509、帰還準備
ふぅー。いい汗かいたなぁ。もーう限界。かなりやったよ? 手も上がらないし足だってガクガク。帰りは馬車か飛ぶか……
「レイモンド先生、今日はありがとうございました。またよろしくお願いします。」
「こちらこそ。また王都に来た時はぜひ顔を出してね。絶対にね?」
「はは、もちろんですよ。ところでベルベッタさんに契約魔法はかけなくていいですか?」
「いやぁ、さすがにいいよぉ。でもありがとうね。」
「何? 私に契約魔法をかけるだと? まさかお前……そうまでしてこの身を恣にするつもりかっ!」
酒も飲んでないのに酔ってんのかこの人。
「いやいやいや! だからいいって言ってるじゃないですか! 僕には愛する妻がいるんですから!」
「ふっ、分かっている。冗談に決まっているだろう。さて、では飲みに行くとしよう。たまにはお前も来るか? 魔王も来ることだしな。」
冗談? ほんとにぃ〜? でもレイモンド先生と飲むのはかなり久しぶりじゃないかな。
「ベルベッタさんの奢りなんですよね? それなら一軒だけお呼ばれしましょうとも。」
ぷぷっ、レイモンド先生ったら昨日の私みたいなこと言ってる。
「ふっ、いいだろう。行くぞ!」
今夜は最後までお供しようかな。伯母さんには夕食いらないって言っておいたし。少し申し訳なかったが……
「そういえば、昨日はあれからオミットさん来たんですか?」
「昨日? ああ、来たぞ。ニコニコのは途中で帰ったがな。」
ニコニコのってラグナのことか。私のことも魔王って呼ぶし、もしかしてベルベッタさんって人の名前を覚えるのが苦手?
「ま、まさか、カース君オミットの野郎と膝を突き合わせて飲んだのかい!?」
「いえ、どうも僕と入れ違いだったようです。」
「そ、そうか。それならいいんだよ。」
妙な心配するなぁ。実はオミットさんが酒乱だからとか?
この夜は特に何事もなく酒に食事にお喋りに興じることができた。なおレイモンド先生は三軒目で酔い潰れたためベルベッタさんが背負って帰った。家を知ってるのかどうかは知らないが。
そして翌朝、いやもう昼かな? 体の痛みで目が覚めてしまったよ。アレクは……いない。私も起きるとしよう……
居間に顔を出してみると、ラグナ?
「あぁボスぅ、やっとお出ましかい。待ってたよぉ。」
気安い物言いの割に体を小さくしてんなぁ。あー、目の前に伯母さんがいるからね。
「おー、おはよ。伯母様もおはようございます。」
「おはよう。今アレックスちゃんがお昼を作ってくれてるわ。」
なんと! アレクすごいな。
「それは楽しみですね。」
やはりもう昼なのか。よく寝たらしいな。
「伯母様、お待たせしました。あっ、カース起きたのね。」
「悪いわねアレックスちゃん。」
「おはよ。おっ、それ最高だね!」
アレクがお盆の上に乗せてるのは、おにぎりと味噌汁じゃん。最高すぎる。
「ヒイズルの料理を再現してみました。これカースの大好物なんです。」
「まあ、そうなのね。不思議な見た目ね。初めて見るわ。」
俵形のおにぎり。そりゃあローランド王国には出回ってないもんなぁ。あと、こっちでは麦飯がメインだし。
ふぅー味噌汁うまぁーい! さんざん飲んだ翌日のランチに最適だね。
あ、もうなくなった。伯母さんもラグナも食べるの早すぎないか? 私まだおにぎりを二個しか食べてないのに。もぉー。
「で、ラグナは何事だい?」
こいつがここに来た時点で分かるけどさぁ。
「例の件さぁ。明日の朝イチ、辺境伯御一行を連れて帰ってほしいとか。まっ、ダミアンとアタシは残るがねぇ。おっと、あのジジイもだったかぁ。」
それはまた妙な残り方だね。ダミアンとラグナはまだ分かるが、そこにモーガンじじいまでとはね。
「分かった。じゃあ明日の朝上屋敷に行けばいいな?」
「いや、辺境伯御一行がここに来るとさぁ。当主様や奥様にご挨拶したいんだと。もちろん奥様にはアタシから伝えてあるよぉ?」
ほほう。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの辺境伯がわざわざねぇ。辺境伯も大変だねぇ。
「分かった。こっちはそれでいい。」
「へへっ、頼んだよボスぅ。そんじゃ奥様、お邪魔しましたねぇ?」
「ええ、明日ね。待ってるわよ?」
さて、そうなると今日は丸々暇だな。なーにしよっかなぁー。




