第4話 畑の収穫判定、マイナスになってるんだけど
第4話です。
会話を取り戻し、井戸の毒水も止めたリリィ。
ようやく休めるかと思いきや、今度は畑の収穫判定がマイナス固定になっていました。
豊穣魔法で飢饉を起こすという、だいぶ終わっている設計です。
保守担当リリィ、今度は農地復旧に入ります。
木苺のパイは美味しかった。
甘酸っぱくて、温かくて、生地はさくさく。
口に入れた瞬間、ほんの少しだけ前世の疲れが薄れる気がした。
異世界、悪くない。
そう思いかけたところで、目の前の赤い警告が台無しにしてくる。
【警告】
【農地成長値が異常です】
【成長値:-999999】
【収穫判定:永続不可】
【影響範囲:ハル村全農地】
【優先度:高】
「……」
私はパイをもう一口食べた。
【農地成長値異常】
【農地成長値異常】
【農地成長値異常】
「うるさいってば」
私は警告ウィンドウを指で端に寄せた。
すると警告は、すぐに中央へ戻ってきた。
【農地成長値異常】
「自己主張強いな、このエラー」
隣に座っていた村長が、不安そうに私を見た。
「リリィさん……畑も、やはり何か問題が?」
「問題しかないね」
「やはり……」
「でも、今はパイ食べてる」
「は、はい」
「畑は逃げない。パイは冷める。優先順位、わかる?」
「わかるような、わからないような……」
私は最後の一切れを口に入れた。
木苺の甘さが広がる。
よし。
これで少しだけ働く気になった。
「採用」
「何がですか?」
「このパイ。村の重要資産として保護していいレベル」
宿屋の女将マリナが嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。木苺は村の外れで採れるんですよ」
「外れ?」
「はい。ただ、最近は畑が痩せてしまって、木苺も年々少なくなっていて……」
「なるほど」
私は空になった皿を見た。
このパイが今後食べられなくなる。
それは困る。
かなり困る。
「村長」
「はい」
「畑、案内して」
私は立ち上がった。
「この村のパイ供給ライン、止めさせないから」
「理由はそこなのですか?」
「食は大事。世界保守の基本」
たぶん。
◇
ハル村の畑は、村の南側に広がっていた。
木の柵で囲まれた土地。
細い畦道。
ところどころに立つ古いかかし。
でも、そこにあるはずの豊かな緑はほとんどなかった。
畑の土は乾ききり、ひび割れている。
芽は出てもすぐに萎れたのか、短く茶色く縮れていた。
いくつか残っている作物も、葉が黄色く、実は小さい。
「うわぁ……」
私はしゃがみ込み、土を指でつまんだ。
さらさらと崩れる。
「土がやる気なくしてる」
村長が肩を落とす。
「十年前までは、豊かな畑だったのです。この村は小さいながらも、麦と野菜には困りませんでした」
農夫の男性が続けた。
「けれど、ある年を境に作物が育たなくなりまして。水をやっても、肥料を入れても、まるで土が作物を拒むように……」
「作物を拒む土って何。反抗期?」
私は管理画面を開いた。
【対象:ハル村農地】
【状態:成長判定異常】
【成長値:-999999】
【収穫判定:不可】
【豊穣魔法:稼働中】
【魔法式状態:破損】
【影響範囲:全農地】
「豊穣魔法は稼働中……なのに成長値がマイナス固定」
私は眉をひそめた。
「豊穣魔法で飢饉起こしてるじゃん。逆にすごい」
農夫が首を傾げる。
「豊穣魔法、ですか?」
「この畑、昔から何か加護とか儀式とかあった?」
村長が頷いた。
「はい。村の中央にある石碑に、豊穣の加護が宿っていると伝わっております。毎年、収穫祭の前に祈りを捧げておりました」
「石碑ね」
私は畑の奥を見る。
そこには、苔むした小さな石碑が立っていた。
表面には古い魔法文字らしきものが刻まれている。
管理画面が自動で解析を始めた。
【豊穣石碑】
【役割:農地成長補助】
【本来効果:作物成長値+20%】
【現在効果:作物成長値反転】
【原因:計算式符号反転】
【最終正常稼働:3652日前】
「また三千六百五十二日」
私は半目になった。
会話バグ。
毒水バグ。
畑バグ。
全部、十年前から。
「十年前に何が起きたの、この村」
村長は困ったように首を振る。
「私たちにも、よくわからないのです。あの頃から、言葉も、水も、畑も、少しずつ壊れていきました。ただ、話せなかったため、誰も詳しく記録を残せませんでした」
「記録が残ってない障害、最悪」
前世でもよくあった。
誰が何をしたかわかりません。
いつから壊れているかわかりません。
でも直してください。
そういう案件は、だいたい深夜に来る。
「ノア」
私は通信画面を開いた。
白髭の神様が、やや怯えた顔で表示される。
『な、なんじゃ? 今度は優しく呼んでくれた気がするのう』
「気のせい」
『そうか……』
「畑の豊穣魔法、成長値がマイナスに反転してるんだけど」
『ふむ。豊穣石碑か。あれは本来、村の作物を安定させる補助装置でな』
「補助装置が全力で邪魔してるよ」
『おかしいのう。設計では、作物の成長を二割ほど助けるはずなのじゃが』
「見て、この式」
私は魔法式を通信画面に送る。
【成長補正式】
本来:成長値 = 基礎成長値 × 1.2
現在:成長値 = 基礎成長値 × -9999.99
『……』
「ねえ」
『……うむ』
「何これ」
『……激しく育たなくなる式じゃな』
「説明そのまんまだよ。神様なら原因言って」
ノアは冷や汗を流した。
『おそらく、豊穣石碑が毒沼イベントの汚染処理と干渉したのじゃろう。毒化された水を畑に使ったことで、石碑が作物を危険物と誤判定し、成長を抑制しようとしたのではないかと……』
「抑制の桁がおかしい」
『そこは、まあ……』
「まあ?」
『……桁あふれかのう』
「桁あふれで村を飢えさせるな」
私は深く息を吐いた。
毒水を畑に使う。
豊穣石碑が異常を検知する。
作物の成長を止めようとする。
計算式が壊れて、成長値がマイナス固定。
結果、全農地が死ぬ。
「連鎖障害じゃん」
『れんさしょうがい?』
「一個のバグが別のバグを呼んで、村全体を巻き込むやつ」
『なるほど』
「なるほどじゃなくて反省して」
『反省しておる』
「足りない」
『すごく反省しておる』
「よし」
私は通信を切った。
農夫が恐る恐る聞いてくる。
「あの、リリィ様……畑は、戻るのでしょうか」
「様いらない」
「リリィさん……畑は、戻るのでしょうか」
その声は震えていた。
私は周囲を見る。
農夫たちの顔には、期待と不安が混ざっている。
水が戻った。
言葉も戻った。
だからこそ、畑も戻るのではないかと期待してしまう。
でも、期待するのは怖い。
十年も裏切られ続けたなら、なおさら。
「戻せるよ」
私は言った。
農夫たちが息を呑む。
「ただし、すぐに全部元通りってわけじゃない。土の状態も見ないといけないし、成長補正の再計算も必要。あと、豊穣石碑の式を書き換える」
「それは……大変なのですか?」
「まあまあ」
本当は、そこそこ大変そうだった。
だが、ここで不安を煽る必要はない。
私はニヤッと笑う。
「でも、こんなの直せない方がざぁこだから」
農夫たちは顔を見合わせた。
村長が感極まったように呟く。
「なんと頼もしい……」
「褒めるところそこ?」
◇
私は石碑の前に立った。
表面に刻まれた魔法文字が、薄く赤く光っている。
警告表示に似ていて、ちょっと腹立つ。
管理画面を展開する。
【豊穣石碑:管理権限要求】
【現在権限:村落補助装置】
【外部干渉:許可制】
【世界保守担当権限で上書きしますか?】
「上書き」
【権限確認中……】
【世界保守担当:リリィ・デバッグハート】
【承認】
【石碑内部魔法式を展開します】
目の前に、複雑な魔法式が浮かび上がった。
円形の術式。
植物を表す記号。
水脈を表す線。
成長値を計算する数式。
そして、そのあちこちに赤いエラー表示。
「うわ」
私は思わず声を漏らした。
「汚い」
村長が驚く。
「石碑が、ですか?」
「式が」
「式?」
「魔法式。コードみたいなもの」
私は空中の式を指でなぞる。
古い。
とにかく古い。
コメントもない。
命名も雑。
似たような処理が何度も書かれている。
不要な条件分岐も多い。
「これ書いた神様、出てきなさい」
通信画面を開く。
『な、なんじゃ?』
「ノア、この豊穣魔法書いたの誰?」
『わしじゃが』
「でしょうね」
『なぜわかった?』
「雑だから」
『ぐっ』
「コメントない。条件分岐多い。変数名が全部“豊かさ一号”“豊かさ二号”“すごい豊かさ”になってる。神様、命名センスざぁこ♡」
『命名まで刺してくるのか……』
私は通信を閉じる。
今は神様いじりより修正が先だ。
魔法式の中心部に、問題の計算式があった。
【現在式】
成長値 = 基礎成長値 × 汚染補正 × 豊穣補正
【汚染補正】
通常:1.0
軽度汚染:0.8
重度汚染:0.5
異常汚染:-9999.99
「異常汚染でマイナスにする意味ある?」
私は呆れた。
作物を止めるなら0でいい。
せめて0.1でいい。
マイナスにしたら、育たないどころか土から生命力を吸い上げる。
「これ、豊穣じゃなくて不毛魔法じゃん」
農夫たちが不安そうにざわめく。
「不毛……」
「やはり呪いなのか……」
「いや、呪いじゃない。設計ミス」
私はすぐ訂正した。
「呪いよりタチ悪いかもしれないけど」
「リリィさん!?」
「冗談。半分」
私は式を書き換える。
【修正内容】
・異常汚染時の補正値を0.3へ変更
・水質正常化後の再判定処理を追加
・成長値の下限を0に設定
・豊穣補正の上限を1.5に制限
・土壌回復処理を追加
・成長促進処理を段階実行へ変更
「よし。これで暴走はしないはず」
管理画面が確認を求める。
【豊穣魔法式を更新しますか?】
【はい/いいえ】
私は一瞬だけ止まった。
本番更新。
嫌な言葉だ。
前世では何度もこの瞬間を経験した。
押せば何かが変わる。
直るかもしれない。
でも、別のものが壊れるかもしれない。
背後には村人たちがいる。
水が戻って、言葉が戻って。
次は食べ物を待っている人たちがいる。
「……まあ」
私は小さく笑った。
「やるしかないよね」
指先で、はいを押す。
【更新中……】
【魔法式再構築】
【汚染補正を修正】
【成長値下限を設定】
【水質正常化を反映】
【土壌回復処理を開始】
【豊穣補正を再起動】
石碑が淡い緑色に光った。
畑全体に、柔らかな風が吹く。
乾いていた土が、少しずつ色を取り戻す。
ひび割れた地面が閉じていく。
枯れかけていた芽が、ゆっくりと背を伸ばす。
村人たちが息を呑む。
「芽が……」
「畑が……!」
「緑が戻ってる!」
私は管理画面を見る。
【農地成長値:正常化】
【成長値:12 → 18 → 27】
【土壌状態:回復中】
【収穫判定:準備中】
「うん。いい感じ」
そう言った直後。
【警告】
【一部作物の成長速度が想定値を超過しています】
「……ん?」
畑の端から、みしみしという音がした。
振り向く。
そこには、一本のカボチャの蔓があった。
最初は細かった。
だが、次の瞬間、蔓がぐんぐん伸び始めた。
土を這い、畦道を越え、柵に絡みつき、さらに太くなる。
「ちょっと待って」
【カボチャ成長値:急上昇】
【原因:豊穣補正再起動時の初回ボーナス】
【サイズ:通常比300%】
「初回ボーナスいらない!」
カボチャの実が膨らみ始める。
拳大。
人の頭大。
樽大。
馬車の車輪大。
村人たちが叫ぶ。
「カボチャが!」
「でかい!」
「でかすぎる!」
「リリィさん!?」
「わかってる!」
私は慌てて管理画面を操作する。
【成長促進停止】
【対象:カボチャ】
【停止処理中……】
しかし、カボチャは止まらない。
【初回ボーナス処理が優先されています】
「優先するな! 止まれ!」
巨大カボチャはさらに膨らみ、柵を押し倒した。
ごろりと転がった先には、畑の横に建っていた小さな物置がある。
農夫が叫ぶ。
「俺の農具小屋が!」
「小屋、逃げて!」
「小屋は逃げないよ!」
次の瞬間。
どん、と鈍い音がした。
巨大カボチャが農具小屋の屋根にめり込み、屋根を半分潰した。
村人たちが静まり返る。
私はゆっくり顔を覆った。
「……やった」
村長が震える声で言う。
「リリィさん……?」
「成長促進かけすぎた」
「かけすぎると、ああなるのですか?」
「なるみたい」
「なるみたい……」
巨大カボチャは、屋根に刺さったまま堂々と鎮座していた。
その姿には、なぜか妙な威厳があった。
子どもたちが目を輝かせる。
「すごい!」
「でっかいカボチャ!」
「食べられる!?」
私は管理画面で確認する。
【巨大カボチャ】
【状態:食用可能】
【味:甘い】
【保存性:高】
【危険性:小屋を潰す程度】
「危険性の書き方」
農夫は潰れた小屋を見て、それから巨大カボチャを見た。
「まあ……小屋は直せばいいか」
「いいの?」
「食べ物がある方が大事です」
その言葉に、周囲の農夫たちが頷いた。
「そうだな」
「十年ぶりに、まともな実りだ」
「小屋よりカボチャだ」
村人たちは笑い始めた。
最初は遠慮がちに。
やがて、大きな笑い声になる。
「屋根からカボチャが生えたぞ!」
「今年の収穫祭はこれで決まりだ!」
「リリィさんのカボチャだ!」
「私のじゃない。バグの副産物」
私は口を尖らせた。
でも、村人たちが笑っているならまあいい。
小屋は犠牲になったけど。
たぶん必要な犠牲だった。
いや、違う。
保守担当としてそれを言ったら終わりだ。
「ごめん、小屋はあとで直す」
私が言うと、農夫は驚いた顔をした。
「リリィさんが謝った……」
「何その反応」
「いえ、少し意外で」
「私だって小屋潰したら謝るよ」
すると村長が、穏やかに笑った。
「ありがとうございます。しかし、これはきっと良い兆しです」
「小屋潰れたのに?」
「畑が、また笑いを生んだのです」
村長は畑を見渡す。
そこには、さっきまでなかった緑が広がっていた。
小さな芽。
伸びる蔓。
色を取り戻した土。
風に揺れる若葉。
まだ完全ではない。
すぐに豊作になるわけでもない。
それでも、確かに畑は生き返り始めていた。
「……まあ」
私はそっぽを向いた。
「今度から成長促進は段階実行にする」
マリナが微笑む。
「では、カボチャのパイも作れますね」
私は即座に振り向いた。
「採用」
「ふふ。木苺とカボチャ、どちらがお好きですか?」
「両方」
「では両方作ります」
「この村、なかなか見どころあるね」
村人たちがまた笑った。
◇
日が傾くころ。
村の畑には、久しぶりに水が撒かれていた。
井戸から汲んだばかりの透明な水。
それを農夫たちが畑へ運び、丁寧に土へ染み込ませていく。
会話もある。
笑いもある。
水もある。
畑も戻りつつある。
十年止まっていた村が、少しずつ動き出している。
私は石碑の前に座り込み、最終チェックをしていた。
【農地状態:回復中】
【成長値:正常】
【収穫判定:一部可能】
【豊穣魔法:安定稼働】
【異常作物:巨大カボチャ1件】
【対応状況:食用転用予定】
「異常作物の扱い雑」
私はため息をついた。
でも、ログは緑色になっている。
赤い警告は消えた。
それだけで、少し気分がいい。
そこへ、さっきの男の子が走ってきた。
「リリィおねえちゃん!」
「おねえちゃんじゃない。保守担当」
「これ!」
男の子は、小さな野菜を差し出した。
まだ未熟な、小指ほどの小さなニンジンだった。
「畑で見つけた!」
「抜くの早くない?」
「お母さんが、これはリリィおねえちゃんにって」
「だからおねえちゃんじゃ……」
私は小さなニンジンを見る。
細くて、曲がっていて、食べる部分は少なそうだ。
でも、十年まともに育たなかった畑で生まれた、最初の収穫だった。
「……もらっとく」
「うん!」
「次からは、ちゃんと大きくなってから抜きなさい」
「はーい!」
男の子は笑って走っていった。
私は手の中の小さなニンジンを見つめる。
会話を直した。
水を直した。
畑を直した。
最初は、ただ面倒なバグを潰しているだけだった。
でも、そのたびに誰かが笑う。
誰かが泣く。
誰かの明日が、少しだけマシになる。
「……ほんと」
私は小さく呟いた。
「やりづらい世界」
感謝されると、雑に逃げられなくなる。
助けてしまうと、次も見捨てられなくなる。
こういうのは、本当に厄介だ。
その時、管理画面の端に小さな通知が出た。
【ハル村主要インフラ】
【会話機能:復旧】
【水源:復旧】
【農地:復旧中】
【結界:異常】
【外部経路:異常】
「……」
私は通知を見た。
「結界」
そういえば、村長が言っていた。
若者たちは何度も村を出ようとした。
しかし、出口の森は迷いやすく、他の町へ助けを求められなかった。
管理画面を開く。
【警告】
【村境界処理に異常があります】
【夜間防衛結界:解除失敗】
【住民通行判定:拒否】
【外敵通行判定:不安定】
【影響:村外移動困難】
「防衛結界が、住民を閉じ込めてる……?」
私は眉を寄せた。
その時、村の北門の方から声が上がった。
「門が!」
「道が消えた!」
「また森になってるぞ!」
村人たちがざわめき始める。
私は立ち上がった。
夕暮れの向こう。
本来なら村の外へ続く道があるはずの場所に、深い森が広がっていた。
道が消えている。
まるで、最初からそこに出口など存在しなかったかのように。
「……はぁ」
私は額に手を当てた。
「会話、水、畑、次は出口」
通信画面を開く。
「ノア」
『今度は何もしておらんぞ!?』
「何もしてないからこうなってるんでしょ」
『ぐっ』
「この村、出口まで壊れてるんだけど」
『……』
「住民を守る結界が、住民を閉じ込めてる」
『……』
「神様?」
『すまぬ、先に謝っておく』
「謝るだけで直るなら保守担当いらないんだよ、ざぁこ神」
『ぐはっ』
私は通信を切り、消えた道を睨んだ。
村人たちが不安そうにこちらを見る。
言葉は戻った。
水も戻った。
畑も戻り始めた。
でも、この村はまだ外へ出られない。
まだ、閉じ込められている。
「ほんと」
私はニヤリと笑った。
「脱出ゲームじゃないんだからさ」
赤い警告を指で弾く。
【村境界処理異常】
【優先度:高】
「はいはい。次は出口ね」
私は消えた道へ向かって歩き出した。
「防犯システムで住民閉じ込めるとか、ポンコツすぎ。まとめて直してあげる」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
畑のバグも無事に修正完了です。
ただし、成長促進が少し暴走して、巨大カボチャが農具小屋を潰しました。
小屋は犠牲になりましたが、十年ぶりに畑が実り始めたので、たぶんセーフです。
たぶん。
会話、水、畑と復旧してきたハル村ですが、まだ問題は残っています。
次回、第5話。
村の出口が消えるとか、脱出ゲームじゃないんだから。




