ヴォロネジ会戦①
北部の戦い(ヴォロネジ戦線軍VS第二装甲軍)
第二装甲軍左翼(第41装甲軍団、第23軍団)VSヴォロネジ戦線軍右翼(第6親衛軍)
第二装甲軍中央(第47装甲軍団)VSヴォロネジ戦線軍中央(第7親衛軍)
第二装甲軍右翼(第46装甲軍団、第20軍団)VSヴォロネジ戦線軍左翼(第69軍、第38軍、第40軍)
【1943年5月14日 ソビエト連邦 北部作戦集団 ヴォロネジ戦線軍司令部】
「先ほど最高総司令部からの連絡がきた。これより我が軍は最高レベルの警戒態勢を敷く。ファシストの攻撃に備えよ!」
ヴォロネジ戦線軍司令官ヴァトゥーチン大将は号令を下す。
集まった前線指揮官や参謀たちは自信に満ち溢れた表情で頷く。
ヴォロネジ戦線軍、ステップ戦線軍、ドン戦線軍麾下の各軍は何か月も前から防衛計画をたて、訓練を実施し、主戦線を強化してきた。
過剰なまでの戦力集中がドイツ軍に対する恐怖を薄れさせ、将兵に自身を取り戻させた。
「敵第二装甲軍が北から我がヴォロネジ戦線軍を突くだろう。敵の重点は右だ。我が軍はまず右翼軍に対する敵の第一撃を受け止めねばならない。準備はどうか作戦参謀」
「全砲兵部隊は装填を終え、いつでも砲撃可能です。前線兵力は各防衛計画に沿って防衛地点への移動を完了させており、先ほど全ての点検を終えました」
「うむ。だが、念には念をいれておこう。我々はあらゆる欠陥を取り除かねばならん。野戦ケーブル1ミリに至るまで徹底して検査を行え。各将校達はもう一度射撃計画と防衛計画を検討するのだ」
「「はっ!」」
将校達が作戦計画の最終確認をする中、前線の兵士達は壕やトーチカに身を潜め、照準の再確認を行う。
中隊から軍、そして戦線軍司令部に至るまで全ての戦闘単位が迎え撃つ準備を整えていた。
あとはファシストの攻撃開始を待つだけだった。
【1943年5月15日 北部攻撃部隊 第二装甲軍】
オリョールでは第二装甲軍司令官ルドルフ・シュミット上級大将が攻撃開始時刻を待っていた。
すでに麾下部隊の全てが出撃地点に移動し、展開を終えている。
「司令官閣下。時間です」
「よし。全作戦部隊攻撃開始っ!」
時計の針が作戦開始時刻の12時45分を指すと同時に地上攻撃機、急降下爆撃機の大編隊が爆音を轟かせながら一斉に出撃する。
目標は敵防衛地帯の最前線区画。7波に渡る波状爆撃で地上目標の砲兵観測所、通信センター、物資集積所を次々と吹き飛ばしていく。
精鋭戦闘機隊は妨害にでてくる赤色空軍の戦闘機隊を血祭にあげる。
爆撃が終わると軍砲兵が全力の先制弾幕射撃を開始。灼熱の豪雨が陣地帯に降り注ぎ、周囲の兵士や兵器群を薙ぎ倒す。
1時間30分に渡る砲撃を終えると全攻撃部隊が前進を始めた。
第一撃を繰り出したのは左翼部隊の第23軍団。フェルディナント45両を先頭に強力な火砲を多数携えた第78突撃師団が第6親衛軍作戦地域に切り込んだ。
先制砲撃で叩かれた第6親衛軍前線師団群は砲兵観測が機能せず混乱が続いたが、準備砲撃から生き残った火砲部隊は猛烈な防御砲火を展開。
殺到してくるドイツ兵に少なくない損失を与えた。
赤軍の防御砲火の嵐の中で堅牢な装甲と絶大な火力を併せ持つフェルディナントの存在は大きかった。
位置の判明した敵火点を88ミリ砲で片っ端から潰していく。
大量に投入されたフンメルやホルニッセといった新型自走砲も各陣地に巨弾を叩きこんでいき、第78突撃師団は第199親衛狙撃師団を蹴散らし、第一線陣地の占拠に成功。
中央部隊の第47装甲軍団もシュツーカの地上支援をえた第6装甲師団が第一線陣地の占拠に成功した。
赤軍の頑強な抵抗を前に苦戦を強いられたが、後続の第18装甲師団の戦車群が加わることでなんとかねじ伏せた。
進軍を阻むべく殺到してきたT-34旅団も、先頭を進むティーガー大隊がT-34の有効射程距離外から一方的に打ち負かし、叩きのめした。
装甲通信車に乗り込み前線で指揮をとる第47装甲軍団長レーメルゼン大将に同乗していた作戦参謀が語り掛ける。
「進撃は順調です閣下」
「だが、敵の抵抗は激しい。攻撃計画も想定通りとはいかないか」
「はっ。本来なら第6装甲師団は単独で突破するはずでした。第18装甲師団の早期投入は想定外です。しかし、同師団の投入により我が軍団は幅15キロの突破口を確保できました。ここは予備兵力を投じて一気に突破を図るべきかと」
右翼の第46装甲軍団、第20軍団も第一撃を成功させている。左翼も第78突撃師団の活躍で敵防衛線にかなり食い込んだ。作戦参謀の言う通り中央の前線を押し上げる最大の好機だろう。
「空軍の支援はつくか?」
「あと3時間は支援が可能だそうです」
「支援がつくうちに前進しておくのが得策か。第501重戦車大隊を送る。第6装甲師団は直ちに前進し、敵防衛線を撃ち崩せ」
レーメルゼンは攻撃開始から3時間で早くもティーガ―大隊全ての投入を決めた。
【1943年5月14日 ソビエト連邦 北部作戦集団 ヴォロネジ戦線軍司令部】
「空はもう少しなんとかならんのか」
「はっ。現在、全力で対応中であります。予備の戦闘機隊も攻撃機も全て投入しますので、もう少し待っていただければ…」
ヴァトゥーチンの問いに第16航空軍司令官セルゲイ・ルデンコ中将は震えあがっていた。
ドイツ空軍の猛攻で前線の地上部隊は大損害を受けていた。第16航空軍の戦闘機隊は地上攻撃を食い止めるべく次々と出撃しているが、敵戦闘機隊に片っ端から撃ち落とされている。
粛清期のように政治的信頼性とやらで粛清される危険性は今やない。
だが、「無能」と判定された者に対しては相変わらず容赦がないのがソビエト社会だった。スターリンの友人だったク―リク元帥でさえいまや元帥号を奪われて、僻地に追われている。
粛清期とは別の緊張感が軍全体を覆っていた。
ルデンコの様子に気付いたヴァトゥーチンは落ち着かせるように声をやわらげた。
「私は貴官を責めているのではないし、解決策を強要しているわけでもない。最善の対応策を教えてほしいのだ」
安堵の表情を浮かべたルデンコはようやく本心を口にする。
「はっ…。敵戦闘機隊とまともに戦い消耗するのは得策ではありません。敵空軍が休息のため後方基地へ引き返す時を狙います。それまで攻撃機と爆撃機は温存すべきかと」
敵空軍の地上攻撃を止めることは無理なので、温存した空軍力の全てを地上攻撃にむけ敵地上部隊の撃破に全力を注ぐ。
ようするにノーガードで殴り合えというのがルデンコの案だった。
ヴァトゥーチンはルデンコ案をあっさり了承した。
「いいだろう。貴官の思う通りにやりたまえ。空の戦場は貴官に委ねよう」
「ありがとうございます」




