無自覚と流される女
「…朱吏、綺麗だ。似合ってる。」
「本当かなぁ…?やっぱり男装の方がしっくりくる…。」
やっぱり心持が違いすぎる。
誰でもいいから朱吏に女子力を分けて頂きたい。
二人は途轍もなく目立っていた。
宰相様だけでも目立つのだが、あの宰相様が女連れだ。
しかも黒髪で黒目というのはこの世界にはいない。
容姿はこちらの世界の人に比べればのっぺりとしているが、愛らしい顔つきである。
その二人が頬笑み合い食料を買っていく様は
チャーミー○リーンのCMのようだ。新婚さんにしか見えない。
あの冷徹で氷の貴公子が笑顔で女と手を繋いでいる…。
槍でも降るんじゃないかと、商店街はパニックだ。
怖いもの見たさで人が大いに集まり大混雑になった。
二人は自分達の世界なので一向に気づく気配がない。
商店街の売り上げが、いつもの倍以上跳ね上がったようだ。
「制服が出来るまでは普段着でいいの?」
「ああ。だが…」
「ん?」
「男の格好にしてほしい。制服も男性の物を注文した。」
「いいけど…。ああ、女の嫉妬は怖いもんね!!!全然オッケー!!」
「違うんだが…まあいいか。」
悪い虫除けとは言えない。まだ親気取りだ。
***
買い物も終わり、今日は朱吏が腕を振るった。
魚のムニエルとポトフ、野菜のピクルス等…若干何か分からない食材もある。
何故この献立かというと、棚にワインっぽいのがあるのを
目敏く知っていたからだ。
ふふふ…
(今日はワイン開けるぞ!!)
なんだ?久しぶりに気持ち悪い笑いをしている…
ヒューは若干引いていた。
***
もう当たり前になっちゃったなぁ…
また朱吏はヒューの腕の中で目覚めた。
いつもの彫刻みたいな寝顔をじっくりみる。
朱吏は彼の腕を涎で汚していたのに、こちらは月とすっぽん
長い髪は光を浴びて、全てが幻のように美しい。
力強く抱きしめられている朱吏はなかなか抜けられない。
もそもそ動いていると、やや力が弱まった。
ヒューは起きていた。
朝から腕の中の小動物を愛でる。
寝たふりをしてガッツリ堪能していた。
「ヒュー、早く起ーきーてー?」
朱吏は必死だ。もう膀胱が限界を迎えそうだった。
「…おはようのキスは?」
もう彼はどっぷりハマっていた。が、無自覚である。
「え…。」
「してくれないなら、起きない。」
フイっと顔をそむけた。大人げない。
「ええええ。」
(もう、漏れる!!)
覚悟を決めた。
ちゅう
今日の宰相様は頗る機嫌がいい。




