第10話 悪魔についての勉強会② 魔法少女が正義とは限らない
「こっちの無口な高校生ガールが、厳護 史援ちゃん。土属性の魔法を使う魔法少女で、アーチャーちゃんの先輩に当たる。彼女も悪魔との戦闘で色々と恐怖を感じてしまってね、以来、防御の魔法しか使えなくなって前線を退いた。
でも裏方仕事をしっかりこなしてくれる、“縁の下の力持ち”なんだ。」
「…、」真顔無言…
「ちなみにずっと喋らないのは、『戦いから逃げた自分には後輩に語る口が無い。』、『恐ろしい悪魔と言葉を交わすのが怖い。』って思っているから。
奥ゆかしい子だよね。仲良くしたげてね。」
「??」
スザクちゃんが頭に疑問符を付けて首を傾げている。まあ、気持ちは分かる。トラウマでまともに戦闘できなくなるのは普通に有ることだが、後ろめたさを抱えているのに勉強会に顔を出せるのはちぐはぐだ。
フォローしようとアーチャーちゃんが(僕への諸々を抑えて)言葉を繋ぐ。
「厳護さんは本当は頼りになる先輩なのよ? 地域の活動、悪魔とか魔法少女とかが関係しないものになるけど、積極的に参加してくれて情報共有も密にしてくれて。自然災害や事故が起きた時は大人顔負けの現場対応をしてくれるし。」
「へぇー…。」
「…、」スッ…
アーチャーちゃんの方を見た無言無表情の彼女が、自身の背後に魔力を集めていく。白と黒の砂が生成され、それらが空中に文字を形作る。
『求道 私は いくじなし だ もちあげて くれるな』
「何…?? いや…、え…??」目を白黒…
「そんなことはないわ、厳護さん。表の世界では貴女の方がよほど慕われているもの。
あと、火野さん。これが彼女なりのコミュニケーションだから、大目に見てあげてね。」
「う、うん…??」
「まあ、初めて見るとびっくりするよね~。土魔法でわざわざ文字を書くんだから。しかも他人に見える様にちゃんと左右反転してるし。」
悪魔と言葉を交わせば、それだけ洗脳とか精神汚染をされるリスクが増える。それを避けて会話するには有効ではあるだろう。手間や労力が明らかに見合っていないけど。
「悪魔が居ない場なら少しは喋ってくれるはずだから安心すると良いよ。アーチャーちゃんが言った通り頼りになる真面目で賢い子だから、普段の生活での困り事は彼女を頼ると良い。リタちゃんもよく褒めてるんだよ? 『真っ当な感性を持った一高校生で信頼できる後輩』って。」
(『毒弓使いが信頼されてない』って暗に言ってないでしょうね、こいつっ…!)内心歯噛み…!
「…、」無言腕組み…
「『マットウ』…??」
真っ当だとも。義憤から『憤怒』の魔法少女に覚醒して悪魔と戦い。自分の岩魔法が一般人に当たり怪我をさせてしまって、自分への怒りから攻撃能力を「破壊」してしまったくらいだからね。「大罪」とは縁遠い真っ当過ぎる子だよ。
被害者は回復魔法と記憶改竄で普通に社会復帰してるのに、僕の洗脳カウンセリングにも全力抵抗しちゃうし。
「そして、最後の1人で…、一番の問題児なんだけど…。」
「…、」知ら~~んぷり…
「いちばん…??」この2人以上…??
内面も態度も悪い小学生の女の子に冷めた視線を送る。
「正直、僕はこの子のことが嫌いでね。魔法少女とすら呼びたくないと思っているんだ。」
「スクルがそこまで言うの…??」
「チュー…。」驚きですわ~…
「だから、紹介はアーチャーちゃんに任せるよ。」
「…、えーと彼女は──」
「居屋敷 結愛で~す。小5で~す。終わり~。」
この可愛げの無いクソガキめ…。うちのエリザベートですら機嫌悪い時でももっと喋るぞ。
本当に世間を舐め腐っている。せめて愛嬌を持て。
「彼女は…、『色欲』…の力に目覚めた魔法少女なのだけど…、何と言うか、悪魔との戦闘を嫌ってると言うか…。年上の男性を魔法で魅力して、盾として使役すると言うか…。」
「ええ~…。」
「」ツ~~ン…!
まだ小学生だから仕方ない、って理論を軽々と超えてくるほどこの子は邪悪だ。一応は人間だけど、ほぼほぼやってることは悪魔と大差無い。
性的接触の無い「パ○活」をやってる様なもので、周りの大人や同級生を多数魅力し、悪魔と戦えるはずの自分を一般人に守らせようとする。自分を「偉大なお姫様」と勘違いしている、欲望に染まりきった俗物なのだ。
「ただ、貴重な『他者回復魔法』を持っていて、人材としては優秀、なの。そこの悪魔野郎と同分類の大罪持ちだから、記憶操作とかに微妙に耐性が有ってね…。相田先輩の発案で、監視を付けながら後方支援のお仕事をしてもらってるの。」
「個人情報流出~。」抗議しま~す…
権利を主張するなら義務を果たせ、って話なんだよなぁ。
「めちゃくちゃクソガキじゃん…。」
「ちょっと。あんたみたいな『男女』に言われたくないんだけど!」
「はぁ…?」急に突っ掛ってきた…
「自分のこと『オレ』と言って~。頭おかしいんじゃない?」
「」カチン…!
居屋敷のクソガキちゃんの煽りに、スザクちゃんの怒りのボルテージが上がる。
自分の一人称は「名前」なのになぁ。「オレっ娘」の良さも分からないとは、救いようがない。
「何? お前。ぶっ飛ばされてぇの?」
「わ~、暴力女~。暴力反対~。」
「なあ、こいつ殴っていい?」
「お、抑えて火野さん…。」
「いいよ!」ゴーサイン!
「ちょっと!」何言ってるのよ…!
「きゃ~、ユア怖~い。『助けて、我流くん』!」
卑しきガキちゃんから出た紫の魔力の粉が、机に突っ伏す梳宮少年の体にまとわりつく。すると少年が立ち上がって2人の間を遮る様に立った。
「火野。その辺にしとけ──」
「うじうじ野郎は引っ込んでろ。」
「…っ…。」ガクッ…
スザクちゃんの言葉のボディブローに、少年の心も体もあっさり折れる。まあ、軽い魅力で半ば強制起動させられただけだし、仕方ないね。
とりあえず、舐め腐りガールの背後に立ち腕を構える。
「」ぐりぐりぐり…!!
「きゃーーーー!?」こめかみぃ…!?!?
「とまあ、こんな風に魔法の力を悪用すると、正義の鉄槌が下される。」ぐりッ!ぐりッ!ぐりッ!!
「いたい痛いイタイィ!?!?」やめてーッ!?
「スザクちゃんはこうなっちゃダメだよ?」スッ…
「…、ん。」とりあえず引き下がり…
「はひ…っ、はひぃ…。」ホワワァ…
涙目で自分自身に回復魔法を掛ける姫気取りちゃんを横目に、ホワイトボード前に戻る。
「てな訳で。欲望に呑まれるとこうなるって一例でした。
良識有る皆は、堕落しない様に気を付けて活動しましょ~う!」
「おう。」
「下衆悪魔が言うんじゃないわよ…。」
「…、」無言腕組み…
「」無言崩れ落ち…
「すん…、すんっ…。」ユアの敵ばっかりぃ…(泣)
次回は、「大罪」とは何かを学んでいきましょう~!




