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満月の夜に

 

僕はその光景を、ただただずっと見ていた。

変な顔だったかもしれないけど、その時はどうでもよかった。

 

...満月の灯りに照らされ、それを見つめる少女。

写真を撮って、どこかのコンクールに応募すれば

間違いなく金賞は取れるだろう。

それほど、この光景は美しかった。

そして、どこか悲しかった。

 

あれ?

なんで僕は悲しいと思った?

 

あぁ、そうか。

彼女の瞳から大きな水滴が流れているからだ。

 

僕はそれからその女の子のことを見ていた。

初めて見つけたときから何十分、何時間経っただろうか。

 

実際はほんの数秒しか見てないと思うけど

なぜか時間が止まっていたような気がしたんだ。


彼女は僕の方をみようとはしない。

いや、気づいていないだけかもしれない。


ベンチに座って、ずっと満月を見ているから

僕のことなんか見えなくても不自然ではない。

 

なぜか僕はそのベンチに座ることにした。

それから30分くらい、僕と彼女は満月を見ていた。

彼女の側にいると、なぜか落ち着けた。

いつもなら、車が何台か通り、その音が耳に入ってくるはずなのに

その子の横だと、なにも聞こえなかった。

聞こえるのは風の音だけ。

 

その空間が、僕は好きになってしまった。

空間ではなく、その女の子のことかもしれない。

まだ、それはわからない。

 

それからさらに時間が経過する。

あれから何分経ったかな?

僕はそろそろ帰ろうと思い、席を立つ。

そしたら、少女が初めて口を開いた。

 

「あなたはこの光が好き?私は大好き。この光は私の心を落ち着かせてくれる。

 この風も、風の匂いも、全てが私を包んでくれる。

 月の光に当たると体が暖かくなるし、とても気分が良くなる。」

 

その少女の声は、とても綺麗だった。

どんなにすごいオーケストラでも、どんなに高価で希少な楽器だったとしても

その声には負けてしまうだろう。

透き通るような声。

風の声。

そんな感じがした。

 

「僕も好き。とても落ち着くし。僕のお気に入りの場所。」

 

「そう、そんな場所に私はいて平気?ここにいていい?」

 

「うん、君はこの場所にピッタリだ。僕なんかよりも、きっといい。」

 

「でも、一人は寂しいものね。だから時々こうして、一緒にお月様を眺めてくれない?」

 

「もちろん、そうでなくてもこの場所は好きだしね。」

「それじゃあ、自己紹介するよ。僕の名前は光。望月光。」

 

「私の名前は奏。よろしくね光。」

 

そうして僕は家に帰る。

なんだか不思議だった。

あの子はなんで泣いてたのだろう。

なんでひとりでいるのだろう。

 

だけど、それは聞けなかった。

聞かないで。と言われてる気がした。

 

明日、またこの時間にいくことにしよう。

 

こうして、僕の夏休み初日が終わる。

また、逢えるかなって思いながら。

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