507、魔槍 vs フェンリル狼
「さあ来いフェンリル狼よ!」
またもベルベッタさんは来いと言いつつ自分から行ってる。しかしさっきと違うのは突きが細かいことだ。間合いを詰め気味で速く細かく突いているように見える。あれ目の前でやられたら絶対見えないだろ。私は横から見てるからベルベッタさんの手の動きでどうに分かるけどさぁ。
大ダメージを狙わず、小傷でチクチクやろうとしてるのかな?
だが、そんな腰の入ってない突きでは……あ、ほらカムイはあっさり間合いを取ってる。当たっても効かないとは思うが、カムイにしては慎重じゃん。
「ガウガウ」
あら、せっかくゲットした一文字槍をあっさりぶん投げちゃって。ベルベッタさんが小刻みに攻めてきたもんだからカムイもスピード重視か?
「ほう? 私の槍など要らぬというわけか? まあいい……我がクルグラスの錆にしてくれよう!」
あ、それだめ。
「アレク、僕の後ろに来て。」
「ええ。」
小刻みな突きに魔力を乗せ始めたじゃん。槍でやる『飛突』ってわけね。さながらマシンガン並みの連射じゃん。道場生に怪我人が出てるぞ……そして道場にも……
「ちょおおおおお! ベルベッタさんやめてくださいよおおおおお! 道場が! 壁が! 穴だらけになるぅうううう!」
「んん? レイモンドか。お前も錆にしてやろうか? 引っ込んでおれ。」
「ガウガウ」
あらまぁ。カムイも邪魔するなとか言ってるし。連射タイプの飛突じゃあ無敵の毛皮には傷一つつかないからって余裕だな。あ、消えた。
「そこか!」
消えたと思ったらベルベッタさんの背後に。魔槍を薙ぎ払うベルベッタさんだが、カムイの頭上を空振り。カムイは身を低くしたまま……足狙いか? ベルベッタさんは石突でカウンターを、またも空振り。やっぱカムイに当てるのって至難の業だよなぁ。でもカムイも本当はベルベッタさんの足に噛みつくつもりだったんじゃない? やっぱベルベッタさんもやるねぇ。
「さすがに速いな……目で追うことすらできんとは。これがフェンリル狼か……」
ベルベッタさんでもか。私なんて横で見ててもよく分からないってのに。
「だが、間合いの外で逃げ回っているだけとも言える。どうだフェンリル狼よ! 足を止めて私と打ち合う気概はあるか!」
「ガウガウ」
「ベルベッタさん。足は止めないけど間合いの中に入ってやるって言ってます。」
ベルベッタさんも上手いなぁ。やはり歴戦の冒険者なだけあるね。カムイはカムイで余裕こいてるし。
むっ!? カムイ……やる気かよ。魔力刃を伸ばしちゃって。
「ベルベッタさん、カムイのそれヤバいですから気をつけてください。」
めちゃくちゃ切れるからな。
「ふっ、相手にとって不足はない。存分にかかってくるが、くっ、油断も隙もないな……」
やるねぇカムイ。ベルベッタさんの右脛を狙ったんだろ? ギリギリで避けられたな。
「いくぞぉ!」
「ガウ」
足を止めて魔槍を振り回すベルベッタさん。その周囲を動くカムイ。すげえな……あれでよく斬られないな。マジで間合いから出ないのかよ……
ベルベッタさんも魔槍を振り回しまくってる。近寄ったら微塵切りにされそうなぐらいに。
カムイも姿が消えるほどに動いてる。
すごいなこれ……どうなってん、あ!
「くっ……まさかな……だが!」
「アウアッッ」
カムイがベルベッタさんの槍を受け止めた、いや噛み止めた? 真剣白刃取りならぬ、真剣白刃噛み? と思ったらベルベッタさんがカムイの腹に蹴りを入れた。カムイは本日初のダメージじゃない? でも槍を離さないカムイ。膠着したな。
ここからどうなるんだ?




