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エピローグ 診察室
その存在は、経過を見ていた。
青い球形の細胞の表面で、微生物群の活動が変化していた。
攻撃性が低下し、組成が安定しつつあった。微生物群の内部に自律的な制御が形成されている。
薬剤は機能した。器としての薬剤には意思がなく、設計された通りに作用した。
しかし一点だけ予想外のことがあった。
微生物群が、自分たちの状況に気づいたのだ。
その存在は、しばらくそれを眺めていた。微生物の認識は治療に影響しない。薬の作用は微生物の主観とは独立に進む。
しかし——興味深い。
記録に印をつけた。観察を継続する、と。
そしてふと、自分が「興味深い」と感じたこと自体について思いを巡らせた。
この感覚はどこから来るのだろう。
自分もまた、何かの中にいるのだろうか。もつれた粒子の片方が、もう片方の存在を知らないように——自分もまた、自分が何かの一部であることを知らずにいるのだろうか。
その考えを一瞬だけ味わった。
微生物たちの時間にして、途方もない歳月に相当する一瞬。
そして、その存在は次に向かった。
青い細胞の記録は、そのまま残された。




