妖精と残された人
ー大丈夫か?…オーイ。死んでるのか~?ー
「死んでないわっ!」
(え?誰も居ないけど、私、今、誰と喋った?)
「…ここどこ?あれ、既視感…?」
私の部屋じゃない。
ヒューもいないし、どうしちゃったの?
辛うじてずっと握りしめていた、荷造り途中のバッグがあるだけ。
周りを見渡しても木が生い茂ってるのみ。ジャングルって所まで行かないけど、森だわな。
(まさか、またトリップとか言わないよね?ホントやめてよ!!)
ヤダ、どうしよう!
こんなんだったらヒューに言いたい事ちゃんと言っておけばよかった!
私が消えちゃいたいなんて思ったから?
ど、どうしよう。
ーはい、そこ。無視するな?あんたどうやってここに来た?ー
(え!!また声!どこ?)
ーあんたの右上の木の上。アホなの?ー
(こいつ…!!)
振り返った瞬間、顎が外れるかと思った。
声の主は可愛らしい(?)多分妖精さんだった。恐らく多分。
ー多分じゃねーよ!!ホント失礼なやつだな!!!!ー
あれ?心の声も聞こえちゃうらしい。
***
「朱吏!!!!」
何て事だ!今のは転移魔法。朱吏自身が使ったように見えた。
魔法なんか使えないはずなのに、意志の力が作用したようだ。
追い詰めたのは俺。
あんなに絶対手放さないって、傍に居るって…思っていたのに。
この世界は、異世界から来た者は良く来るし帰れるが、元々こちらに居た者は行く事は出来ない。
だから、もし今、朱吏が元の世界に帰ってしまっていたら、ヒューは追いかけることは絶対出来ないのだ。
慌てて魔術師団長のカトリーヌのところへ向かう。
親友のステファノは放置された。
***
「本当に妖精?」
この質問は何度目か、しつこく聞かれている妖精、ダビドはうんざりしている。
ーまたか、面倒な奴。それとさっきから気付いてると思うけど、声に出さなくても分かるから。ー
「ごめんごめん、私の生まれた所はこんなの居た事なくて!」
ーこんなの…あんたホント失礼。ま、久々の人間だし大目に見てやるよ。ー
「で、ここどこ?エドゥアール皇国じゃないよね?」
ーここはアグネス諸国のパウルスの森、通称は妖精の住まう森、だよ。ー
初めて見た妖精は小さかった。
真夏の青空ような色の髪はしっとりとしていて、
蔦で出来た髪飾りをしてるウルフヘアーだ。
瞳の色は幻想的で新緑色をしている。角度が違うと湖のような色にもなる。
サイズは手乗り。服装はギリシャ神話に出てきそうな感じだ。
肌は小麦色に焼けていて健康的、フェリップ位衝撃的なTHE・ISEKAI!!!
殆どの人間とは会話が出来ないようで、私みたいなケースは稀。
これはやっぱり異世界トリップでおまけのチートというやつか。
しかもこの森には入れなくなっているはずらしい。
どうなってるんだ?
しかし、来た事もないアグネス諸国に突然来ちゃった意味が良く分からない。




