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お稲荷様、着衣を拒絶する

王都より遠く離れた地。

忘れられた天空都市と呼ばれる過酷な極寒の地で、一体の巨龍と戦う人間の一団の姿があった。

蛇のように細長い体だが、全長が100メートル程もあり、胴体もそれなりに太い巨体の為、誰が見ても人間達の命は風前の灯火としか思えないだろう。


だが、状況は違っていた。

巨龍の体には多くの傷跡が走り、片目は既に潰されている。鱗の所々は太い氷の杭が打ち付けられて、肉まで到達したのか流血が見られる。


対して人間達は無傷。

大盾を構えた男、元聖騎士イングバルドが常に狙われやすい位置どりを行い、時には挑発し、仲間に視線がいかないようにしているのだ。彼の大盾には幾多もの傷が走っている。だが、その厚みはまるで健在だ。


不意に、巨龍は視線をイングバルドから外す。

目の前の敵よりももっと厄介な力の波動を感じたのだ。

それから視線を外せば命はないと思える危機感に、巨龍は意識を向けざるを得なかった。


巨龍の目には『死』が迫っているとしか思えなかっただろう。


力の波動は、ちっぽけな一人の人間を中心に集まっていく。それがまだまだ増加していく。

自分の爪よりも鋭いあの剣にはどうやっても太刀打ちできないと直感した巨龍は生存本能に従い逃走を開始する。


逃亡は決して恥ではない。

むしろ、強者と戦い生き残る事ができたなら、さらに強さを得るのだ。


人間の中には、毒にしかならない餌もあるのだと知る事ができたのも、良い学習になった。

別の場所へ向かい、別の餌場を探さなければ……。


そう思い、飛翔しようとした巨龍の背中に衝撃が訪れる。

その犯人は、極寒の地でありながら肌の露出の多い女戦士アンナ。持ち手の二倍くらいありそうな巨大な斧が、巨龍の背中を襲う。ダメージは柔軟性のある鱗のおかげで殆どない。だが、飛翔する勢いを削がれてしまった。

ダメージが通り難い頑丈な部位とはいえ、あの場所には此方から攻撃がし辛い。体を反転してもあの人間はどうにも落ちないのだ。


……空への逃亡は困難だ。


あの『死』は、未だ動かない。

だが確実に、自分を仕留めるために力を溜めているのが分かる。

巨龍は焦り、両の手で地面を蹴ろうとするが、魔術師カイトの魔法によって、土は柔らかくされていた。地面が、碌に掴めない。

手が地面に埋まった瞬間。今度は逆に手が抜けなくなった。

一瞬で土が凍らされたのだ。それも、己の腕力以上の範囲を……。

土ごと持ち上げることも出来ない。空でも地面でも、行動する余裕がなくなった。

あと出来る事は尻尾であの『死』を直接狙うことくらいだ。


………!?


今度は、体が全く動かない。

原因を探ると恐ろしく薄い結界が体の隅々を縛っている事に気付いた。隣り合う鱗の可動域が結界で埋められているのだ。それも広大な範囲で……。


自由がまるで利かなくなった巨龍に向けて、『死』が遂に動き始めた。

その隣には、まるで意識を向けていなかった人間がいた。

法衣を着込んだ元聖女イリーナである。

周囲の気配と同化したような、その人間の持つ魔力の波動は、我が身を縛る結界の魔力と同一である。

アレのせいで!!


巨龍は激しく怒り狂うが、体はまるで動かない。

『死』が次第に迫り来る。



遂に両目が見えなくなった。


おそらくイングバルドの剣によるものだが、巨龍は痛みなどよりも恐怖が勝る。


死ぬ。殺される。

生まれながらに世界における強者であった己が殺される。奴らの糧にされる。

信じられない程の恐怖に晒され、己の情けない慟哭が、失われた都市に……否、自らによって失わせた都市に木霊する。


聞く余裕などなかったが、やけに人間の言葉が耳に入ってきた。


「幾百年、数多の都市を滅ぼし、人々に絶望を与えてきた邪竜よ! 我が名は勇者アロンド。貴様を滅ぼす者の名だ!! この名を魂に刻み、冥府へと堕ちるが良い!!」


見えない目に、一条の光が走り。

巨龍は己の死を悟った。


ーーーー


「イングバルド、相変わらず見事な盾だ。お前がいなければ総崩れだっただろう。アンナ、斧捌きに磨きがかかっているな。嫁の貰い手は大丈夫か? カイト、お前またエグい魔法を開発しやがったな。このオタク野郎。それから、イリーナ。好きだ!」


「あら、私も好きですよ。」


「はん、余計なお世話だっての。アタシはアタシより強い男じゃないとお断りだよ。」


「ふむ。どんどん条件が厳しくなっていくな。……カイトも独り身だろう。アンナの事はどう思う。」


「大事な仲間。それ以上はない。」


「カイトは強いけどさ。アタシとしてもそんなんじゃないさ。」


「そもそも、カイトは小さい子にしか……ん? どうした、カイト?」


「……寄贈品が壊れた。学園の。」


「……まさか、あの像をか!?」


「学園組の事情は分かんないけど、カイトは何を寄贈したのさ。」


「ドラゴンの像。」


「あら、案外普通なのね。」


「いや、イリーナ。その像な、全身アダマンタイト製なんだ。全長3メートルくらいのな。」


「え?」


「……バッカじゃないの!? 貴重な資源じゃないか!!」


「ああ、馬鹿だった。しかも、芸術的なまでに精巧な作りだから、取り壊して再利用する事を先生方がみんな反対してな。結局、貴重な資源とはいえ形はそのまんまだ。」


「それで、何で壊れたのさ。そんなもの、どうやったって壊れるわけないじゃないか。」


「俺なら切れる。」


「壊せる。」


「知ってるってば。……はぁ、他に壊せそうな実力者が学園いるのかって話。」


「……心当たりある。」


「「誰?」」




◆◆◆◆



学園長室。

決して煌びやかとは言えないが、所々に置いてある調度品が部屋自体に荘厳な雰囲気を醸し出している。

そんな空間に、一匹の狐と一人の老婆が対面していた。

狐の方はソファーの上でおすわり状態。九つある尻尾は揃って下に項垂れて、老婆の様子を伺うようにチラチラと視線を彷徨わせている。

対してこの部屋の主人である老婆は流石に堂々とした様子で、片眼鏡を左目に装着しつつ、テーブルの上に置かれた物を難しそうな顔で見つめている。

値が張りそうな木製のテーブルの上に、無造作に転がる青黒い金属屑の山から欠片を無造作に一つ手にとって、彼女はクルクル回してそれを観察していた。


「随分と派手にやってくれたねぇ。あーあー、なんてこったい、粉砕されたのみならず、純度の高いアダマンタイトが内側からこんなにひしゃげて……。全く、どうしたらこんな事になるってんだい。あたしゃ狐につままれているような気分だよ。」


…………。

俺は何も言えずに目を逸らす。

ごめんなさい。分からないんです。

というか、それアダマンタイトだったんだ。

……いや、アダマンタイトって言えば、ファンタジーもので定番の最も頑丈な希少金属じゃないか!?


アロンドの持つ聖剣の芯にも使われてるって聞いてるし、そもそもなんでそんな金属が的用のドラゴンの像に加工されてたんだよ。


「ふん。まぁ安心をし、とって食いやしないよ。……そういや、狐ってのは食ったら美味いのかねぇ。」


ビクッ!

く、食われる。

この婆さんならやりかねない。だって雰囲気凄く魔女っぽいし……。


「ククク、反省はしてるようだし、そいつは勘弁してやるよ。まあ、そもそもあれは別にお前さんが悪いわけじゃない。ありゃ、うちのがお前さんの実力も測れず、普通に試験をおっぱじめたのが要因だよ。魔法は苦手だって逃げてたツケが回ってきたんだねぇ。いい勉強になったろうさ。ヒヒヒ。」


そ、そう? じゃあ、そろそろアレンの元に帰りたいなぁ、なんて……。アレンも心配しているだろうし、今はエドワードと二人きりで気まずいだろうし……。

……なんか本気で心配になってきた。

アレン。エドワードに虐められてないかな。


「帰りたいのかい? ご主人の元へ。はん、随分と忠義を誓ってるようだね。その力がありゃ好き放題できるってのに物好きなもんさね。……あたしがお前さんをここに残した理由は察しがついてるんじゃないかい?」


ここに残した理由???


「ふん。馬鹿のふりはお得意なようだね。いいから正体を見せな。あんたが人化のスキルを持ってるのは分かってるんだよ。」


!?


「あたしは相手の持つスキルを覗き見るスキルを持っている。隠そうたってそうはいかないよ。妖狐の人化は心の内を表す。ふん、見せたくないのはまともな反応だね。さぞ凶悪な顔をしているんだろう。」


なんか心外な事を言われてる気がするけど、待って!

スキルを覗き見るスキルだって!?

何それ凄く欲しい。


「……何にせよ、このままじゃ碌に話ができん。お前さんが人化して、言葉で話をするのが手っ取り早いだろう。それまで主人の元に返すわけにはいかないね。」


あ。なんだ、人化して話をすれば帰してくれるのか。

こっちもいろいろ聞きたいから、早速人化スキル起動っと。


「ほう、素直じゃないかい。………………はぁ?」


発光していた俺の体が大きくなり、人の手足が出来上がっているのを確認していると、婆さんが素っ頓狂な声を上げる。

なんだよ。人化しろって言ったの婆さんじゃないか。


「けふ。ばっちゃ、はなそ。あれんとこ、かえる!」


一つ咳をして、知ってる単語を摘み上げて発音するが、やっぱりネイティブにはいかない。イントネーションが難しい。


「そ、それがお前さんの正体なのかい? な、なんとも魂消たまげた。本当に子供の妖狐など、聞いた事もない。お前さん、歳はいくつなのだ。」


子供の妖狐。

そうか。婆さんが何に驚いているのかようやく分かってきた。

前の世界での歴史上の話やゲームの設定ではあるが、妖狐ってのは本来、普通の狐が長生きして妖怪になったものを言う。少なくとも100歳以上の狐が妖狐となるわけで、生まれながらの妖狐というものは鼻っから存在しないのだ。

この世界でもそれは同様といった様子だ。


だからこそ、俺はイレギュラーなのだろう。

俺はゲームの転生システムで、九尾の狐になった。

それだけで、生まれながらの妖狐の誕生だ。

他にも1000やら3000歳級の天狐や空狐になることもできたのだから、とんでもなくおかしな話である。


この世界で妖狐の悪行の物語はよく聞くが、実のところ実際に妖狐を見たものは少ないらしい。

それだけ、普通の狐達は生存競争が激しいのかもしれない。


彼らは普通に年齢を重ねて妖狐になる礎を築いている。そんな彼らにして見れば、俺ほど矛盾して卑怯な存在はないだろう。

年齢チートだ。チーターだ。狐だけど。



それにしても俺の年齢か。

それは、俺という意識の年齢か、それとも肉体の年齢か。

妖狐としての年齢を聞いているから、まあ、肉体の方だろうな。

俺の歳は考えなくても分かる。アレンと同じだ。


「じゅぅ」


「……ふむ、どうやら嘘はついておらんようだ。はぁ、しかし面白い。お前さんが悪しき妖狐でないのはあたしが証書を出そう。これで一応国の煩い連中は引っ込むだろうさ。」


おお! なんか良く分からないが、悪い妖狐だっていう誤解は解けたらしい。

この世界じゃ妖狐ってのはどうにも悪い印象が先立ってるようなので、それを有力者に証明して貰うのは非常に助かる。


「ありぁとぅ。」


「……どうにも調子が狂うね。はぁ。アロンドめ、自分の息子と一緒にとんでもない子を寄越したもんさ。いや、このやり方は聖女様の方かねぇ。」


「?」


婆さーー学園長は、年齢を感じさせず軽やかにソファーから立ち上がると、コート掛けに掛けてあった一着のガウンを取り、俺に羽織わせる。そういや、俺全裸だったわ。

ぅ……。気遣いは有難いけど、香水臭いガウンだ。

鼻が曲がりそう。


「若い子の裸体は、あたしみたいな婆婆には目の毒だよ。食っちまいたくなるからね。」


この婆さん。ホントに人食いの魔女なんじゃねぇか?目が割と本気だ。

なんか人魚の生き血を狙う主犯の女の顔を思い出したよ。

よく出来たゲームだったんだな、IFって。


「その服は持って行って構わないよ。人化した時に裸じゃ不便だろう?」


「いりゃなぃ。」


だって酷く臭いもの。

一応、学園長の名誉の為に言うけれど、今の俺の嗅覚は狐の時と変わらないので、増幅された臭いが強烈に感じるだけだ。

人として臭いを嗅いだなら、そこまで香水臭くは無いんじゃないかな。

人として嗅いだこと無いから分からんけど。


あと、基本的に人化を使う事もないし、ガウンを持って行く手段もないのだ。

口で咥えて歩き回る訳にはいかないし、何よりこんな臭いものを口に咥えるなんて耐えられない。くしゃみが止まらなくなりそうだ。

……くしゅん。


「ふん。空間収納のスキルでも持ってるかと思ってカマをかけたけど、本当に持ってないようだねぇ。」


空間収納!?

なんてこった。そんな素敵スキルがこの世界にあるって事なのか。

うわぁ、空間収納のスキル覚えたい。『ピローン』


…………。

………………。

……………………。


いや、ご都合が過ぎるだろ!!!


俺、結構スキル頑張って覚えようと、あれこれ念じてたりしてるんだぜ。

妖狐的によくありそうな、幻術だとか分身だとか。


それらは全く反応ないのに、空間収納スキルはこんな簡単に手に入るとか……。

まるで条件がわからん。

てか空間収納のスキルとか妖狐全く関係ないじゃん。

なぜ覚えられたし!?


あと、今のでSPスキルポイントの上限をほとんど使い切った感じがする。

レベルアップと本編シナリオ、サイドシナリオのクリアによって入手した膨大なSPはまだまだ余っているが、上限が詰まったのは大問題だ。

これでは欲しいと思ったスキルが入手可能か否かを判別する事が出来ないのだ。

次レベルが上がるまで、この四つのスキルでなんとかしないといけないわけだ。


まぁ、ゴミスキルを取った訳じゃないから、よしと考えよう。うん。


「……お前さん。まさかたった今、空間収納のスキルを取得したのかい!?」


婆さんは驚愕に満ちた顔でこちらを見つめていた。


そういやこの人、スキルを覗き見る事が出来るんだったか。


「あたしのスキルはね。格上のスキルを覗くことは出来ないんだよ。映し出されるのは格下ばかりだ。お前さんの人化スキルは靄が掛かっているが、まだ見える。そして、今はっきりと空間収納スキルが現れた。こんなにはっきりと見えるスキルは初めてだよ。産まれたばかりのスキルはこんなに美しいものなんだねぇ。」


惚けたように俺を見つめる学園長。


取り敢えずそれを放置して、俺はスキルの検証を始める事にする。

スキルを発動すると、右側に不思議な感覚を抱いた。

見た感じ、学園長室の調度品が置いてある壁際があるだけに見える。だがその視線の間、手の届く範囲に何かあるようなそんな感じを覚えた。


ガウンを脱いでそれがありそうな空間に右手を伸ばして行くと、空間が揺れた。

そして、そのまま右手が空間の揺らぎの中に入っていく。

手の先は暑くも冷たくもない。

それなりに物が入りそうなスペースがあるように感じられる。イメージとしては、大きめの旅行用キャリーバッグくらいの広さだ。


顔を入れてみようとするが、何かに当たるわけでもなく素通りした。左手も同様だ。

どうやら、空間に入れる体は右手しか許可されていないらしい。

なお、ガウンは収納できた。


でも、いらないのですぐに取り出す。


……空間収納、これは良いものだ!!


「お前さんも大概マイペースだねぇ。さっきやった事がどれだけ凄いことか、全く理解していないんだろうねえ。」


俺が感動に打ち震えていると、学園長が呆れたような顔をしていた。正気はとうに取り戻していたようだ。


「スキルとは天の気まぐれ。神々がその者のを測り、望む者に与える叡智だよ。あたしゃ神の御業をこの目で見ちまったのさ。」


どうやら学園長も身を震わせるような感動を覚えているらしい。


「その服は持っておかえり。あと、良いものを見せてもらったお礼だ。お前さんの体に合う可愛い服を見繕ってやるよ。十日後にまたここへ来な。」


「いや、にゃい!」


ガウンは当然いらないが。

か、可愛い服を着るなんて冗談じゃない!

人化の姿は隠し続けるつもりだけど、万が一、アレンにそんな破廉恥な姿を見られたらどうするんだ!?


まだアレンには人化した全裸の姿も見られてないのに!!


人化した姿をアレンに見せる事があっても、服を着た俺の姿なんて見せたくはない!!

恥ずかしくて、心苦しくて軽く死ねる……。


初めては全裸がいい!!



そうした万感の思いも語彙にはならなかった。

最初は厳つくて恐ろしかった学園長は見る影もなく朗らかな笑顔。口が悪いだけで、飴ちゃんをくれる大阪のおばちゃんみたいになってしまった。


押しが強くてどうしようもなかった。

結局、あのガウンは空間収納スペースに入ったままである。


更には十日後来なかった場合は迎えに来るとまで言う始末。俺の拒絶が足らなかったのもあるが、俺の主張が届くことはなかった。トボトボと学園長室の扉を出ると、出がけに後ろから声が掛かった。


「お金に困ったらあたしのとこに来な。稼げる仕事を用意してやるよ。」



この時はその言葉の意味が分からなかった。



◆◆◆◆



「モンザくん。今回は災難だったね。」


「きょ、教頭。この度は本当に申し訳ありませんでした。教官の身でありながら、生徒の使い魔の力を測りかねました。如何様にも、処分を……。」


「君はまだ若い。君の成長は非常に大きな楽しみでもあるんだよ。今回の件は私と学園長で内々に収めるつもりです。職を辞す必要はありません。」


「そう、ですか……。ありがとうございます。今後はこのような事のないよう、精進して参ります。」


「期待していますよ。……ただ、実は私個人としては君に良くやったと言いたい気持ちが強いのだよ。」


「は? ……と言いますと?」


「取り込む事が恐らく困難だろう勇者の息子と、あの天才くんに楔を打ち込めた。これは学園にとって非常に良い事です。彼らは非常に優秀ですからね。せっかく育てた美しい鳥を、自然に放つなんて勿体無いではありませんか。」


「はぁ……。仰りたい事は分かりますが。」


「おっと、失礼、渡し忘れていました。今回の不祥事については不問ですが、半壊した教練場の修理費は一部負担して貰うつもりですよ。これはその請求書です。」


「勿論、それは分かっています。……え?」


「どうしましたか?」


「金額が、少なくありませんか? 試算ではこの三倍はありそうなものですが……。」


「おや、計算が早いですね。ええ。だから等分・・したんですよ。貴女はその額で間違い無いですよ。」


「等分? ……まさか!?」


「エドワードくんが、妖狐のやる気をけしかけたのは寮長さんから聞いています。当日、その場にいたので折半に含めてもおかしくは無いでしょう?」


「…………。」


「いやぁ、本当に良い仕事をしてくれました。我が学園はこれで安心ですよ。そうだ、ビスケットいります?」

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