349、ラグナの一声
よーし。がちがちに契約魔法かけてやったぜ。ダミアンに絶対服従の上、解呪を含むあらゆる裏切りや利敵行為をできないように。もちろん自殺もできない。
これでもう安心していいだろう。
ちなみに『破戒の浄眼』と『螺旋三稜剣』は没収した。特にスパイラルソードはリリスへのお土産にぴったりだからね。『神酒の欠片』と『不帰の龍血』はそもそも持ってなかったらしい。モーガンジジイでもなかなか手に入らないとか。闇ギルドの奴らはよく持ってそうなのにね。
「さすがボスだねぇ。一人で全部ひっくり返しちまったじゃないのさぁ。今ごろドストエフの奴ぁ吠え面かいてんじゃなぁい?」
吠え面ってどんなツラなんだろうなぁ。ラグナの言うことはよく分からないや。
「そうかもな。でも油断すんなよ? 追い詰められた野郎ってのは何するか分からないからな。」
「ごもっともだねぇ。だからさぁボスぅ? 今から行こうと思うんだがどうだぁい?」
「行く? どこへ?」
「もちろんドストエフんとこさぁ。もうぶち殺しちまおうと思ってねぇ。ほら、デルヌモンからもジジイからもドストエフの悪事は吐かせたわけじゃん? ならもうトドメをくれてやってもいいって道理さぁ」
おお、ラグナにしてはいいこと言うじゃないか。でもラグナの口から道理って言われると違和感がすごいな……
「いい考えだな。お前にしてはやるじゃん。で、今ドストエフがどこにいるか分かるか?」
「いやそれが問題なのさぁ。ねぇダミアン?」
「おぉ。どうも昨日から身ぃ隠しやがったみてぇでよ。あいつ保身にゃあ長けてやがんからよ。なぁモーガン爺、あいつが今どこにいるか知ってるか?」
ほう。もう身を隠してやがるのか。判断早いじゃん。その間にモーガンがダミアンかリゼットを仕留めたら姿を現す目論見だったんだろうなぁ。
「くくく、もちろん知らぬわい。儂が成功しようが失敗しようが市井の噂で判断するよう伝えておいたからの」
「てことはモーガン爺よぉ……どっちにしても姿をくらます気だったってことか? いや、そのまま死ぬ気……だったのか?」
なんだって?
「当然だろう……ドナシファン閣下の愛息とその奥方を手にかけるのだ。どうして生きておれようか」
忠誠心高すぎだろ……ダミアンのことだってそこそこ可愛がってたんだろ? ダミアンがモーガン爺とか呼ぶぐらいなんだからさ。
「一応聞いとくけどよ……それドストエフ兄貴に頼まれたのかよ? それとも、モーガン爺が自発的にやったのか?」
「ぐっ、ぐぬ、ぬっ、ぐぐ……お、おお……」
マジかこのジジイ。私の契約魔法に抵抗してやがる。そこまで喋りたくないのかよ。その時点で答えが分かってしまうってのに……
「やめろ。無駄な抵抗すんな。カースの契約魔法だぜ? どう足掻いても抵抗しきれるわけねぇだろ……」
自殺や抵抗を禁止しておいてこれだからな。やっぱこのジジイやべぇ奴じゃん。
「ぐっぶぉっ……た、たのま、れ……」
「やめろ! もう喋んな! 死ぬなんて許さねぇからよぉ! これ飲め!」
血を吐きやがった。自殺は禁止してるから舌を噛んだわけじゃない。無理やり契約魔法に抵抗してるから全身あちこちから出血してやがる……
おぉ、ちゃんと飲んだか。マジでこのジジイ油断できねぇな……もう魔力ほぼ残ってないくせに。
「モーガン爺……とりあえずもう休んでろ。俺らはドストエフ兄貴をやるからな。そして今夜中に終わりにする。悪いな、モーガン爺……」
「や、やめろ! やめるんだ! 長子相続が、世の慣いが……」
「カース、悪いけどモーガン爺を眠らせてやってくれるか? かなり疲れてるみたいだからよ。」
「ああ……」
「やっ、やめよ魔王! やめてく『永眠』れっえぇ…………」
永眠があっさり効くほどに魔力が減ってやがる。魔法部隊の顧問ともあろうお人が、どんだけ魔力抵抗衰えてんだよ……
「ありがとよ。そんじゃ行くかよ。兄貴をぶち殺しによ?」
「ん? ダミアンお前、居場所知ってんの?」
「知ってるわけねーだろ。今から探すんだよ。とりあえずモーガン爺を運んでからな。」
「本当に眠らせたけど、殺さなくてよかったのか?」
私としては殺したくない。だからダミアンの言葉をストレートに受け取って眠らせたのだ。ダミアンだって明らかに殺したくなさそうだったもんね。
「おお。これでもモーガン爺には可愛いがってもらったんだからよ……とりあえずモーガン爺はマイコレイジ商会に連れてくぜ。ドストエフ兄貴はそれからだ。」
「マイコレイジ商会に? いいのかよ。」
「いいに決まってんだろ。あそこにゃあ今フェリクスがいるんだぜ?」
お、おお、それなら絶対安全だわ。
「分かったよ。行こうか。」
村長がいるんなら何の心配もいらないよな。マジで助かるよなぁ。
そうなると、後はもうドストエフをどうするかだよな。さくっと仕留めて解決か? あ、でも居場所が分からないんだったか。世の中そうそう上手くいかないよね。




