親友と恋煩い
(もうこんな時間か…)
夜五ツ(夜8時)になっていた。
だけど足取りは重い。
今は珍しく、あの美しい長髪を高い位置で括ってる。
ヒューは悩み途方に暮れる時、髪を括る癖がある。
仲の良い人達からみたら、悩んでいるのがバレるのだが
全然気づいていない。
「あ、あの!!!マクシミリアン様!!」
「?」
思い耽っていたら門番に声をかけられた。
「ス、ステファノ様からの伝言ですっ!朱吏様は青い小鳥亭に行ってるそうです!」
「…了承した。」
ステファノと酒場へ…?
凄く気になる、気になっているが、そこに思い巡らす相手がいる…
一人葛藤していると、
「あ、あの、フィリップ様も追いかけて行かれました!!」
何?
フィリップまで…!
「あ、あと、手紙も預かっています!」
差し出された手紙を引ったくり、礼も言ってない。
すでに青い小鳥亭に足を向けて走り出した。
門番はすっかりカトリーヌの事を言い忘れた。
***
カランカラン
力が入りすぎた。
思いっきり扉を開けてしまって、注目される。
ハァハァと肩で息をし、朱吏の姿を大股で探し回る。
(居た!)
今日は珍しく2階席に居たらしい。
もうすでに出来上がっている…主に朱吏が。
「あ、ヒュー!!ここだよぉ!!ひゃっほーぅ!」
「ふふふふふふふふ。」
あのステファノも酔ってる?非常に稀だ。
「ちょっとマックス!早く来なさいよ!!シュリはいつもこうなの!?」
「も、もう飲めないっす…帰っていいですか?」
「駄目に決まってるでしょ!!!」
カトリーヌは辛うじてマシなようだ。
素早く酒を注文し、席に着く。
なんでこんな事になってるんだ。
とにかく今日は早く帰ろう。
それでこれからはちゃんと別々の部屋で…
俺が押さえなくてどうする。
もう泣くような思いはさせたくない。
***
邸宅に着き、朱吏をそっと寝かせる。
決めた事は守る男だ。
キスは我慢したらしい。
そういえば…と、手紙の存在を思い出し、取り出した。
思わず苦笑が漏れる。
どれだけ焦っていたのだ。握りつぶした後で分かってしまう。
カサリ
マックス?僕は怒ってるよ?
わかってるよね。
こちらに飛ばされて来て、知り合いもそんなに居ない。
それで嫌がらせなんて…。
君は好きな人を守りたいんでしょ?
よく考えて。
親友のステファノより
(ああ、俺は朱吏が好きなのか…)
今更だけど心にストンと落ちた。
パズルのピースがカチリとはまった感覚だ。
触れたかったり傍に居て欲しかったのも、
一緒に笑いあえるのもみんなみんな…
自分の気持ちは分かった。




