529、護衛隊長セキヤ・ゴコウ
到着。イカルガは街に城門があるからな。面倒だが城門前に着陸だ。もちろん閉まってるけど。
隠形を使っていきなりセキヤの寝室に行くのも悪くないんだけど、この時間だしなぁ。サテュラちゃんと一緒かと思えばそんな無粋なこともできないしなぁ。面倒だが城門からコツコツ訪ねようではないか。
さて、城門を強めにノックしてもしもし。かなり強く叩いたよ。拳が痛い……
うーむ、無視か。それが正しい対応とは思うが……今は堪えてくれ。ノックを続ける。痛いなぁもう。
「何者か! 場合によっては捕縛するぞ!」
おっと、声が上から聞こえてきた。見張りだね。ご苦労さん。
「夜分にすまんな。俺はカース・マーティン。魔王と言えば分かるか? 緊急の用でクワナに会いに来た。取り次いでもらえるか?」
「なにを……クワナ閣下にだと? ん……ま、まお、魔王だと、ですか!?」
おお、話が通じてるね。よかったよかった。
「その通り。悪いけど急いでもらえるか? あいつが寝てしまう前にさ。」
「はっ、ははぁ! おっ、お待ちください!」
うんうん。ありがたいねぇ。おっ、城門が開こうとしてる。わざわざそんな大きい門を開けなくても隣の通用門でいいのに。
「大変お待たせいたしました! どうぞお通りください!」
おお、衛兵が整列してる。こんな時間に四人。多いのか少ないのか。おお、よく、見れば赤かった鎧がやや暗くなってる。えんじ色って言うんだったかな。シックでいい色じゃん?
「悪いね。これ、取っといて。天道宮の方にはもう伝令が行ったんだよね?」
「こ、これは、あ、ありがとうございます……え、ええ、すでに伝令を出しました!」
なら金貨をもう一枚追加だな。彼には四枚プレゼントしたのだが。
「分かった。では天道宮まではゆっくり歩くとするよ。いきなり悪かったね。」
「あっ、お、お待ちください。ただいま馬車を用意いたしますので!」
おや、クワナにも準備があるだろうからゆっくり歩こうと思ったのだが。それならそれで遠慮なく馬車に揺られるとしようかな。
「おや、そうかい。じゃあ悪いけど世話になるね。」
そういやヒイズルの馬車って牛が引くんだったよな? 走るより遅いけど歩くよりは速いんだっけな。
おっ、もう来た。
「お待たせいたしました! どうぞお乗りください!」
「ありがと。頼むね。」
話が早い上に賓客待遇か。それにしても、よく一発で私だと信じてもらえたよな。とくに身分証を出してもないのにさ。あの中に私達の顔を覚えてる者でもいたのかな?
馬車に揺られること三十分。でもこれ牛車じゃないのか? でも衛兵も馬車って呼んでたしなぁ。着いた。
天道宮の正門もすでに開いている。ちゃんと伝令は届いたようだな。さて、クワナはどこで待ってるのかな? あ、止まった。では降りようか。
先に降りて、アレクに手を差し出す。
「ありがとう。ここに来るのも久しぶりね。」
「そうだね。前来た時よりもきれいになってる気がするね。」
篝火のせいでそう見えるだけかもしれないが。
「てめぇ魔王ぉ! いきなり来るとはええ身分になったもんじゃのぉ!」
おお、この方言丸出しの男は。懐かしいじゃないか。ほほぅ、こいつだけ真っ黒の鎧か。かっこいいじゃん。
「ようセキヤ。元気そうだな。会えて嬉しいぜ、ヒイズルの勇者様?」
「少し大きくなったのかしら。きっとまた強くなったのね? 私、強い男って好きよ?」
アレクが悪いこと言ってる……
「う、うるせんじゃあ! 今の俺ぁ勇者じゃのぉて天公の護衛隊長じゃあ! ね、姉さんも久しぶりじゃの……」
相変わらず女に弱いのか。それにしても護衛隊長か。出世したじゃないか。精神的にもさ。
「そいつはよかった。じゃ、行こうぜ。クワナは起きてるのか?」
「おお、毎日忙しゅうしとるわい。まだまだ寝る時間じゃねぇのぉ」
さすが。上の者は辛いねぇ。そろそろ夜十時ってとこだろうに。
「こっちじゃあ。来いや」
さて、ここから歩きで何分かかるかな? ここもなかなか広いからなぁ。
見覚えのある廊下。王族の私的エリアだったな。
「ここじゃあ。お前らはここまででええ。持ち場に戻れぇ」
「はっ! 失礼いたします!」
付いてきた衛兵たちが帰っていく。彼らも夜勤なんだろうなぁ。大変だね。
「失礼します! 護衛隊長セキヤ・ゴコウ! 魔王殿をお連れしました!」
なん……だと……? セキヤが普通の言葉を発した……だと?
中から扉が開く。侍女さんが開けたのか。
「どうぞお入りください」
「はっ! 失礼します!」
まさかセキヤ……美人の侍女さんの前だからカッコつけてる、のか? やっぱこいつ面白いやつだわ。




