馬乗りと誤解
(また嫌われるような事したのかも…)
最近彼女は蚊帳の外だ。
全然飲みに誘ってくれない…皆ばっかりずるい。
自分の酒癖の悪さを棚に上げてぼやいた。
まだそれだけだったら良かったんだ。
朱吏が初給料を貰ってから少し経った頃、衝撃的な事は起きた。
***
(あれ?珍しい…ヒューが起きてこない。)
時間にきっちりな彼が起きてこないなんて風邪でも引いたのかな?
心配だけど近頃はヒューの寝室に入ってない。
変な汗かいてきた…緊張する。
だ、大丈夫。別に疾しい事なんてないんだから!
そうよ!起こさないと遅刻しちゃうし!私の上司だし!!
混乱しまくっているが、歩みはヒューの部屋に向かってる。
(ちょっと…少し扉が開いてるんだけど、不自然すぎる。)
でも結局起こさないといけないので、腹を決め、身体を滑り込ませた。
キィィ
「え!!!!!」
な…何?
えっと誰?
何してるの…?
「ご、めんなさい!!!」
電光石火の勢いで、敵前逃亡を果たした。
な、な、な……!!!
情事の真っ最中だがなんだか知らないけど、なんなのーーーーー!!!!
訳わかんない!涙出て来たーーー!!!
意味わからない!
***
(朱吏!?)
「何て事を!!…どうしてくれる…」
地を這うような低い声で凄んだ。
完全に切れている。
誤解された。今までの押したら引く作戦がまるで無駄だ。
女性を払いのけるがなかなか退かない。
「いい加減にしろ!朱吏が行ってしまう!!!」
「何それ?久々に会いに来た私よりも大事なの???」
「当たり前だ!!!」
***
足早に向かっている先は勤務先。もう習慣になってしまって無意識だ。
後で鉢合わせする場所だけど、最早それどころではない。
もうすでにそこまで考えが及ばないくらい混乱の極みである。
恋人いないって言ってたのに出来たの?いつ?全然知らなかった。
この所蚊帳の外だったからその間かな…
言ってくれてもいいのに、もう家族みたいだったからすごく寂しいけど大丈夫。
私は平気、ちゃんと自分で出来る、だから出ていける。
ヒューには笑ってて欲しいから、邪魔なんてしないよ。
ボフっ
「あだっ!鼻が潰れた~!」
髪を振り乱し、しゃにむに走っていたので全然前を見てなかった。
突っ込んだのは固い壁ではなく、
「シュリちゃん、今からデートしようか☆」
***
初めてさぼっちゃた…
街の公園に2人で来ていた。
いつもの噴水側のベンチではなく、奥まった木陰の下で屋台のチーズフォカッチャもどきとミントティーっぽいのを広げている。
鼻水出てるよ。と、シルクっぽい凄く綺麗なハンカチを渡された。
せっかくだから鼻をかんだ。ついでに目から出た汗も拭いてみた。
少し落ち着いてきたらステファノが切り出した。
「何かあった?」
「…う、ん。」
「どうしたの?ヒューにいじめられた?」
「…朝、起きてこないから起こしに行ったんだけど……、女の人と多分シテた。」
「…はぁ???」
「びっくりしちゃって、よく見てないけど…ヒューの上に女の人が乗ってたから!…その…。」
「ふふふふふ。」
「…なんで笑うんですか!すっごく苦しかったのに!!」
「シュリちゃんのヒューは絶対そんなこと出来ないよ。それにしても…へぇ、苦しかったの?」
あれ、私、苦しかったんだ。びっくりして何も考えられなかったけど。
寂しくて苦しくて泣いちゃったんだった。




