515、ハイエルフに休肝日
到着。見たところ変わりないね。ここら辺のいいところは春になっても雑草が全然生えないことだろうな。雨があんまり降らないし土の固さや栄養状態とかのせいもあるんだろうなぁ。そんな中でドワーフ達はよくリモンの木を育てたもんだわ。
魔王の館前に着地。まだ余裕で昼前だな。さて、リリスはいるかな。
「お帰りなさいませ旦那様、お嬢様。」
なんといいタイミング。ちょうど玄関から出てきたではないか。
「ただいま。治癒魔法使いを連れてきたよ。もちろん避妊魔法も使えるらしい。」
「さようでございますか。さすが旦那様、迅速にご対応いただきありがとうございます。」
「あんたが代官かぁい? 私はナーサリー・カムレイド。これでも王都じゃちったぁ知られた治癒魔法使さぁ。イザベル姐さんの直弟子みたいなもんだねぇ。」
「リリス・キスキルでございます。旦那様の筆頭奴隷であり、ここ楽園の代官を仰せつかっております。よろしくお願い申し上げます。」
「あぁーん? 筆頭奴隷ぇー? ちょいとカースぅ? そいつぁ初耳なんだがねぇ? あんた奴隷なんて所有してたってのかぁい!?」
私も忘れてたよ。だってリリスって奴隷って気がしないもん。これっぽっちも。
「色々あってね。何か問題ある?」
「い、いや、そりゃあ問題なんぞないけどさぁ……あんた奴隷にどんだけ権限与えてんだい……」
「リリスは僕の右腕みたいなもんだからね。権限なんていくらあってもいいよ。」
極端な話、リリスがその気になれば楽園を乗っ取ることだってできるだろ。その後維持できるかどうかはともかくさ。
「光栄でございます。では早速ですがその腕前を披露していただいてよろしいでしょうか。」
「いーや、まだだねぇ。まだ待遇やら条件やら聞いてないからねぇ? 契約魔法だってかけるんだろぉ? どうなんだぁい?」
おー。ナーサリーさんたら、しっかりしてるじゃん。
「そこまでのお覚悟でしたか。ではゆっくりお話いたしましょう。どうぞこちらへ。旦那様、これにて失礼いたします。」
「ああ。ナーサリーさんをよろしく。あっ、ちょっと待った。今回の件だけど、まだリゼットからも当てがあるって聞いてるから無理にナーサリーさんを採用しなくてもいいからな。」
ふふふ。王都からの空路でリゼットとも相談してんだぜ。ナーサリーさんもは隅っこにいたから聞いてなかっただろうけどさ。
「あぁん? 私以外にも当てがあるってぇ? ふんっ、私以上の凄腕がいるといいけどねぇ?」
それは分からないな。だってナーサリーさんて王国一武闘会でも治癒魔法使いとして詰めてたじゃん? そして実際何人もの命を救ったわけだしさ。そりゃあ母上ほどじゃなくてもかなりの凄腕なんじゃないだろうか。
さて、これにて用は済んだ。これ以降は全てフリーだ。ここを出発するのは明日だからそれまでは完全に暇だぜ。楽園の改革やリリスからの要望でまだまだやることはあるが、それはまた別の機会でいいだろ。今日はもう何もする気などないからね。
ところで気になったことがある。
「ねえフェリクス、明日から約束してたスペチアーレ男爵のとこに行くんだけどサリナちゃんは放置でよかったの?」
男爵んちへの滞在予定は一週間だからね。
「あぁ、もちろん構わぬとも。女などというものは毎日会うって飽きてしまうといけぬからの。たまに会うぐらいでちょうどよいのだとも。」
なんだかすごくモテる男みたいなこと言ってる。どうせ若い頃からモテモテだったんだろぉ? まったく、これだからイケメンは……
「そっか。それならいいんだけど。じゃあ出発は明日だからそれまでは自由にしててね。あ、明日からはたっぷり酒を飲むことになると思うからさ。今日ぐらい飲まない方がいいと思うよ。」
「ほう。そうかの。それは楽しみだのぉ。ならば今日はのんびりさせてもらうとするわえ。カース殿もか?」
「うん。そのつもり。ぼけーっと過ごしたいね。」
散歩したりすると人目につくから、風呂にでも入って自室でのんびりってとこかな。
「ふむ。それも悪くないのぉ。だが良いのか? 精霊様も狼殿も退屈そうにされておるぞ?」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
おっ、そうかのね。コーちゃんは銀湯船に魔力を込めてくれと。カムイは大きめの肉が食べたいのね。いいとも。
「大丈夫。そこまで退屈でもないみたい。じゃあフェリクス、また後でね。」
「やれやれ。仕方ないのぉ。儂ものんびりするとするかえ。」
おや? もしかして村長ったら昼前から飲みたかったのかい? それはそれで悪くないけどさぁ。でも明日からのことを考えるとね。やはり今日はゆっくりするのが正解だと思うよ。ハイエルフに休肝日が必要とは思えないけどさ。
さて、魔力充填と肉の用意がすんだら……風呂だな。午前から風呂も贅沢だからな。




