友達と金蔓(かねづる)
「…すまない。今支度をする。」
「すみませんでした!わわ、また転ぶっ!!」
カトリーヌはなかなか来ない朱吏達を、心配して尋ねてくれたそうだ。
彼女が怒るのも無理ないが、今のヒューは機嫌最高潮だ。
何を言っても堪えないだろう。
うきうきとした足取りを隠しもせず、意気揚々と自室に向かった。
残念なことに顔を赤くして口元は緩んでいる。
一方朱吏は躓きながら本当にすまなそうに眉を下げ、
向かいの部屋に入って行った。
(…極端な二人。…でも完全な片思いね。ざまあ。)
カトリーヌは冷静に本質を見抜いた。
が、思っている事は大概である。
漸く準備が整った所で邸宅を後にした。
先頭女二人、後に続くのが宰相様だ。
「…ねえ、シュリさん。」
「はい!」
「こちらの女性事情で困ったら私を訪ねるといいわ。」
(面白い幼馴染も見れるしね…)
本当に失礼である。
「いいんですか?やった!こちらに女性の知り合いいなくて!!!
本当に助かります!!ヒューったら男性物の下着しかくれなくて~あはは!」
「…。」
男性物の下着は流石に引く…
幼馴染を心から残念に思ったカトリーヌでした。
***
団長室で荷物をひとつひとつ説明すると興味津津だ。
携帯もそうだが、一番カトリーヌが興奮してたのは下着だ。
被服専門の方に量産させるらしく、恥ずかしいが使い古しをとられた…。
ヒューは目も顔も反らしていたが耳が真っ赤だった。
バッグもスーツも質がいい、と絶賛だ。
日本万歳!
魔法波動の方は、次元の歪みと私がこちらに来た日時、状況、
全て合致し異世界人と認められることになった。
魔法は凄く綺麗だった。七色にキラキラ光る霧みたいな虹。
それで性別や年齢などのプロフィール的なのが一発で知れた。
意外に魔力はあるらしいので勉強すれば使えるらしい。
暇な時に色々勉強してみようと思う。
今日は朱吏の住民登録の為、保護者揃って仕事は休みだ。
折角の休みなので侍従の制服を発注しに行くことになった。
石畳を歩き、川沿いへ。
水面が光を反射して輝いている。カヌーも通った。
橋を越え、様々な専門店が軒を連ねているところに着いた。
カラン
店に入ると軽やかにベルが鳴った。
「いらっしゃいませ。マクシミリアン様。
お待ちしていました。」
「この人の、朱吏・藤原の服を注文したいんだが…。」
「承りました。シュリ様、どうぞこちらへ。」
服を全てひん剥かれ、恥も何も通り過ぎ、無我の境地だ。
肌の色や髪の色、目の色、骨格まで逐一書きつけられた。
この色とあの色が…と、ぶつぶつ言い、奥に行ってしまった。
(もう服着ていいのかな…)
「シュリ様。」
「はいぃ!!」
(びっくりした!気配なかったんだけど!!)
「マクシミリアン様がこちらを着用して欲しいと。」
「え!!」
それはピンクベージュのワンピースだった。
細かいパールが所々に散りばめられ、同色のサテンのリボンが付いている。
リボンは胸の下で絞ってあってビールっ腹が目立たない!(ここ重要)
30代が着るには少し短いのが全然気にならないくらい素敵な服だった。
素敵な服だけど朱吏は引いた。
普段から男装で髪型は少年なのにこれを着ろと言うのか?
寧ろ日本でもこんなに女の子らしい格好は縁がなかった。
というかちゃんと女だってわかってたのか…。
若干遠い目をしていると…
「こちらもどうぞ。」
「これってヅラ?」
そう。ヅラだ。艶々の黒髪が止められるようになっていて
簡単に着け外しできそうだ。
長さは腰まであって、ヒューと同じくらいだ。
黒髪は魔法加工されていて、ずっとサラ艶なのだそうだ。
高そうだし遠慮しようと思ったが、黒髪は珍しいらしく需要がないらしい。
朱吏が女性と気付いた時からヒューが特注していたそうで、受け取るしかなさそうだ。
(今日の夕飯は奮発しよう!)
そのお金もヒューのだ。




