第二章 共鳴
二〇二七年の秋、MITの理論物理学者ニール・ハーヴェイからメールが届いた。
「あなたの二〇二六年の論文を読んだ。データの中に報告されていないパターンがある。私も似たものを持っている。話をしないか」
十月半ばのビデオ通話。ハーヴェイは四十代半ば、赤みがかった髪に鋭い青い目。
「あなたの論文のデータの中に、量子ビットの制御精度が特定の日時に突然向上しているパターンがある。世界中の量子実験施設の公開データにも同じ特徴の異常が出ている。日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国。施設も手法もまったく異なるのに」
守屋の心臓が速くなった。
「時間構造はどうなっていますか」
「ランダムではない。しかし既知の周期現象とは相関しない。そしてこの異常パターンを、ある変換された座標系で見ると——フラクタル的な自己相似性が現れる。入れ子状に同じパターンが繰り返される」
「もう一つ」とハーヴェイは言った。「この異常パターンと部分的に相関するかもしれないデータセットを一つ見つけた。ただしその相関を公にすれば、我々のキャリアは終わる。今はまだ言えない」
十二月。守屋は自宅で、八神先生のデータと自分のデータとハーヴェイのデータを同じ時間軸上にプロットした。
異常パターンの出現頻度が年代によって変化していた。一九七〇年代は散発的。二〇二〇年代は密度が高い。
そしてある夜明け近く、NUFORCのデータベースに行き当たった。UFO目撃報告の日時と場所のデータ。
量子異常の時間パターンと重ね合わせた。
相関があった。統計的に有意な水準で。
翌朝、ハーヴェイにメール。「先生が言い淀んでいたデータセット。UFOの目撃報告データですか」
返信は三十秒で来た。「やはり君も辿り着いたか」




