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作戦計画オットー

【1940年10月30日 第三帝国 フランス軍政府領 ファンテンブロー 陸軍総司令部】


俺が作成した作戦計画は陸軍参謀本部の手で細かい所を補強された後、『オットー』と名付けられ、陸軍総司令部案として提出された。

ヒトラーは作戦計画の大筋には合意したが、案の定いろいろな修正を加えてきた。


「本作戦の重点はプリピャチ沼沢地以北における二個軍集団(中央、北方)に置かれる。中央軍集団は強力な装甲・機械化兵力を用いて、白ロシアのロシア軍兵力を殲滅する。その任務を達成次第、交通および軍事上の中枢であるモスクワへの迅速な進撃を開始する。モスクワの占領は経済的・軍事的に決定的な効果をもたらすと同時に、敵の最も大切な鉄道網の中枢を麻痺させることになる。また敵が陥落を恐れる地点への直接的な軍事的脅威は、決戦を強要する上で最も効果的な手段であり、モスクワ正面へのロシア軍兵力の誘引が可能になる。北方軍集団はバルト地区のロシア軍兵力を殲滅後、クロンシュタット港とレニングラードの占領作戦に直ちに移行する。プリピャチ沼沢地以南における一個軍集団(南方)はドニエプルにおける敵兵力と予備部隊を可能な限り誘引する。モスクワ攻略後、中央軍集団が派遣した装甲部隊と共にキエフを奪い、ウクライナ地区の敵兵力を殲滅する。またルーマニア軍と共同でクリミアのロシア空軍基地を無力化し、油田地帯の安全を確保する」



最も大きな変更点はレニングラードに重点が置かれたことだ。

ヒトラーは政治上・経済上の理由からモスクワよりもレニングラードの奪取に関心を向けている。北欧諸国に鉄やニッケルなどの鉱物資源を依存している帝国にとって、運搬路であるバルト海はまさに生命線といえる。レニングラードを電撃的に占領し、同市のクロンシュタット港に駐留するバルト艦隊を無力化することで、バルト海への脅威は完全に取り除かれる。

そしてレニングラードはボリシェビキとロシア人にとって精神的な支柱であり、同市の陥落はロシア人の民族としての誇りと継戦意思を粉微塵に打ち砕くだろうとのことだ。


俺の提出した赤軍の戦力分析もヒトラーは懐疑的だった。ヒトラーいわくスターリン体制に絶望しているロシア人は帝国の攻撃と同時に蜂起するので、ソ連の実質的な戦力は100個師団に満たないらしい。

冬戦争で確認されたT34の脅威にも楽観的でロシア人の技術ではT34を毎年100両も量産出来ず、たとえ量産されても経験、訓練、戦術、戦略、国民性、イデオロギーの点で帝国の兵士が勝っているので大丈夫らしい。一万機の航空機も一万両の戦車も数だけでのはりぼてに過ぎないとのこと。


一方、成果といえるのは中央軍集団のモスクワへの優先度が明文化されたことか。南方軍集団の役割もウクライナ方面のソ連軍兵力を誘引することだと明確に定められた。これで史実のような戦略目標の優先順位の不明瞭さは解消され、キエフかモスクワかで迷う心配もなくなった。

レニングラードに装甲兵力を割かれるのは痛いが、優先順位がはっきりしたのは大きく、26個装甲師団中18個装甲師団が中央軍集団に与えられることになった。


作戦開始日は1941年5月~6月と予定され、26個装甲師団を含める152個師団とルーマニア軍やフィンランド軍などの同盟軍35個師団が投入される。

今、東部に展開している兵力はわずか35個師団。

本格的な兵力移動は3月中旬から始まることになる。フランスに移動した陸軍総司令部もこの移動にあわせてベルリンに戻る。この輸送計画は明確な欺瞞作戦に基づいている。

帝国の鉄道網はロシアのそれよりもはるかに優秀で整備され、帝国が10個師団を動かす間にソ連は2個師団程度しか国境に送れない。

陸軍輸送課にいたころ、俺は上司のバーゼルト大佐と協力して鉄道の性能差を利用し、ギリギリまで部隊を動かさず、ソ連軍の国境展開が間に合わない時期になったら一斉に大兵力を国境に送る計画をたてた。ソ連側が気付いた頃には陸軍の全部隊が集結し、攻撃準備を整えていることだろう。


攻撃開始までの間はアプヴェーアがあらゆるルートでソ連とイギリスに欺瞞情報を流す。

帝国には世界規模でイギリスを攻撃する明確な決意があり、ソ連イタリアと共に中東のイギリス権益を奪い、極東の日本にシンガポールを落とさせる計画が進行中であると。

日独伊にソ連を加えたユーラシアブロックでアングロサクソン国家に対抗するのだと。

幸いなことに1940年10月27日、大日本帝国、イタリア王国との間に三国同盟が締結され、自由スロヴァキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、ユーゴスラビアが同盟への参加を表明したことで、アプヴェーアの流す欺瞞情報の信憑性が高まっている。



俺自身は対ソ戦でグデーリアンが指揮する第二装甲軍の作戦参謀を務めることになった。

「装甲軍」とは対ソ戦に備えて創設された装甲部隊の新たな戦闘単位であり、独自の補給体系と指揮系統を有する。他の野戦軍に補給を依存し指揮権を制限されていた「装甲集団」と違って、「装甲軍」は通常の野戦軍と同格の扱いを受ける。史実だとモスクワ攻勢を実施する直前に創設されたが、こちらの世界では史実より一年近くはやく創設されることになった。

これは陸軍総司令部が改革案を了承し機動戦に完全に舵をきったことが大きい。


第二装甲軍は第三装甲軍と共に中央軍集団に配属され、先鋒を務める。

いわば槍の穂先であり、この装甲軍がいかにソ連軍の前線を破り素早く進撃出来るかで作戦の成否は決まるといっても過言ではない。つまり、俺の作戦がうまくいくかは俺の働き次第というわけだ。

責任重大だがシンプルでわかりやすい。ここまできたならやってやろうじゃないか。

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