520、バクティクラッシュと高揚する冒険者たち
アレク達に事情説明。
「というわけなんだ。アレクも行くよね?」
「もちろんよ。カースの領民に手を出したことも許せないけど、カースの領地で無法を働いたことも許せないわね。」
さすがアレク。嬉しいことを言ってくれるね。ここサベージ平原の東半分は私の領地。だから遠かろうが海沿いだろうが全て私の領地だからな。
「フェリクスはどうする?」
もう飲んでるからなぁ。せっかく楽しんでるところを来てとは言いにくい。
「ふむ、人間同士の争いに手を出す気はないが、ちと面白そうだの。見物ぐらいさせてもらうとするかの。」
王都では活躍したくせに。まあ口を出してくれたんだったか。
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
コーちゃんもカムイも来てくれるのか。食事の最中だってのに悪いね。
「おう! お前ら聞けぇ! さっきの件だがよ! クライヤはどうにか助かりそうだぁ! だがトゥルーサーチは全滅だぁ! 誰がやりやがったのかは分からねぇ! だが相手ぁ人間だぁ! クライヤは軍勢だって言ってたからよぉ! そこでだ。今から魔王が殴り込みに行くってよぉ! 俺ぁ行くぜぇ! 俺らバクティクラッシュもなぁ! だからもう五人だ! もう五人まで魔王が連れてってくれるってよぉ! どーよお前らぁ!」
おっ、さっきの奴だ。もう自分のパーティーに話をつけたのか。メンバーも決断早いなぁ。だが一つ訂正がある。
「おっと悪いな。訂正する。人数はもう締め切りだ。俺の仲間達も行くからさ。帰ったら話を聞かせてやるから堪えてくれ。」
「あぁーーん!? なんだぁそりゃあ!?」
「俺らにケンカ売ってん奴らがいるってことかぁ!」
「どこのどいつだよぉ! ぶっ潰してくれんぞぉあ!」
「こりゃあ行くっかねーだろ!」
「落ち着けバカ! 魔王が行くっつってんだろ!」
「つーか締め切り早すぎねーか?」
「それよかトゥルーサーチが全滅だぁ? こいつぁ笑えねーぞ?」
おお、さっきは誰も気にしなかったくせに今度はこれかよ。ただの大怪我とは事情が違うもんな。
「状況は何も分からねぇ! だが相手ぁ海から攻め込んでくるような奴らだぁ! 下手すりゃあここまで攻めてくるかもしんねー! だからお前ら! ここの守りは頼むぜぇ!」
おお、こいつめっちゃ張り切ってんじゃん。実は冒険者達のリーダー格だったりするんだろうか。バクティクラッシュとか言ったな。クタナツの六等星かな?
ところでさっきの情報に海からって話はあったっけな? まあ、あの辺りじゃあ海から来るしかないけどさ。
「海からだぁ!? それめちゃやべぇやつじゃねーか!」
「ヒイズルが攻めてきたんかぁ!?」
「いや、ヒイズルぁ魔王の配下みてーなもんなんだろぉ?」
「そんならバンダルゴウの商人かぁ?」
「腰抜け商人がこんなとこまで来るわけねーだろ!」
「だったらもう王都あたりの大貴族か王族しかねーじゃねーか!」
「ぎゃはははぁ! 面白くなってきやがったぜえ!」
冒険者達がやけに盛り上がってんなぁ。普段ならこんな大勢がこの食堂にいるはずもなかっただろうに。これはこれでタイムリーなのかねぇ。
では行くとしようか。あの女冒険者が今ごろここに着いたってことは襲われたのは昨日か早朝か。泳がされたって可能性もあるし、追手を取りこぼさないように向かうべきか……いや違う。取りこぼしたって全然構わないのか。ここには強力な奴らが揃ってるんだから。頼もしい奴らがさ。
では、行こうか。先程の冒険者を手招きする。
私達も。アレク、コーちゃんにカムイ。そして化け物ハイエルフ村長。無敵のメンバーだろ。索敵や偵察にシュガーバが欲しくもあるが、今日はまだあいつ見てないんだよなぁ。何か別の仕事中だろうか。リリスに聞いておけばよかったな。
「悪いな魔王。ちっとばかり頭に血が昇っちゃいるが現地じゃあ冷静に動くからよぉ」
魔王の館、玄関前。先程の冒険者とそのパーティーも集まっている。
「ああ。攻め込むか偵察で終わるかは現地で判断するからな。くれぐれも先走るなよ?」
「ああ。魔境じゃ頭に血ぃ昇らせた奴から死ぬからよぉ」
『浮身』
『風操』
『暗視』
では、行くぜ南東。
「フェリクスは下を見ててくんない? 人間がいたら教えてよ。」
「仕方ないのぉ。酔うたらやめるからの?」
酔ったことなんかないくせに。馬車で酔う奴はいても私のミスリルボードで酔う奴なんかいないからね。
「アレクは隠形をお願い。この暗さじゃあ下から見えるわけないとは思うけどさ。」
「ええ、任せて。」
海までたかだか百キロル。その気で飛ばせば一瞬で着く。だが、ゆっくりだ。三十分で着く程度の速度でいいだろう。夜の空は危険がいっぱいだからな。いくら暗視を使ってるとはいえ、昼間ほど遠くが見えるわけでもないんだから。
さぁて、ぼちぼち行こうか。




