隠れた才能と旅行
「――朱吏、食べたい。」
「駄目だ!!!!」
「なんで?魔力使っちゃったの?」
「昨日朱吏の周りで不穏な気配を感じたから眠ってもらった。」
「ええ??」
「…。」
「だから、朱吏喰っていいか?」
「…駄目だっ!!」
***
朱吏はいつもより騒がしい朝を迎え、お姉様と魔術師団長室でお茶を飲んでいる。
お姉様は妖精との念話が興味深いらしい。
ゆっくり詳しく聞きたい!と言ってカトリーヌのもとに訪れた。
「へえ、森でダビドっていう妖精に会ったのね~!でも何故あの森に飛んじゃったのかしら…?」
「―――良く分からないデス…。」
(ヤキモチ焼いて消えたくなったなんて言えない…!!)
ダビドとヒューは仲良く(?)喧嘩してたので放置して出かけた。
「やっぱりシュリ、魔法習ったら?マリアお姉様がこちらに帰ってきてる事だし!ね?」
コンコン
「あ、はい!どうぞ。」
「失礼します。…あれ?シュリさん?あ!!マクシミリアンのお姉様…!!!!!」
「ん?あ、フィリップか!!元気だった?あらあら、逞しくなっちゃって~!」
「お久しぶりです!丁度良かった!貴方が居れば心強い!!これを見て下さい!」
それは軍事国家、ハインリヒ帝国の書状とエドゥアール皇国の密告状だった。
簡潔にすると内容はこうだ。
エドゥアール皇国の魔術師が兵器工場のスパイ行為をしたので捕えられているそうだ。
解放を望むならそれなりの誠意を見せろ、という事だ。
ハインリヒ帝国は兵器は飛躍的に発展しているが魔法は盛んではない。
なので、魔術師育成のための禁書を閲覧する権利を求めている。
しかしエドゥアール皇国の魔術師の訴えは違う。
脅され続けて危険が迫ったので急いで知らせた感が否めない。
スパイを否定しているが、捨て置いてくれと書いてある。
「…ハインリヒ帝国って大丈夫?こんな訴え通るわけないじゃん。魔術師さんも諦めるの早すぎ!」
「え?シュリさん読めるの?」
「え?」
(読めちゃまずいの??みんな驚いてるけど、私が一番びっくりしてるわ!!!)
「ちょっと!古代文字よ?私でさえぎりぎりなのに…シュリちゃん何者??」
「シュリ!!じゃあ、こっちとこっちも読める??」
それから小一時間ほど、代わる代わる本を渡され読まされました。
魔術師さんの手紙は内容が分からないようにわざわざ古代文字で書いてあったみたい。
結局分かった事はチート万歳って事です。
全ての本が読めそうです。
「…シュリ、マックスには絶対反対されちゃうけど…私の代わりに行ってくれないかしら?」
「ちょっと!!そんな事駄目よ!!普通の女なのよ?魔法だってまともに使えないし!!!」
「ですよね!私が行ったって何も出来る気がしない!!!」
「でも確実に信用出来て古代文字まで使えて黒髪で油断を誘える女なんてシュリしか居ないっ!!」
「確かに…。それに色々なコネも使えますね…シュリさんに協力的な権力者と高位妖精、ばっちりかも。」
「…シュリちゃん、ダビド呼べる?」
「あ、はい。――――ダビド~、ご飯だよ~!!」
「ご飯?いいの?食って。」
残念な目で見られたけどすぐに本題に入った。
どの程度まで私を守れるのか、念話はどのくらい遠くても聞こえるのか、どんな魔法が使えるのか、など。
ダビドも役目がわかったのか、真剣に打ち合わせをしている。
もう決定事項なのか?それを今聞く勇気が出ない。
いけばいいんでしょ。まだ何するか聞いてないけど、あんなに反対してたお姉様がやる気になってる。
って事は安全面に問題はないとみていいの?どうなの?気になるけど怖くて聞けない!!
「シュリ、あっちの国行ったら小さくなって姿消して付いて行くから話しかけんなよ?」
「うん!頑張る!」
「で、資金も貰ったし金は仕方ない!オレが管理する。シュリはまだ使い方分からないだろ?」
「うう、宜しくお願いします。」
「とりあえず、目の色変える。アイツの色でいいか。あと、すぐ出発だ!アイツにばれる前に。」
「え?え?え…?」
「ほら、行くぞ!」
こうして唐突に旅が始まった。
ちょっと待って、まだ何するか聞いてないよ!!!!
***
「寒!」
―さっきからそればっかだな―
(だって寒いもんは寒い!…今何処に向かってるの?)
―ハインリヒ帝国の首都、アンリだ。ここでまだ潜んでる魔術師に会って状況を確認する。―
(了解。そのあとは?)
―レオナルドゥスんとこの隠密と合流、作戦会議、ハインリヒ帝国の使者と会合ってとこか。―
(いっぱいある…、とりあえず頑張る。)
初日の予定だけで危険そうだが一向に仕事内容が分からない。
魔術師に聞けってこと?それともダビドに?
しかも隠密って???
先行きが不安で仕方ありません…。




