第6話 勇者くん、十年間チュートリアルで詰んでるの?
第6話です。
ハル村の会話、水、畑、出口を復旧したリリィ。
ようやく休めるかと思いきや、今度は「勇者チュートリアル」が十年間止まっているというエラー通知が届きます。
薬草を三個集めるだけの最初のクエスト。
でも、世界には薬草が二個しか生成されていませんでした。
保守担当リリィ、今度は十年詰んでいた勇者くんを見に行きます。
夜のハル村は、静かだった。
ほんの少し前まで、この村には言葉がなかった。
井戸には毒水が湧き、畑は枯れ、道は消え、村人たちは外へ出ることもできなかった。
それが今は、宿屋の窓から小さな笑い声が聞こえる。
井戸のそばでは、まだ水を確かめるように桶を覗き込んでいる人がいた。
畑の方では、巨大カボチャの周りに子どもたちが集まっている。
北門には、外へ続く道がちゃんと見えていた。
村が、少しだけ生き返っている。
いいことだ。
とてもいいことだ。
だからこそ私は、今すぐ寝たかった。
「なのに」
私は宿屋の廊下を歩きながら、目の前の赤い通知を睨んだ。
【未処理クエストを検出しました】
【クエスト名:勇者チュートリアル】
【状態:進行不能】
【経過時間:3652日】
【優先度:高】
「なんで寝る直前に勇者案件が出てくるわけ?」
通知は無言で点滅している。
腹立つ。
前世でもそうだった。
帰ろうとした瞬間にアラートが鳴る。
寝ようとした瞬間に障害通知が来る。
お風呂に入った瞬間に電話が来る。
異世界に来ても、通知の空気の読めなさは変わらないらしい。
「ほんと、通知って人の心ないよね」
階段を降りると、宿屋の女将マリナが片付けをしていた。
「あら、リリィさん。こんな時間にどちらへ?」
「ちょっと村外れ」
「村外れ?」
「勇者が十年間チュートリアルで詰んでるっぽいから見に行く」
マリナの手から皿が落ちかけた。
「勇者様が?」
「たぶん」
「十年間?」
「たぶん」
「チュートリアルで?」
「そこは確定」
マリナはしばらく固まったあと、困ったように言った。
「それは……大変なのでしょうか?」
「めちゃくちゃ大変。主に勇者の心が」
私は宿屋の扉を開けた。
夜風が入り込む。
「リリィさん、危なくありませんか?」
「危ないかもしれない」
「でしたら、村の者を――」
「いい。ぞろぞろ来られると面倒」
私は振り返らずに手を振った。
「それに、勇者くんが十年間一人で詰んでたなら、最初に会う人数は少ない方がいいでしょ」
マリナは少し驚いたように目を丸くした。
「リリィさんは、お優しいですね」
「違う。障害対応の基本。関係者を増やしすぎると話がこじれるの」
「そういうことにしておきます」
「そういうことなの」
私は口を尖らせて外へ出た。
背中越しに、マリナの声が聞こえた。
「お気をつけて」
「はいはい」
私は夜の村を歩き出した。
◇
管理画面の案内に従って進むと、村の東外れに小さな訓練場があった。
木の柵で囲まれた広場。
古い木剣。
丸太で作られた人形。
弓の的。
そして、草地のあちこちに小さな光が浮かんでいる。
薬草の採取ポイントらしい。
その中央に、一人の青年がいた。
年齢は二十歳前後だろうか。
栗色の髪に、使い込まれた革鎧。
腰には剣。
顔立ちは整っているが、疲れが深く刻まれている。
彼は膝をつき、地面を探していた。
「どこだ……」
青年は草をかき分ける。
「あと一つ……あと一つなんだ……」
その声は、かすれていた。
私は木陰に立ち、管理画面を開く。
【対象者:アルト】
【役割:勇者】
【状態:チュートリアル進行中】
【クエスト名:薬草を三個集めよう】
【進行状況:2/3】
【経過時間:3652日】
【精神負荷:高】
【外部イベント到達:不可】
「いた」
私は思わず呟いた。
「勇者くん、ほんとに十年薬草探してるじゃん」
青年――アルトは、私に気づいていない。
彼は小さな袋を開け、中身を確認した。
薬草が二本。
それを何度も数える。
「一つ、二つ……」
数えて、黙る。
また数える。
「一つ、二つ……」
そして、拳を握りしめた。
「どうして……どうして三つ目が見つからないんだ……」
その声に、胸の奥が少しだけ重くなる。
私はゆっくり歩み寄った。
「ねえ」
アルトが弾かれたように顔を上げる。
目が合った。
彼は驚き、慌てて立ち上がる。
「だ、誰だ?」
「通りすがりの保守担当」
「保守……?」
「気にしなくていい。どうせ説明しても長いから」
私はアルトの足元を見た。
周囲の草は踏み荒らされていた。
何度も何度も探した跡だ。
土には膝をついた跡。
指で掘り返した跡。
同じ場所を巡回した足跡。
本当に、ずっと探していたのだ。
「薬草、探してるんでしょ?」
アルトの顔が強張った。
「なぜ、それを」
「見ればわかる。というか、エラー通知がうるさい」
「えらー……?」
「こっちの話」
私はアルトに近づき、彼の袋を指差した。
「今、二本?」
「……ああ」
「必要なのは三本?」
「そうだ」
「いつから?」
アルトは視線を落とした。
「十年前から」
その言葉は、静かだった。
でも、静かすぎて痛かった。
「僕は十年前、勇者として選ばれた」
アルトはゆっくり話し始めた。
「神託が下ったんだ。村を出て、世界を救う旅に出る。その前に、最初の試練として薬草を三つ集めろと」
「最初の試練が薬草三つ」
「笑うだろう」
「まあ、ちょっと」
私は正直に言った。
アルトは苦く笑う。
「村の子どもでもできるような試練だ。そう言われた。僕も、すぐに終わると思った」
「でも、終わらなかった」
「一つ目はすぐ見つかった。二つ目も、その日のうちに見つかった。でも、三つ目がどこにもない」
アルトは訓練場を見渡す。
「最初は見落としたのだと思った。次の日も探した。次の週も。次の月も。季節が変わっても、探した」
「……」
「村の外へ行こうとしても、道に迷って戻された。神託には、薬草を三つ集めるまでは旅立てないとあった。だから、僕はここで探し続けた」
「十年」
「十年だ」
アルトは自嘲するように笑った。
「勇者なのに、薬草すら集められない。そう思われても仕方ない」
私は眉を寄せた。
「誰かに言われたの?」
「いや」
「じゃあ、誰がそう思ってるの?」
「僕自身だ」
アルトは袋を握りしめた。
「僕が未熟だから。僕に勇者の資格がないから。だから三つ目を見つけられないのだと、ずっと思っていた」
私は無言で管理画面を見た。
【クエスト進行状況:2/3】
【薬草生成地点:2件】
【必要薬草数:3】
【追加生成処理:失敗】
【対象者責任:なし】
最後の一文が、やけに冷たく見えた。
対象者責任、なし。
つまり、アルトは悪くない。
悪いのは、世界の方だ。
私は深く息を吐いた。
「アルト」
「なぜ、僕の名を」
「表示されてるから」
「表示?」
「細かいことはいい」
私はアルトの目をまっすぐ見た。
「結論から言うね」
「ああ」
「あんた、悪くない」
アルトは一瞬、意味がわからないという顔をした。
「……何を言っている?」
「薬草が見つからないのは、あんたの努力不足じゃない。才能不足でもない。勇者の資格がないからでもない」
「では、なぜ」
「世界に二本しか生えてないから」
沈黙。
夜風が吹いた。
虫の声がした。
アルトはゆっくり瞬きした。
「……今、何と?」
「このクエスト、薬草三本必要なのに、世界側が二本しか生成してない」
「そんなことが、あるのか?」
「ある。今、目の前で起きてる」
アルトは袋の中の薬草を見た。
それから地面を見る。
また私を見る。
「いや、だが……僕は十年……」
「うん」
「十年、探したんだ」
「うん」
「毎日、ここで」
「うん」
「雨の日も、雪の日も」
「うん」
「三つ目が、世界に存在しなかった?」
「そう」
アルトの顔から、血の気が引いた。
彼の唇が震える。
「では、僕の十年は……」
言葉が途切れる。
私は、いつものように軽口を叩こうとした。
勇者くん、薬草二本世界で十年粘るとか根性すごすぎ。
チュートリアルで詰む世界、ざぁこすぎ。
神様、今すぐ土下座して。
いくらでも言えた。
でも、目の前の青年は笑えない顔をしていた。
十年。
その時間を、自分のせいだと思っていた。
自分が未熟だから。
自分に資格がないから。
自分が勇者にふさわしくないから。
そうやって、十年間ずっと自分を責めていた。
「……アルト」
私はいつもより少しだけ低い声で言った。
「今から、ちゃんと聞いて」
「……」
「これは、あんたのミスじゃない」
アルトの目が揺れる。
「クエスト条件が間違ってた。生成数が足りなかった。進行フラグも壊れてた。つまり、システム側の不具合」
「しすてむ……」
「世界の不具合」
「世界の……」
「そう。あんたが止まってたんじゃない。世界があんたを止めてた」
アルトは袋を握ったまま、動かなかった。
私は少しだけ顔を背ける。
「だから、自分を責める必要なんてない」
言ったあとで、ちょっと照れくさくなった。
慣れない。
こういう真面目なことを言うのは、慣れない。
だから、私はすぐに付け足した。
「まあ、十年も同じ場所を探し続ける根性はちょっと怖いけど」
アルトが小さく息を漏らした。
笑ったのか、泣きそうなのか、よくわからない声だった。
「君は……不思議な人だな」
「保守担当だからね」
「それは、どういう意味なんだ?」
「壊れてるところを見つけて、文句言いながら直す人」
「文句は必要なのか?」
「必要。精神衛生にいい」
アルトは、本当に少しだけ笑った。
それを見て、私は管理画面に向き直る。
「さて」
私は指を鳴らした。
「じゃあ、神様を呼び出します」
「神様を?」
「うん。説教する」
通信画面を開く。
数秒後、ノアの顔が出た。
『な、なんじゃ? もう夜ではないか。わしもそろそろ休もうかと――』
「薬草三個クエスト」
『……』
「必要数三、生成数二」
『……』
「勇者、十年停止」
『……』
「何か言うことある?」
ノアは目を逸らした。
『大変、申し訳なく……』
「謝る相手が違う」
『え?』
「私じゃない」
私は通信画面をアルトの方へ向けた。
アルトは目を見開く。
「こ、この方は……?」
『創造神ノアである』
ノアは少しだけ威厳を出そうとした。
私は即座に言う。
「薬草二本しか生成できないざぁこ神」
『紹介がひどくないかのう!?』
アルトは混乱していた。
「神様……本当に……?」
ノアは画面の向こうで、深く頭を下げた。
『勇者アルトよ』
「は、はい」
『そなたを十年も待たせたのは、そなたの責任ではない。世界の設定に誤りがあった。わしの不手際じゃ』
アルトは言葉を失った。
ノアは続ける。
『本来なら、そなたは十年前に旅立つはずだった。毒沼の魔物を鎮め、村を救い、やがて王都へ向かうはずだった』
「毒沼……?」
アルトが顔を上げる。
私は眉を寄せた。
「やっぱり、指定討伐者ってアルトだったんだ」
『うむ』
「うむじゃない」
私はノアを睨む。
「勇者のチュートリアルが詰んでたせいで、毒沼イベントも終わらず、井戸も毒水になり、畑も壊れ、村の出口も閉じた」
『……』
「ひとつの薬草不足で、村全体が十年止まった」
『……』
「神様、影響範囲って知ってる?」
『今、学んでおる……』
「遅い」
アルトは呆然としていた。
「僕が……村を救うはずだった……?」
「本来はね」
私は言う。
「でも、そこも勘違いしないで。救えなかったのは、あんたのせいじゃない」
「だが、実際に村は十年苦しんだ」
「うん」
「僕は、その間ずっとここで薬草を……」
「だから、それは世界が止めてたんだってば」
アルトは拳を握りしめた。
「それでも……」
私は少し苛立った。
自分を責めるなと言っているのに、責める。
真面目すぎる。
勇者くん、めんどくさい。
でも、十年もそうしてきたなら、すぐには変われないのだろう。
「じゃあさ」
私はアルトの前に立った。
「これから取り返せば?」
アルトが顔を上げる。
「十年前には戻れない。止まった時間はなかったことにできない。村の人たちが苦しんだ事実も消えない」
「……」
「でも、これから進むことはできるでしょ」
「これから……」
「薬草クエストは私が直す。チュートリアルも終わらせる。あとは、あんたが決めなよ」
私は腕を組んだ。
「勇者として旅立つのか、ここで薬草を数え続けるのか」
アルトは、袋の中の二本の薬草を見た。
それから、夜のハル村を見た。
村には明かりが灯っている。
人々の声が聞こえる。
十年ぶりに取り戻した生活の音がする。
アルトは小さく息を吸った。
「僕は……」
その声は震えていた。
「僕は、旅立ちたい」
私は口元を上げた。
「よし」
管理画面を開く。
【勇者チュートリアル】
【薬草を三個集めよう】
【現在薬草数:2/3】
【薬草生成数:2】
【追加生成処理:破損】
【修正候補】
1. 必要数を2に変更する
2. 薬草を1本追加生成する
3. クエストを強制完了する
4. クエストを削除する
「どれがいいと思う?」
私はアルトに聞いた。
アルトは驚く。
「僕が選ぶのか?」
「うん。あんたのチュートリアルでしょ」
「でも、君が直すのでは?」
「直すけど、選ぶのはあんた」
私は画面を見せる。
「必要数を二に変えれば、今のまま完了できる。薬草を一本追加すれば、条件通り三本集めて完了。強制完了もできるし、クエスト自体を消すこともできる」
アルトはしばらく考えた。
そして言った。
「薬草を一本、追加してほしい」
「理由は?」
「僕は、三つ集めると決めて始めた。世界に三つ目がなかったとしても……最後は、自分の手で拾って終わりたい」
「面倒なこだわり」
「すまない」
「謝らなくていい」
私は笑った。
「嫌いじゃないよ、そういうの」
管理画面で二番を選択する。
【薬草を1本追加生成しますか?】
【はい/いいえ】
私はアルトを見る。
「準備いい?」
アルトは深く頷いた。
「ああ」
「じゃあ、十年遅れの三本目」
私は指先で、はいを押した。
【実行中……】
【薬草生成処理を修復】
【不足分:1】
【生成地点:対象者前方2メートル】
【品質:通常】
【クエスト対象として登録】
淡い光が、草地の上に集まる。
小さな芽が出た。
それは見る間に伸び、柔らかな緑の葉を広げる。
ごく普通の薬草。
特別な光もない。
神々しい形でもない。
伝説の霊薬でもない。
ただの、三本目。
アルトはそれを見つめたまま、動けなかった。
「ほら」
私は言った。
「拾いなよ」
アルトはゆっくり歩き出す。
一歩。
二歩。
薬草の前に膝をつく。
震える指で、それを摘む。
袋の中へ入れる。
一つ。
二つ。
三つ。
その瞬間、空気が鳴った。
【クエスト達成】
【勇者チュートリアル:完了】
【アルトの行動制限を解除】
【外部イベント到達:可能】
【勇者スキル解放準備中】
アルトの体を、淡い金色の光が包む。
彼は袋を抱きしめたまま、空を見上げた。
「終わった……」
声が震えている。
「終わったんだ……」
私は腕を組んだ。
「おめでとう。薬草三本クエスト、十年越しに完了」
「僕は……」
アルトはゆっくり立ち上がる。
「僕は、外へ行っていいのか?」
その問いは、あまりにも静かだった。
勇者が世界を救いに行くとか。
魔王を倒すとか。
王都へ向かうとか。
そういう大きな話ではなかった。
ただ、外へ行っていいのか。
止められていた人間の、最初の問いだった。
私は少しだけ息を吐いた。
「いいに決まってるじゃん」
アルトの目が揺れる。
「本当に?」
「ほんと。道も直したし、クエストも終わった。あんたを縛るフラグはもうない」
「僕は……もう、ここにいなくてもいい?」
「うん」
私はニヤッと笑う。
「勇者くん、ようやくチュートリアル卒業だよ」
アルトは薬草の入った袋を握りしめた。
そして、泣いた。
声を上げるわけではない。
静かに。
ずっと我慢していたものが、少しずつ溢れるように。
私は目を逸らした。
「泣くなよ。ログが見えにくいじゃん」
「すまない……」
「謝るなってば」
「ありがとう」
「それも言いすぎると重い」
「ありがとう、リリィ」
「……一回でいい」
夜風が訓練場を通り抜けた。
十年止まっていた勇者のチュートリアルが、ようやく終わった。
管理画面の赤い警告が、緑色に変わる。
【勇者チュートリアル:完了】
【対象者:アルト】
【状態:行動可能】
【次回イベント:未定】
「未定」
私はその表示を見て、少しだけ笑った。
決められた次のイベントではない。
勇者が、自分で選ぶ次の一歩。
悪くない。
そう思った直後、管理画面に新しい通知が出た。
【勇者スキル解放処理を開始します】
【十年分の未適用成長データを反映します】
【警告:処理量が多すぎます】
「……ん?」
アルトの体を包む金色の光が、急に強くなった。
地面が震える。
訓練場の木剣ががたがた揺れる。
アルトが驚いて私を見る。
「リリィ、これは?」
私は管理画面を二度見した。
【未適用成長データ:10年分】
【剣技解放】
【身体能力補正】
【勇者固有スキル】
【魔力回路再起動】
【処理負荷:高】
「やば」
「やば?」
「十年分の勇者スキルが、一気に解放されるっぽい」
「それは、大丈夫なのか?」
金色の光がさらに強くなる。
私は顔を引きつらせた。
「たぶん」
「たぶん!?」
「保守作業に絶対はないから!」
次の瞬間、訓練場の木人形が光に吹き飛ばされた。
どん、と音を立てて地面に転がる。
私は額を押さえた。
「……第六話の最後に新しい障害出すの、やめてくれる?」
管理画面には、また赤い警告が点滅していた。
【勇者スキル一括解放中】
【暴発注意】
アルトは光に包まれながら、真面目な顔で言った。
「リリィ」
「何?」
「僕は、どうすればいい?」
私はため息をついた。
「とりあえず、じっとしてて」
「わかった」
「剣を抜かない」
「わかった」
「魔法っぽいものを感じても撃たない」
「わかった」
「あと、深呼吸」
「わかった」
アルトは素直に深呼吸した。
勇者、素直すぎる。
私は管理画面に向かって指を鳴らした。
「はいはい。勇者くんの人生が動き出したと思ったら、次はスキル暴発ね」
赤い警告を睨む。
「ほんとこの世界、まともに起動できないの?」
夜の訓練場に、金色の光が広がる。
私は口元を吊り上げた。
「いいよ。最後まで面倒見てあげる」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
勇者アルト、ようやくチュートリアル完了です。
薬草を三個集めるだけ。
本来ならすぐ終わるはずの試練でした。
でも、世界の不具合で三本目が存在しなかったせいで、アルトは十年間ずっと自分を責めながら探し続けていました。
リリィは口こそ悪いですが、こういう理不尽にはちゃんと怒る子です。
そして、勇者くんの人生が動き出したと思ったら、今度は十年分の勇者スキルが一括解放されそうです。
次回、第7話。
薬草一個で人生変わる勇者、心配なんだけど。




