自惚れと意気地なし
バタンっ
「まずい事になったよ~!」
「朱吏の事か?というか一緒に居たのか!」
早速、報告したのだが、
「ふふ。相変わらず…くくく。」
「…笑ってる場合?」
「もう決めたんだ。問題ない、手放すわけないだろ。」
(よかった、まだこちらに居るなら間に合うな。)
「…呆れた。心配したのに損した~。」
「…ステファノ、有難う。いつも感謝してる。」
「何!気持ち悪!鳥肌立った!!」
「で、少し代理でいてくれないか?直ぐ済む。」
「あ~、もう!わかったよ。僕だって幸せになって欲しいからね!!!早く戻って来てよ!僕何もできないから!!」
足取りは軽やかだ、丸め込むのは仕事で慣れてる。
もう引いてなんかいられるか!
こんな事なら最初から手に入れるべきだった。
遠慮なんて、俺らしくない。
朱吏、俺を受け止めてくれるか?
***
(行動早いな…もう出て行く気か?)
すでに荷造りを始めている朱吏の背中が見える。
我慢できなくて、後ろから抱きすくめた。
「!!」
驚かせてしまったようだ。
「…朱吏。このまま聞いてくれ。」
イヤ。と、か細い声で完全に背を向ける。
心臓が飛び出そう!!
距離を置くって決めた後にこんな…!
耳元にかかる吐息が熱い、久々に抱きしめられた事もそうだけど、何!
ちょっと…ホント何?
さっきはあんなに寂しかったり苦しかったり実は少しイライラもしてた。
なのに何で?
やばい!!嬉しいんですけど!!何でーーー!!
それで何で涙出るのよっ!!!最近涙腺馬鹿になってる!
あああああ、違う違う、あくまで汗だ!!どこまでも汗!!!
「…朱吏、泣くな。」
「うううう~。な、いて、ない…です。」
(もうヤダ、止まらない…)
「朱吏、朱吏こちらを見て。話を聞いて?」
「ヤ。ヤダ、何も、聞きた…くない。」
「では、聞かないでいいから…何処にも行くな。」
なんで?なんでそんな事言えるの?
ヒューは何考えてるの?
恋人いるくせに…
どうせ真面目な人だから、帰るまで面倒みようとか…そういう、そういう事だよ。
でも、無神経にも程がある。
まただ、苦しい。
痛い、痛いよ。
もう嫌だ、嫌になっちゃった。
何処かに…消えちゃいたい。
突然、周囲に光が零れ始めた…
(え?何?)
虹色の霧の中に朱吏は消えた…
朱吏を抱きしめていたヒューを残して。




