521、東の大国メリケイン連合国の気配
さて、そろそろ海だ。
村長によるとスタート早々追手らしい人間が五、六人いたらしい。もちろん無視だ。楽園に攻め込めるもんならやってみろってんだ。
見えた、が……マジか……
「どうした魔王、何か見えたんか?」
「ちょっとやばいかもな。軍勢ってのは間違いじゃないらしい。先王様のバーニングファイヤーメガフレイム並みにデカい船がありやがる。しかも外側は全て白い金属製ときやがった。大砲もいくつか見える。明らかにローランド王国内の船じゃないぞ……」
デザイン的には似てるんだけどね。あれも帆船だよな?
「金属製だぁ? 船がかぁ!? しかも国内じゃないって……」
「カース、もしかしてあれってアイリックフェルムかしら。」
さすがアレク。よく覚えてるな。ムラサキメタリックには劣るけど魔力が通りにくく頑丈で厄介な金属だ。
「たぶんね。あの白さはそうだと思うよ。ということは、あの船は……東の大国、メリケイン連合国から来たってことになる……」
ヒイズルのオワダ商会もアイリックフェルム製の船を所有してたけどさ。あれはどう見てもそこらの商会が作れるレベルじゃないだろ……
「メリケイン連合国……あのジュダがいた国ね。それよりカース、たいほうって何かしら?」
「あ、ああ。甲板を見て。太い筒みたいなのがあるよね。あれだよ。ジュダも使ってた銃って武器があるじゃない? あれの強烈なやつだよ。」
「あぁ……あれね……」
ジュダのアンチマテリアルライフルとやらにエルダーエボニーエンツォの籠手ごと腕を吹っ飛ばされたからな。果たしてあの大砲はどれだけの威力があることやら。
さて、どうするべきか……
いきなり『津波』の魔法で全てまとめて海の藻屑にしてやってもいいが……
「フェリクス、一緒に来てくれない?」
「儂か? 構わぬが、行くだけでよいのか?」
「いいよ。自分の身だけ守ってくれたらさ。」
「ほほぅ。まあよかろう。お供しようではないか。」
「アレクとコーちゃんはここで待機。全員の帰る場所を死守しつつ遊撃。それ以外は降りて情報収集。一人や二人殺しても拐っても構わんから。カムイは護衛してやって。」
「分かったわ。」
「ピュイピュイ」
「ほぉう? 面白くなってきたぜぇ」
「ガウガウ」
「俺とフェリクスが船に入ったら動いて。それまでは静かに待機で。」
「おう。任せろ」
「ガウガウ」
隠形でこっそり潜入してもいいのだが、この際だ。正面からストレートに行ってやる。
だが大砲を見て気になったことがある。
ナーサリーさんはあの女冒険者の傷を全て刃物傷だと言っていた。ということはライフルやらマシンガンやらは持ってないのだろうか? 拳銃に近い物はヒイズルのエチゴヤでさえ持ってたってのに。
さて、村長と二人で着地した。海岸までもう四百メイル、船までは六百メイルってとこかな。テントがちらほら見えるが人間は見えない。たぶん焚き火の周辺に集まってるんだろうなぁ。わざわざ外にいるってことは警戒してるのか、それともただ陸地を楽しんでいるのか。
「止まれ。何者だ」
おっと、横から声をかけられた。やけに仕事熱心じゃないの。
「六等星冒険者カース・マーティン。うちの者がここで世話になったと聞いてな。船長に挨拶に来た。」
「儂はただの付き添いだの。」
「冒険者? あぁ、あいつらの仲間か。こちらの質問に答えるのならお前は生かして帰してやるぞ? お前達! こいつらを縛りあげろ!」
おー、いっぱい出てきた。こんな時間にご苦労なことで。
『とりあえず船の中に入るまで大人しくしてよう。中に入ったら適当に暴れようよ。あの金属は魔力が通りにくいけどフェリクスには関係ないよね?』
『くくく、無茶を言いおる。見物どころではないではないか』
村長だったらムラサキメタリックですらどうにかしてしまいそうな気がするんだもん。
「抵抗しないとは賢明だな。来い。じっくり吐かせてやるからな」
おやおや。拷問でもする気か? 別にいいけどね。その方がこちらも遠慮なくぶち壊せるってもんだ。いや、むしろ全員ぶち殺して船は無傷でゲットした方がいいんじゃないか? 従順な船員は生かしておくとしてさ。こんなでかい船どうやって動かせばいいのかなんて分からないしね。
「ちょっと聞かせろよ。他に冒険者がいただろ? 五人ほどな。そいつらはどうなった?」
「知らんな。今ごろは海の魔物が消化した頃だろう」
ふぅーん……死者に対する礼も知らないってのか。ムカつくな。
「貴様らも同じ目に遭いたくなければ、せいぜい我らに媚びを売りペラペラと話すっすすっすすすすっぺぺぺぺっっごぽぉあっ……」
あらら? いきなり血を吐いて倒れたぞ? 死んだかな。何事だ? と言いたいところだが村長だろ。聞くに耐えないから何かしたんだろ。もぉー、我慢してくれよぉ。
「すまんなカース殿。やはり人間は虫以下らしいの。なればその命も五分足らず。儂の気まぐれで潰しても構うまい?」
「あー……まぁフェリクスがそう思ったのなら構わないけどさぁ。ここからどうしようかな……おーいお前ら、仲間が倒れてんぞ。助けてやれよ。」
もう助からないとは思うけどね。村長えげつねぇよ……
「隊長殿! どうされました! おい! 隊長殿が倒れてるぞ!」
「血を吐いてる! 毒か!?」
「まさかこいつらが!? いや、縛られてるな……」
「いいから運べ! 急げ!」
おやおや、私達は放置かよ。じゃあ仕方ない。
『風斬』
ロープを切った。村長の分もね。
「このまま行こうか。たぶん船の中に頭がいるんじゃないかな。」
隊長とやらも船の中まで連れていこうとしてたみたいだし。
「カース殿やその周辺と交わるばかりで忘れておったが、やはりこれが人間よの。会話ひとつできぬ虫の群れ。そのような虫の首魁がどのような輩か、とくと見せてもらおうのぉ。」
村長が厳しいなぁ。エルフが人間を虫扱いするのってこういう奴らの所為なのかな。やれやれだねぇ。人間は愚かなのか……




