518、リリスの願い
そんなことを考えていたらリリスがナーサリーさんを連れてきた。
「旦那様、ナーサリーを連れて参りました。契約魔法をお願いいたします。」
「オッケー。いつものようにリリスに絶対服従でいいな?」
「ちょいと待ちなよカースぅ。そりゃいくら何でも厳しくないかぁい? 絶対服従って私が体ぁ売らされたらどうすんだい。」
「あぁ、それは絶対ないから大丈夫だよ。もう見た? ここの女達ってたぶんみんなナーサリーさんより若いし。だからその心配はいらないよ。絶対に。」
そのくらい分かってるくせに。今さらゴネてどうしようってんだ?
「あぁーん? 私じゃ客ぅとれないってのかい! 舐めんじゃないよ! こう見えても王都じゃモテモテなんだからさぁ!」
「じゃあ問題ないね。さすがナーサリーさん痺れる魅力だよね。ではナーサリーさん、次に僕がここに来るまでリリスに絶対服従の約束でいいかな?」
「ふっ、分かってんああぁあああぁぁあーんんっっ……てめぇカースぅ……やってれたねぇ! この私に何てことぉー! 姐さんに言いつけるからね!」
チョロい……別に嫌なら嫌でいいのに。
「ナーサリーさぁーん。王都じゃラグナみたいな荒くれどもと渡り合ってきたんだよね? それなのにやけにヌルいこと言ってんねぇ? 恥ずかしくないの?」
「なっ、なぁにぃ!? 舐めんじゃないよぉ! このナーサリーが一度口にしたことを引っ込めるとでも思ってんのかい! やりゃあいいんだろぉ! 楽勝じゃないかい! どんと来いってんだよぉ!」
「だそうだ。じゃあリリス、ナーサリーさんをよろしくな。適材適所でな。」
「かしこまりました。明日からしっかり働いてもらおうと思います。ではナーサリー、また明日。よろしく頼みますよ。」
「なっ! ちょ、待てよ! 私ぁ明日から何を……」
何をって冒険者を治癒したり女達に避妊魔法をかけるだけだろ。最初からそう言ってんのに。面倒な人だなぁ。
「まぁまぁナーサリーさん。仕事は明日からなら今夜はとりあえず飲もうよ。あ、リリスはちょっと待って。」
「何だぁいカースぅ? 私を酔わせてどうしようってんだい?」
『フェリクス、ナーサリーさんに飲ませてやってよ。』
伝言でお願い。超イケメン村長ならナーサリーさんもメロメロになるだろ。
「ほれほれ、ナーサリー殿よ。まあ飲め飲め。このような地の果てまで来て野暮を言うものではないぞえ?」
地の果てとは酷いぜ村長。ある意味間違ってないけどさぁ。
「そ、そうかぁい? あ、あんた程の男が言うなら、よ、よぉし飲もうじゃないかぁい。」
よし。やっぱナーサリーさんチョロいわ。
『消音』
私とリリスだけを囲った。人混みの中でしばしの密談といこうか。
「リリス、ちょっと気になったから質問な。そこの女の子が金を盗まれてるらしいんだよね。それからこの前聞いた同僚の女から避妊魔法使いが殺された件。配下に殺人とか盗みを禁じたりしてないのか?」
「はい。職務に関すること以外は命令しておりません。自由時間まで拘束しようとは考えておりませんので。」
なるほどね。少し納得。
「ちなみに、皆には真っ当に生きれば幸せになれるし旦那様からも目をかけていただけると伝えてはございますが、それでも目先の利に走る者はいるでしょう。私としてはそれならそれで良いと考えております。判明した場合に処罰を与えるだけですので。」
またまた納得。それがリリスの統治方針ってわけね。ここに来た女達は居場所を失くして逃げてきた者がほとんど。だからこそ自由に、それでいて他者を思いやる生き方をしてほしいというリリスの願望だろうか。
なかなか難しいことやってるよなぁ。でも、絶対服従だからこそ何から何まで命令していたらきりがないし。その行き着く果てにフォークの上げ下げまで命令されないとできない、なんてなったら最低だしね。たぶんリリスはそこまで考えて命令は最低限にしてるんだろうなぁ。やっぱ頼りになる代官だわ。
「分かった。リリスがそう思うなら全然問題ない。ちなみにそいつにはリリスがクタナツに行く時に希望すれば連れてってやると言ってある。魔力庫をどうにかしたい奴は連れてくから全員に伝えておいてくれ。」
「かしこまりました。余計なご心配をおかけしまして申し訳ございません。」
「いや、全然構わんよ。リリスも困ったことがあったらすぐ言ってくれよな。」
「かしこまりました。いつもありがとうございます。」
よし。では『消音解除』
うわっ、一気にうるさくなった。さっきまでこんなにうるさかったっけ?
まあいいや。私も飲もう食べよう。アレクと乾杯だ。
「うぉい! 大変だぁ! 代官いるかぁーー!」
ん? 冒険者か? いきなり入ってきてどうした? おや、誰かを支えてるのか。
「私ならここに。どうされましたか?」
「トゥルーサーチのクライヤが瀕死で帰ってきやがったぁ! しかもたった一人でだ! すぐ治してやってくれぇ!」
ほう? 一人だけ瀕死で帰還だと? ここじゃあよくあることだろうな。でもそいつラッキーじゃん? ちょうど凄腕治癒魔法使いのナーサリーが来た時でさ。
「かしこまりました。治癒室へ運んでください。ナーサリー、仕事です。行きますよ。」
「ちょっ、私まだ一杯しか飲んでねーのに!」
「来てください。こちらです。」
「ちっ、行くよ行く。行けばいいんだろぅ。」
早速契約魔法が効いてるな。がーんば。




