第11話 悪魔についての勉強会③ 悪魔とは何か
「大罪」についての話をすると言ったな。あれは嘘だ(すみません
説明回的なお話パート3。
「それではまず、基本中の基本『悪魔』について話していこうか。」
ほどよく場が温まったところで真面目な勉強会へと話を戻す。
「では、アーチャーちゃん。ずばり、『悪魔』とは『何』でしょうか。」
「…、」
心の中では(あなたのことよ、下衆野郎…!)と怒りを燃やしながらも、深呼吸で冷静さを保った弓使いちゃんが目を閉じたまま口を開く。
「──私達の居る『この世界』の裏側、『魔界』と呼ばれる異空間に住む『精神生命体』。
欲望の力を操り、人間を餌にする危険な存在。それが『悪魔』よ。」
「うんうん、模範的な回答をありがとう。」
「…?」せいしんせいめい…??
答えを聞いたスザクちゃんが軽く首を捻っているので、深掘り解説といこう。
「スザクちゃん、『精神生命体』って言うのが分からないんだね?」
「おう…。」
「雑な表現を使えば『幽霊』だよ。肉体を持たず、心、つまり『霊的』な力の塊がそこに存在してだけの状態…。ほら、ファンタジーとかでよく見る、ふわふわ浮いている光の塊とかあんな感じ。
時と場合によっては、それこそ『精霊』『妖精』って言われたりもする。日本では『妖怪』って言った方が通りが良いかもね?」
「ほーん…。」
「あやふやで、欲望を『核』に存在している異質な『生き物』。そんな彼ら彼女らは、宿るべき肉体を探し求めて悪霊よろしく人間に取り憑いたり、魔法を極めて魔力の塊で己の肉体を構築したり、欲望を高めて『目に見える形』にまで存在強度を上げたり…、まあ、色んな方法で『進化』、をするんだ。
だから、幽霊みたいなふわふわなやつよりも『肉体を得た悪魔』ってのは大抵の場合、危険な存在になる。」
「…肉、体…。」ツイ…
「カリカリカリッ。」うまうまですわ~…
自身のポケットの中でスナック菓子を食べているハムスターちゃんを見下ろし、考え込んでいるスザクちゃん。
どうやら物理的に触れたりご飯を噛ったりできる自らの相棒に少しばかり不安を抱いた様子。当の本ハムスターはどこ吹く風で暴食に耽っているが。
「君の相棒たるナッツちゃんも確かに肉体を持っている、広い意味での悪魔ではあるけど。今のところ危険は無いから安心していいよ。」
「そう、なの…?」
「うん。
その子はおそらく、地球に元々居た動物のハムスターが飢餓…、ご飯が食べられなくて死んで、その死体ごと魔界に『落ちて』精神生命体に変化したパターンだろうから。」
「え…??」
「サクサクサクッ。」やめられない止まらないですわ~…!
驚愕に目が点になる魔法少女と、呑気に食事を続行する相棒ハムスター。う~ん、なんて危機感の足りないピンチだろう。
半分理解した上でこの態度を取ってるみたいだ。おおらかだね。
もう半分は、かっ○えびせんが実際に美味しいのが理由っぽいけど…。頬袋が次元収納で、そこから食べ物取り出して再び口に運ぶとか珍妙な動きだな…。
「そのナッツって名前の子、ものすごく人間臭いでしょ? 悪魔になる前から人間社会に馴染んでた、つまり誰か、人に長いこと飼われてたんだと思うよ? その呑気な性格からしてきっといっぱい愛情も注がれてたと思う。
まあ、悪魔化した時にその思い出とかは消えちゃったみたいだけど。」
「ジチチュ。」『美味しい今』を味わうのですわ~…
そもそも、サイズ感と精神性から「悪魔」よりも「妖魔」呼びが妥当だしね。「妖しい」けど、「悪い」ものではないのだ。
「まあ、欲望が暴走したりすればその子も討伐されるべき悪魔になる可能性が、有るにはある。
そうならない様に、2人仲良く食欲を満たして、楽しく生きればいいよ~。つまりは今まで通りで大丈夫。」
「そう言うもんか…。」
「チュ♪」ご飯の為に悪魔退治ですわ~…!
「ん。そうだな。」こくんと頷き──
「──バッカみたい。」
魔法少女と相棒マスコットの気持ち新たな再出発シーンに水を差す、軽蔑の言葉が飛んできた。
頭グリグリの刑から復活した、後方支援組・回復小学生の居屋敷ちゃんだ。
「なんだてめぇ…。」睨み付け…
「~~…。」知ら~~んぷり…
──洗脳操作開始。
「」ピタッ…
「居屋敷ちゃんはねぇ、スザクちゃんとナッツちゃんに嫉妬してるんだよ。仲良しな2人が羨ましくて羨ましくて仕方ないんだ。」
「…うらやましい?」
「うん。実は彼女にも、相棒と呼べる『妖魔』が居たんだけど…。それに捨てられちゃってねぇ。」
「え…。」
「」ピク、ク…!
僕の『意識停止・肉体固定』の洗脳に抗って体を震わせる生意気ちゃんだが、そこそこ強めに掛けたからもうしばらくは無抵抗である。
「色欲の妖魔で、色~んな女の子に声を掛けては雑に魔法少女化させる厄介な奴でねぇ…。デフォルメされたデッカい蝶々みたいな姿なんだけど、その見た目に騙されて契約しちゃう子が結構居てね。一緒に活動するうちに段々深く洗脳されて、都合の良い『性──ええと『餌』、にされちゃうんだ。
で、居屋敷ちゃんはそいつと相性が良くて、いやこの場合は『悪くて』? 独り立ちと言うか自力で魔力と欲望を制御できちゃって、縁が切れたと言うか、興味を無くされたと言うか…。」
(今、『放送禁止用語』を言い掛けたわね…!)先輩にチクってやろうかしら…!
「…、」なんつーか、それは…
「チュウ…。」御愁傷様ですわ~…
「」ピクピク、ピク…!
無言で非難の念を飛ばしてくるアーチャーちゃんを努めて無視して、話をまとめる。
「ま、同情する必要は無いよ。彼女は捨てられた後、その相棒と同じ悪行を人間相手にやり始めたんだから。
僕やリタちゃんが介入しなかったら、一地域まるごと『お姫さまを守る家来』にしかねないところだった。この子の方がよっぽど『害悪』に相応しいよ。」
「とやかく言える立場じゃないでしょうが…!」同族嫌悪も甚だしい…!
「…、いろいろあんだな…。」
「」ぐ、ぐぐぐ…!!
「と言う訳で。悪魔には気をつけましょう!ってお話でした。分かったかな?」
「おう…。
ところで、さ。」
「うん、何かな?」
「スクル、って、その…、」
スザクちゃんが自身の相棒を見つめた後、僕の方を探る様に目線を向けてきた。
「ああ、『僕』がその子と同じかどうか、元人間の悪魔なんじゃないか、って思ってる?」死体に取り憑いたり魔界に落ちたり…
「うん、スクルめちゃくちゃ人間っぽいし…、あ、や、聞いたらダメなやつなら別に…、」
「僕は『魔界』で生まれた時から『この肉体』だよ?」
「? そう、なの…?」
「うん。銀色の髪に紫色の瞳、2本の腕と2本の足に5本の指、骨と肉と内臓を包む皮膚持つ身体。君達と同じ基本構造を持つ悪魔だよ。
もちろん生まれたばかりは、人間と同じ様にちゃんと背丈の小さな赤ん坊だったはずだけど。」流石に覚えてないからなぁ…
「ん…??」あかん、ぼう…??
先ほどまでの話と矛盾する内容に、スザクちゃんが混乱している。まあ、無理もないが。
「『色欲の悪魔』…、僕だけじゃなく、魔界に今居る色欲の魔達は、少々特殊でね…。
その辺りを解説しながら、『七大罪』について話していこうか。」




