55話 奪還
書きたいことはある。なのにそれがうまく物語として繋げない。ただ出すだけだと千文字程度で終わる。文才の無いこの身が恨めしい。
「さて、場所は分かったかな」
校庭に集合した一組の面々は、各々の方法で宗司とフェルナリエルの行方を捜していた。
「多分、ルーデルハイト魔王国の、ラダン平野の上空?」
「ああ、良かった。ぼくも同じ結果だからね」
シラウオがコバンの質問に答えると、ヒラマサがそれに同意した。
「ヒラマサが言うなら確定だろ。早く行くぞ!!」
ヒラマサの固有回路は「探知」。距離、障害に阻まれずに任意のモノの場所を特定することが出来る。
もちろんシラウオやほかのクラスメイト達がやっているように、宗司の持ち物を媒介としたり、空気の記憶を読んだり、いわゆるもの探しの術の様な一般回路で特定することも可能だが、固有回路の利便性と精度はそれを大きく上回る。当然それはハッカクも承知しているので、さっさと乗り込もうとしているのだ。
「落ち着いて」
そんな興奮気味のハッカク、いや、彼だけではない。態度には出していないが、クラスのみんな、腹の中でかなりのものを据えかねているのだ。わかりやすく言えば怒っている。アサリはそんな彼らをなだめる。
「向こうについてからの行動を確認するよ」
「向こうについてからの行動?作戦聞かされたない」
アサリの言葉に、真司はまた自分だけ、何かを見落としているのではないかと不安になり、白波サイトを開くが、その疑問は、タカベ、マブナによって解決される。
「殺さねーだけじゃないの?」
「なるたけ早く救出とかか?」
「そうそうそれ。気を付けてね」
どうやら真司が心配していた自分だけ知らない作戦があるとかではないらしい。
「いやいやいや、ダメでしょ。もっとなんか、ちゃんとした作戦とか」
真司は素人なりに、今の状況にダメ出しをする。さすがに戦ったことが無いとはいえ、無策で突っ込んでも駄目だということは解る。
「作戦って言っても、、、」
そんな真司の指摘に、アサリは困った顔をする。
「相手は淫魔を送ってこちらの情報数衆と攪乱をねらってきた。つまり彼方には今私たちを迎え撃つ準備が十分ではないということ。相手の態勢が整う前に叩くのは戦術の内でしょう?」
そんなアサリに代わって、普段から成績優秀な女子生徒、テトラは真司に説明する。
「体育祭の補講が終わったタイミングというのもよかったわ。互いの固有回路や戦い方、力量もわかるし
」
「え。・・・俺分からない」
「・・・あなたは好きに動いていいわよ」
テトラと真司の不安げなやり取りが介されている同刻、宗司が囚われている檻の前で軍人たちが話して居いた。
「ふう、話が随分と違いましたね」
「そうなんですか?」
牢の見張りに、アルティッテ少佐が現状確認次いでに宗司について話す。
諜報部から得た情報と、実際に自分が相対したときの所感の差異を、愚痴とまではいかずとも、注意として部下に伝える。
「異世界から来て数ヶ月。半年は過ぎたようだが、力、術に関していえば、すでにそこらの兵と同様かそれ以上」
「・・・流石は海の国ですね」
見張りは戦々恐々としながら少佐と宗司を交互に視る。そこには決して、嘲りや皮肉の類は一切含まれていない。
「本来海の国と相対すときはいくつかの国が連合を作って、綿密な計画の下当たるからな。外様とはいえ、油断はできない。あそこの教育者をぜひ歓迎したいところだ」
「ああ、それはいいですね。何でそうしないんです?」
アルティッテ少佐の皮肉を馬鹿正直に受け止めた新人の見張りが質問をした。其れを聞いた中堅の見張りと、アルティッテ少佐が同時にため息を吐く。
「それは無理な話だ」
アルティッテではなく、相方の見張りが新人に解説を始めた。
「なんでですか?」
「うち、というか魔族は基本的に魔力しか使っていないだろ?」
「ええ、というか、それ以外使えないですし」
相方の質問に、うなずきながら返答する。
「いや、ほんとは魔力以外も使えるんだが、無意識に忌避してんだよ」
「え?そうなんですか?体力とか魂力も?」
「ああ、だけどパリス教はそれを容認していない」
「ああ、そう言えばそうでしたっけ?」
「パリス教?」
その時、新たな声が追加された。
「目が覚めたか。異界の人」
アルティッテ少佐が挨拶すると、見張りの二人は牢の中を覗き、慌てて身構える。
両手両足拘束されているとはいえ、先程油断するなと教えられたからだ。現に声を掛けられるまで起きたことにすら気付かなかった。
「パリス教とは魔族が信仰する一大宗教だ」
宗司の質問にアルティッテが答える。
「はっ、宗教のせいで自分を縛るとはな」
「まあこの国はそこまで熱心ではないが」
「少佐殿、そんな話て大丈夫なんでしょうか」
中堅の見張りが心配するが、アルティッテは片手をあげ制し、大丈夫だと返答する。
「パリス教は魔力第一主義だからな。そのせいで、体力、魂力のノウハウがほとんどない」
「・・・ペラペラしゃべるな」
「本日の業務はすべて終えているからな」
「・・・暇なのか。まさかそこまで話してくれるとはな。最初の冷酷かつ職務に忠実な印象とは違うな」
目は睨んだまま、口角を若干上げ、宗司はアルティッテと相対する。
「私も、お前の印象を改めさせられたな」
「あ?」
急に何を言うか、宗司には身に覚えがない。
「諜報の話では、お前は他人に興味が無い類の人種だと聞いていたからな、あそこであのエルフの話が出てきたときは驚いた」
アルティッテが話しているのは戦闘中、アルティッテが勧誘したときの話である。
「・・・まあ、元の世界はクソだったけどな。あいつらは、、、」
言いよどんだそのとき、船内が大きく揺れる。
「!!」
「うわ!」
「少将!!」
「何事だ」
「敵襲です!」
外から飛び込んだ兵の言葉に、宗司は口角を上げる。
「来たか」
そう言って天井を、上空を見上げる。
「お!あそこっぽいよ」
上空、船の周りで浮遊しているソウハチが、宗司の視線に気づき周りに知らせる。
「てことはあそこをぶった切ればいいんだな!!」
ハッカクは狙いを定め、腰の得物を抜く。
日本刀だ。普通の2倍はある。
「ええ、、、まあいいか」
その単純な言動に、シラウオ他数人が呆れるが、まあ、止めて止められるような奴ではないので、そのまま容認する。
「うりぃあ!」
船が真っ二つになった。
「おっ!でてきた」
「あいつか!」
ハッカク他一組の面々がクラスメイトを攫って奴らの面を拝むと同時に、魔族も又、敵襲を、船を切り割った輩をその見にとらえる。
「ああ!!!墜落する!!!」
「この程度では墜落しない!舐めるな!」
慌てるものとそれを嗜めるもの。少々統制が混乱したところに、一組の面子は堂々と突っ込む。
「宗司ー!迎えに来たぞー!」
コバンの声が響くと同時に、両軍はぶつかり合った。
多くの声、気合、怒気、恐れ、、、そして興奮と倦怠。これらが混じった戦いは、圧倒的に一組の優勢でどんどんと事が進む。
「学生とて油断するな!常に一人当たり3人以上で掛かれ」
カラン、と音が鳴れば、皆が否応なしにそちらを向く。それは何も、警戒しての事ではない。イサザの固有回路だ。
「ウッ!」
そうしてできたスキに、エンゼルやアシロが的確に司令官と冷静な士官の意識を刈り取る。
「クソッ!」
学生一人を打ち取ろうと魔法を放てば、防御魔法に阻まれる。
「何故だ!」
薄い一枚。普段であれば割れぬことなどない魔法だが、ソウハチのつくる魔法防御壁は一向に壊れる気配がない。その隙にカイワリに意識を取られる。
「あれ、たぶんマブナだろうが、ずいぶんと派手だ。死者はなるべく出さないのが、今回の戦いなのだが」
カイワリが心配して見ていた方向では、彼の固有回路「遠視」を使わなくとも、マブナの爆破がよく見えていた。
「おりゃー!」
「うわわわわわわわ!!!!!!」
爆発音
「れりゃー!」
「あああああ!!!!!!!」
轟音
阿鼻叫喚とはまさにこのこと。地獄絵図もいいところ。壁、床、天井、全てがボロボロだ。だというのに、倒れている兵隊は気絶こそしているが、傷一つついていない。マブナという男、攻撃方法もおおざっぱであれば、治癒方法もおおざっぱである。
「クソッ!いったん引いて―――」
猫の耳に犬の鼻、龍のウロコに機械の腕。そのほか多種多様な生物の特徴を持つカジキを見て、忌避感ではなく戦略的に撤退をするのは、流石魔人と言ったところ。庸人であればまず恐怖が来る。
しかしそんな士官を不可視の魔術が襲う。
「うえーい」
「ないっすー!」
あれはカジカの「不可視」の攻撃だった。
「軍人を舐めるなー!」
カジキとカジカが暢気にハイタッチしているところへ、魔術ですさまじいほどの身体強化をしている魔人が襲い掛かる。
しかし、その怪力が二人に届くことはなかった。
「うお!」
いつの間にか立っていたカラスにいとも容易く合気で投げられ、
「眠れ」
ヒイラギの「言霊」で眠らされる。
「ひゅう~!カッコいい!」
「仕事に~ん!」
囃し立てるカジキとカジカに少し臭そうに頬をかき、頭をかく二人。
そのまま次のところへ行ってしまった。
「クソッ!投降しろ!」
軍人としては愚策もいいところ。女子学生、マーリンを人質としてカワヒラに投降を勧告する。
マーリンは拘束をヌルっと抜け出した。
「な、え?」
「人の彼女に軽々しく触んな」
顔面遠くの壁がめり込むほどのパンチを魔人は受けた。
「嬉しいけど、やりすぎ」
「ワリっ」
大雑把なカワヒラをマーリンが優しくたしなめると、カワヒラは右手でチョップを作り、ものすごく軽く詫びるのだった。
「いや~、みんなすごいねぇ。ボクの出番がないよ」
「ホントホント。まぁ、分かってたことではあるけどね」
ツチフキとヒラマサはそんなことを言いつつ、宗司を救出し終えた。
「おれのみ間違えじゃなかったら、これ、手刀で切ってなかったか?」
そう言って宗司が見るのは、真っ二つになって拘束具。計八個。
自信の四肢を先ほどまで拘束していた武具。ただの鉄鋼ではない。恐らく元の世界にはない好物。鉄よりもはるかに頑丈なそれを二人は手刀ですぱすぱ切っていた。
「まあ、包丁ないときには手刀で切ったりするしねぇ」
「流石に隠し包丁や飾り包丁は無理だけど」
そういう次元ではないのだが、、、
「あとあれ、確か魔法と科学の融合で、並の銃器よりはるかに高威力、高精度、連射速度を持ったライフルだったと思うんだけど」
「うりぃあああ!!!」
宗司の目線の先ではハッカクが5人の銃兵に囲まれ、一斉砲弾を受けても、体に傷一つつかず、竹刀を振り回している光景が広がっている。
「弾、これだよな?」
宗司の掌には、良く知る物よりもより凶悪な形状になり、更に魔法が編みこまれている凶弾が乗せられていた。何ならこれは、さっき見張りがツチフキに撃ったものだ。難なくキャッチしていたが。
「難なくじゃないさ。結構ヒヤッとしたよ」
「そのあと気の抜ける声で『危ないねぇ』なんて言った奴の言うことは信用できない」
どこかほのぼのとした談笑の中、彼らの死角で数人の魔人が船からの脱出を図っていた。
「く、とりあえず増援を」
開始数分でほぼ壊滅。おまけに通信機の類はどういうわけかすべて使用不能となっていた。シラウオやオイカワたちが何とかしているのだ。
だから増援を呼ぶには直接赴くしかない。
そうして外に出れば、そこにはアルティッテ含め、多くの魔族が気を失いつつも浮いていた。
「な!」
「ごめんね」
アサリが彼らの意識を奪う。
「俺たち居る意味ある?」
そんなアサリを見て、ヤマメがハクレンに問う。
そのほかマダイ、チヌ、シイラが外で浮遊、旋回していた。
「外からの妨害を防いだり、気がくるって飛び込む人を救出するのがとりあえずの役割だし」
「中これ以上いらないし」
マダイとシイラがそんなことを言う。
「つまんね」
「つまらなくても、今回彼らに非はない。黒幕について調査しなくてはならない。そのためには、全員無傷で制圧しなければならないのよ」
愚痴を言うヤマメをチヌがたしなめる。
「うー。・・・そうだ!これ終わったら飲みいいかね?」
「・・・いいわよ」
「「さんせー!」」
やはりどこか緊張感が見えない。
「どはっ!」
そんな雑談をしていると、鋼鉄以上の硬さを誇る壁から、ロードルハンが血だらけになりながら吹き飛んできた。
「うお、やべ!」
ヤマメが慌てて救出しようとすると、ロードルハンを中心に魔法陣が展開され、ロードルハンの落下を阻止した。
「ごめーん!ありがとー!」
壁の穴からロードルハンをキャッチしたハクレンに、謝罪と感謝を伝えているのはスズキだ。
「お前これ!・・・もっと手加減できなかったのか?!」
「そんな余裕なかったんだよ」
マダイの指摘に、若干罪悪感を覚えた声でスズキが反論する。
「本当に、強かったです!」
スズキを援護するように、ひょっこり現れた真司がそんな風に付け足す。
彼も全身傷だらけだったが、徐々に治していっているようだ。
「あんま回復を多用するなよ?命にかかわるところだけにしておけ。擦り傷かすり傷いちいち治して戦いのMP無くなった、なんて事になったら笑い事じゃ済まねえぞ?」
スズキが真司の治癒方法についてそんなことを指摘すると、真司は難しそうな顔をした。
「分かってるけど、今のでもう全員制圧しきったみたいだよ?」
船内を指さす真司。つられて中を見れば、最早立っているのは一組の面子だけだ。
気絶していないのは、プリステラの「金属操作」にやられた連中だろう。
「大丈夫か?」
倒れ伏す魔人を通過して、真司は宗司に駆け寄る。
「なんとかな。傷も回復してもらった」
ロードルハン戦で着いた傷は、コバンによって治してもらっていた。宗司の後ろでコバンが二カッと笑いながらvサインを見せている。
「そっか。・・・この人たち、軍人なんだよね?」
「みたいだな」
倒れ伏す精鋭、かどうかは分からないが、魔人の軍人。魔術に関していえば、宗司含む庸人よりもはるかに優れているという。それが、こうも、、、。
「ま、いいでしょ。とりあえず地上に船降ろすよ」
コバンが両手を合わせて今後の指示を出す。
「え?戦利品として持ち帰るんじゃないの?」
「馬鹿言うなスズキ。こんなガラクタ持って帰ってどうすんだ」
「置き場もないでしょ」
こういった機器、武具の類に目が無いスズキが口惜しそうにするが、アミキリとアサリの意見に渋々従った。
そして船はゆっくりと降下し、ルーデルハイト魔王国のラダン平野に着地した。
魔人が強すぎたせいで海の国がどんどん強くなる。まあ、この後出てくる敵と味方とそれ以外も強い設定だけど。これ以上に。インフレ嫌いな方は離脱推奨。ただでさえ少ない読者が離れていく~。




