミジ。」
俺はそう言ってさっきからぺしぺしと俺の頬を執拗に叩くモミジを抱き上げた。ついでに叩く姿勢をしていたサクラも捕獲。
「二人とも、ぺしぺし ぺしぺし俺のほっぺを叩かないの。」
叱る、というよりもまだ幼い二人に言い聞かせるように言う。
しかし
「きゃう! きゃうきゃあ!」
「うーあ! ううあー!」
遊んでもらえてると勘違いしたのか、二人は抱っこされたまま手を上げたり体をよじったりしながら、笑顔でこちらを見ていた。
くっ、かわいい! だがしかしここは心を鬼に、だめな物はだめと「きゃーう?」「うーあ?」・・・・・だめだ!!俺にはできない!!
心の中で葛藤している中、首をかしげてこちらを見つめる二人、やばいマジかわいい。
まあ、はっきり言って怒鳴るほど怒るものでもないから。
「ぺしぺししちゃだめだよ~」
「「うう~みゃあ」」
二人のほっぺを、むにむにする刑にした。
しばらく、赤ん坊特有の肌を堪能したのち俺はここにいない二人のことを思い出した。
「そういえば、あの二人はどこ行ったんだ?」
気を失う前は確かにいたはず、そう思っているとふと胸元が引っ張られる感じがしたので視線を下に向ける。
そこには、サクラとモミジが何か言いたそうにこっちを見ていた。
「どうした、サクラ モミジ?」
「あうあー、あー」
「ううあー、うー」
「んー?」
必死に何かを言おうとする二人、かわいいなー。
しかし次の瞬間。
「ぱーあ、あっち」
「あーぱ、あっち」
「?!」
えっ? 今喋った?
聞き間違えか、二人はさっき「パパ」って言おうとしたのか?
そんな疑問は次の瞬間吹き飛んだ。
「ぱーぱ、あっち!」
「ぱーぱ、あっち」
「聞き間違えじゃなかった!」
はっきり、「ぱぱ」ってよんだぞ!
そして、しばらく呆けていると。
「ぱーぱ?」
「どにょ?」
舌足らないが、それでも心配そうにこちらを見る二人。
何つーか、世のお父さん達の初めて子供に呼んでもらえた感動と嬉しさが凄くよく分かった。
そんな感動と嬉しさの余韻に浸り、手元の二人を撫でている中、不意に声をかけられた。
「何してんだ、おめえ?」
俺は二人を撫でる手を止め振り返った。
声をかけられた方を見た瞬間。
「どおら!!」 ドゴッ!!
「ぐべあ?!!」 ガッ! ゴッ! ズザザザザザ!!
反射的に相手の腹に《獣化》させた足をたたき込んだ。
蹴った相手は、二回程地面をバウンドした後地面を滑るようにして止まリ、動かなくなった。
「・・・死んだか?」
「生きとるわボケエ!! いきなり何すんだこら!!」
ちっ! 死んでなかったか。
俺はそう言って目の前の山羊の角と足を生やした大男を見た。
まあ、なんとなく雰囲気で分かるが、その前に
「近づくな変態」
「あっ? 何言ってんだてめえ?」
「全裸で徘徊している男を変態と言わないで何というんだ?」
そう、この男、全裸なのである。
「ああ? 元々裸だったんだ、別にいいだろう?」
「それは山羊の姿だった時だけだ。今の姿はうちの子の教育上よろしくないから、今すぐ服を着るか、その状態をどうにかしろボス」
もう分かったかもしれないがこの男、あのボスなのである。
「どうにかしろって、いってもな。」
「とりあえず下半身は隠せ。そして何でその姿になったか簡潔に述べろ。」
「へいへい」
そう言ってボスは家の近くの森に入っていった。
数分後葉っぱで作られた簡易的な腰巻きをつけたボスが森から出てきたところで、俺はボスと話し始めた。
「何でそんな姿になったんだ?」
「分からん、朝起きたら全員同じような姿に変わっていたからな俺にもさっぱりだ。」
「全員同じ種族に存在進化したのか?!」
「ああ、そうだ」
まじかよ。
それからしばらく、俺はボスに心当たりが無いか質問していたが、何も分からなかった。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「うーん、手がかりが無いんじゃどうしようもねえな」
俺はそう言って両手を組んでそう言った。
あれからしばらく、ボスに様々な質問をしたが、ボスにも心当たりは無く空振りに終わった。
(ちなみに、サクラとモミジは退屈だったのかしばらくして寝息を立て始めたので、俺の尻尾の上を布団に寝かしている。)
「だろー? 俺だってよく分かってねえし、いきなりみんな同じ姿になってたんだからびっくりしたしよ。」
そう言って首振るボス
ん? そういやこいつ、曲がりなりにも群れのボスなんだよな。
何でこんなところにいるんだ?
「なあボス、何でお前ここにいるんだ? 普通群れのボスなら仲間をまとめてるんじゃないのか?」
そう言った直後、ボスの動きが止まった。 もしやこいつ
「逃げてきた?」
「ばっ?! 逃げてきたんじゃねえよ! 群れはもうまとめて俺はその辺を散歩「見つけた」?!」
言い訳のようなことを言っていたボスの口が閉じた。その変わりボスの顔がみるみると青くなっていき、そのまま、まるで錆び付いたかのようにゆっくりと後ろを振り返った。
そこには。
「探したわよ あ な た ♪」
サクラとモミジを最初抱っこしていた女の人が立っていた。
その後ろでは、クレアとノアの二人が肩で息をしながら立っていた。
「おおー、クレア ノアどこ行ってたんだ?」
「はー、はー 群れの山羊達が全員存在進化したから、着る物、作りに、行ってきたの、はー、はー」
「後は、兄さんだけです。」
途切れ途切れでそう言う二人、俺は二人を一瞥したあとボスの方に向き直る。
そこでは
「あーーーーー?!」
「何で、ふらふらとあっちこっちいってんのよ」
ボスがキャメルクラッチを決められていた。
あの技の切れ、やっぱりあの人姐さんか
その後、姐さんが満足するまでボスは姐さんの技の練習台になっていた。最終的にボスが解放され服を着ることが出来たのは、そこから約一時間後であった。
俺は存在進化しても変わらな二人に笑みを浮かべていた。
今日もまた俺の一日が始まる。




