534、ナーサリーとリリス
到着。やはり我が家はいいねぇ。我が家って割には他人が大勢出入りしまくってるけど。
それより風呂だ風呂。もう真夜中すぎだし、さすがにこの時間なら貸し切りじゃない? イチャイチャしたい気分だしね。よし入ろう。さすがに疲れたもんなぁ。ゆっくり浸かって明日に備えよう。
脱衣所には誰もいない。やはり無人か。
「いやーそれにしても疲れたね。アレクも頑張ってくれたもんね。」
「大したことしてないわよ。むしろ遅くなっちゃって、ごめんねカース?」
「そんなことないって。助かったよ。」
交代を言い出したのは私だしね。アレクにとってもいいトレーニングになったんじゃないかな。
「カースかぁい? こんな時間からひとっ風呂あびてイチャコラってかぁ? 若いモンはいいねぇー?」
おや、この声はナーサリーさんか。まさか一人だけ先客がいたとは。
「ナーサリーさんこそこんな時間に風呂ですか。しかも酒まで持ち込んで。」
おーおー、胸を隠しもしないでいい身分だねぇ。酔ってるのか?
「あぁ、今日は疲れたからねぇ。ついさっきまでバカどもの取り調べに協力させられてたんだからさぁ? このぐらい飲まないとやってらんないねぇ。」
「バカどもって? もしかして追手? 五、六人ほどいた奴ら?」
「あー、たぶんそいつらだろ。私が診たのは三人だがねぇ。まったく代官がさぁーコキ使ってくれちゃってさぁ? 私ぁもう疲れたよ……」
三人……てことは残りはもう死んでるかな。まさか取り逃したってことはないだろ。
「魔力いる?」
ナーサリーさんは魔力吸引が使えるからね。しっかり働いてくれてるみたいだし、喜んで分けてあげるとも。
「おっ、気が利くねぇ。そんじゃありがたくいただくとするよぉ?」
おい……
「何やってんの?」
私は手を差し出してんだから握ればいいのに。なぜか私の腕ごと抱きしめる形じゃないか。腕を胸の谷間で挟んでいるが、私に色仕掛けなど効かないってのに。
「ちっ、あんたら二人して若さがないねぇ? 普通こうしたら男は慌てて手を引き抜いたり焦って妙なことを口走るもんだよぉ? 女だって何の罪もないてめぇの男をぶん殴ったりしてさぁ。それがどうだい?」
「カースほどの男ですから女が群がるのは当然ですわ。だからその程度のお裾分けでしたらいくらでもどうぞ。」
「ちっ、面白くないねぇ。おっと、もう全快までいただいちまったよ。ふぅ、相変わらずおいしい魔力してんねぇ?」
体感では一割も減ってない。
「それで、取り調べはどうだったの?」
「あー? 中身なんて知らないねぇ。私ぁ延々と治してただけなんだからさぁ。ったく拷問の片棒なんて嫌んなるねぇ。」
あー……なるほど。てっきり生き残った三人から情報を得るための治癒かと思えば……延々と拷問をするための治癒だったのか。さすがリリスえげつないぜ……
「失礼いたします。」
おっと噂をすれば。つーかタイミング良すぎじゃない?
「こんな時間までご苦労だったな。追手を拷問してたんだって?」
「はい。その件でご報告をと思いまして。お隣失礼します。」
胸はリリスの方がナーサリーさんよりあるな。顔の派手さではナーサリーさんだが。
「聞こう。ついでにこっちも多少は情報があるしな。」
明日の朝、出発の前でもいいと思ってたけど、むしろ今がベストなタイミングかもね。
「結論から申しますと、追手はクライヤが狙いで間違いありませんでした。目的は口封じのようです。ナイラ隊長とやらの指示です。」
クライヤってあの女冒険者だよな?
「ほーう? 上陸の目的とか聞いた?」
「はい。この地に拠点を築くことのようです。いずれはこの楽園の乗っ取りも視野に入っていると思われます。」
なるほどね。港だけじゃ物足りないってか。商人は欲深いからねぇ。おっとそうじゃない。本当の目的はローランド侵略に向けた橋頭堡を築くことだったな。
「分かった。ちなみにこっちの情報なんだが…………」
少し長くなるけど、まあよかろう。リリスには楽園をしっかり守ってもらわないといけないからね。
「…………という感じかな。人間の軍勢ごときにここを陥せるとは思えないけど、一応気をつけておいて。」
「かしこまりました。ところで捕まえている三人ですがどうされますか? 不死晒しにするか下働きに使うか、それともいっそ旦那様の手討ちに……」
ふーむ……ここの冒険者の気持ちを考えると不死晒しがベストかな。
あ、いや待てよ……
「そいつらは明日連れてくことにするよ。少し仕掛けをしてさ。」
「かしこまりました。では私は先に休ませていただきます。明日は日の出頃にお起こしすればよろしいでしょうか?」
「おお、悪いな。すまんがそれで頼むよ。」
自分も忙しいだろうに。リリスは働き者だなぁ。
「かしこまりました。ではお先に失礼します。旦那様、本日はお疲れ様でございました。」
リリスも体を隠しもしないなぁ。私に手を付けて欲しそうではあるが、悪いね。
さて、明日はどうしてくれようか。




