アロマ効果と告白
彼女はやっぱり目を赤くしていた。
また泣かせてしまった。
まだ手が震えてる。目の前で朱吏が居なくなった時と同じ。
俺はどうしたんだ?
軍事国家の視察だってこんな事にはならなかった。
何度も命の危機があったがそれ以上に緊張している。
目線も上げられない、喉が詰まる、胸が苦しい。
そういえば彼女も寂しくて苦しいと言っていた。
俺と同じ気持ちなんだろうか…
(ヒュー、さっきと同じ格好…)
「ねぇ、お風呂行ってきたら…?」
まだ目を合わしてくれない。でも朱吏はお風呂で少しすっきりしたのでめげなかった。
膝を折り屈んでヒューの目線を合わせるように手を取った。
こんな暑い国に居るのに関わらず、ヒューの指先は冷え切っていて思わず強めに握る。
するとぼーっとしていたヒューの銀の目が焦点を合わせた。
―!!!!
な、なに?なんで?
彼の目から一粒だけ落ちた。
「ヒュー、どうしたの?」
思わず胸に抱きとめ、頭を撫でる。
優しくそっと壊れ物を扱うように。
徐々に彼の手が抱きしめ返してきた。
やっとヒューの腕に力が入る。
彼がしてくれたようにふんわりと涙を吸う。
まだ瞳が揺れていて心ここにあらず、という感じ。
ヒュー、と何度も呼びながら彫刻のような顔にキスを降らす。
どれだけそうしてただろうか。
ヒューの少し掠れた声が聞こえる。
「―朱吏。」
ぎゅっっと力がこもる。
「…なに?」
ヒューの心臓、すごく速い…。
何でだろう。彼の鼓動を聞くと心が和いでくる。
よく考えたら抱きしめられて落ち着くなんて、女として間違ってる気が…
でもヒュー以外は落ち着かないと思うし、やっぱり毒されてない?
それともミントの香りでアロマ効果が発揮されてるとか?
「傍に、俺の傍に…」
「―え?」
傍に?どういう意味…
「朱吏、好きだ。」
「――――え?あれ?」
好きって言った?
ちょっと、あれれ?
それって、あの、あれだよね?
待って、落ち着け。
すーはー、すーはー…
良く考えたらアロマ効果でも毒されてるんでもなくて…私もヒューを好きなんじゃ?
きゃああああぁぁぁぁぁーー
やだ!ピチピチの学生時代じゃあるまいし!
なに青春やっちゃってるのーーーー!
ちょっと観光して帰るつもりだったじゃない!
そうそう、あり得ない!やめよう!違う!そうじゃない!
顔を赤くし口をパクパクさせ動揺してると、
「俺の気持ち、知っててくれればいい。―答えはいいから。」
お話は終わりみたいです。
彼はお風呂に向かって行きました。




