幕間 ひとでなしたちの雑談
「ね、……せんせ」
自分の背中に抱きついたセイが囁くのを聞いて、京道はその手に手を重ねる。
途端浮ついた気配が大慌てて離れていくのを感じ取った。
そのまま抱きついていたセイが、ぶっと吹き出して背中にしがみついたままくつくつ笑い出した。
「おい、笑うなら俺の背中から離れてやれ」
「ご、ごめんなさい。あまりにも反応が思春期男子すぎて」
「いくら穏便に追い払いたかったからって、相手が思春期男子ってわかっててこんな方法取るなよ」
「だって穏便な手段ってこれくらいしかないもの」
そのまま背中から離れたセイが可笑しそうにクスクス笑っている。
「私でよかったわね。カロン。
これ、椿姫ならもっと凄い方法取られてたわよ」
「ほんとになんで俺だけ男なんだよ。
女三人に男一人ってバランス悪ぃ」
頭が痛い、とこめかみに手を当てた京道、もとい京道カロンはため息を吐いて、
「ていうかいいのか?
あいつら、お前にわざわざ用事ってことは、メリーさんの件だろ」
と聞いた。
「いいのよ。最初から一緒にいたらメリーさんが出てこないわ」
「まあ、それもそうか」
セイの言葉にカロンが納得したように呟く。
「でも、今回の一件、目算以上に厄介みたい。
やっぱりこれ、奴らが一枚噛んでるわよね」
「そうだな。同族としての気配を遮断してるから、近くに来てもわかんねえからな。
知らずに話してた相手が、ってことは充分ありそうだろ」
「向こうが尻尾を出すことはよほどのことがないと期待出来ないから、やっぱりメリーさんから詰めるしかないわね」
セイはそうコメントして、準備室の中央にあった机に腰を下ろす。
「おい、机に座るなよ」
「椿はいつもこうするわよ」
「情操教育に悪いんだよあいつ」
と、なんだか子育てのようなことをぼやいて、カロンは「で、質感は?」と聞いた。
「……やっぱり、単体じゃないわね。
メリーさんかこっくりさんか、どっちかがどっちかを喰ってるわ。
じゃないと、あの規模の力は出せないし、念が強すぎる」
「そこにプラスして奴らの干渉か。手がかかる」
「手間がかかることなんて最初からわかってたでしょ。
愚痴らないの」
「愚痴ってねえよ」
カロンはぞんざいに答えて、スマートフォンを手に持つ。
「俺たちを餌に使えりゃいいが、あれは俺たちのことは露骨に避けてやがるからな」
「自分の手に負えないってわかってるんでしょ。
謙虚でいいじゃない」
「謙虚な怪異は三十人も魂を喰わねえよ」
不意にカロンのスマートフォンが音を鳴らした。
ラインだ。相手は椿と空碧で「今どこ?」と表示されている。
「社会準備室」と打って、画面を閉じるとスマートフォンを机の上に放った。
「奴らの干渉があるから、居場所がわからない。
掴めればすぐ退治出来るんだが」
「それを防ぐためにジャミングかけてるんでしょうね。
まあいいわ。明日、阿古屋村まで行ってくるから」
「阿古屋村?」
「化野くんの従姉妹が消息を絶ったっていう廃村よ」
そう答えたセイに、カロンは途端呆れ顔になる。
「そう言うなら最初からついてってやればいいのに」
「だから最初から私たちがいたら出て来ないでしょ」
セイはおざなりに答えて、「それから確かめたいの」と口にした。
「なにを?」
「化野朔螺」
端的にある人物の名を呼ぶ。
「彼の正体を」




