348、世代交代
さて、そうと決めたらジジイをダミアンの所に連れてく必要があるのだが……さすがにマイコレイジ商会に連れていくのは危ない。そうなると……
『魔力探査』
領都中をチェックするぜ。よし、見つけた。魔力が特殊な上にクソでかいから探しやすいんだよね。
『フェリクス、聞こえる?』
『おおカース殿か。聞こえるぞえ。何用かの?』
『伝言をお願い。リゼットに終わったと。それからダミアンには自宅に帰ってこいって』
『ほう。さすがはカース殿だのぉ。上手くいったと見える。あい分かった。伝えておくでの』
『ありがと。頼むね』
よし。これで後は待つだけでいい。ダミアンに引き渡してここの屋敷が建て直せるほど働いてもらおうか。
つーか村長ったらリゼットからちゃんと事情を聞いてたっぽいな。私にも教えといてくれよ……来たらいきなり火事なんだしさぁ。
「なあ、あんたさぁ。本気でドストエフを跡目に据えるつもりだったんだよな? ドストエフでクタナツ代官に勝てると思ってたの?」
「クタナツ、の代官? もしやドナシファン閣下から聞かされておったか。あれは閣下一流の激励だ。アジャーニ家の者になど跡目をくれてやるはずがなかろう」
「ほぉーん、激励ねぇ。そうなるともう跡目はダミアンで確定ってことになるな。ひと安心だわ。」
辺境伯がこのジジイに本音を語ったかは知らないが、言われてみれば確かに今の状況でアジャーニ家である代官に跡目を譲るのはあり得ないわな。辺境伯のフランティア家はアジャーニ家から死ぬほど恨まれてるもんな。
「そうだ……だから、何としても、いかなる手を使ってでも……」
なーるほどね。てっきりクタナツ代官が最有力候補かと思ったら実際は一騎打ちだったと。ダミアンさえ居なければドストエフの勝ちだったわけね。少なくともそれがジジイの中では真実なのか。
「まぁ、だいたい分かった。今後はダミアンの配下としてきっちり働いてね。」
「虫唾が走る……が、どう足掻いても逆らえそうもない……無念だ……」
ドストエフに心酔してるってよりダミアンを毛嫌いしてる感じかな。その理由まで聞く気はない。どうせ面倒な事情があれこれあるんだろ。昔のダミアンがめちゃくちゃやってて呆れ果ててたとかさ。だって放蕩三男だもんな。そんな奴にずっと跡取りとしてコツコツ頑張ってきたドストエフが負けるなんて絶対許せないかもね。私の知ったことじゃないけど。
「つーかドストエフの贋金の件はいいのかい? 確たる証拠が出てこなかったとか?」
贋金なんて絶対許せないとか言ってたじゃん?
「その通りだ。ならば潔白だと見做すのが当然であろう」
あー、はいはい。もうそれでいいよ。別に間違ったことは言ってないし。
ダミアンが来るまでしばし休憩してよ。あー疲れた。
「魔王よ……なぜそこまでダミアンに肩入れする? あやつが本当に広大なフランティアを治めるに足る器だと思うのか?」
また同じ質問かよ。もう抵抗できなくなったもんだからせめて口だけでもってか?
「友達を助けるのに理由が必要か? あと器なんか知らないって。」
「儂はもう知らんからな。たとえフランティアが崩壊したとて……」
「その時はその時だろ。王家あたりが喜んで奪いにくるんじゃない?」
「なんと……ふっ……そこまでの覚悟か。もう年寄りの時代ではないようだ……」
なんかそのセリフ前も聞いたことがあるな。あれは誰だったか……
つーか覚悟なんかあるわけないだろ。その場その場で最善だと思うことをやるだけだっつーの。
「ようカース。モーガン爺をやっちまったって? つーか……何でそんなに離れてんだ?」
「おおダミアン来たか。そんなもんこのジジイが油断できないからに決まってんだろ。」
「んん? モーガン爺元気そうに見えるんだが、ぼっこぼこにしたわけじゃねーのか?」
「誇りも何もかも砕かれてしまったわい……」
十メイルは離れてるけどちゃんと聞こえてんだよね。
「とりあえずあのジジイはダミアンの配下になるってことで話が付いてるからな。上手く使ってやりな。この屋敷を弁償できるほどの金はないって言うし。」
「マジか。よくそんなことできたな……つーか、きれーさっぱり燃えちまったな。まっ、建て直しやすくていーんじゃね?」
「そんじゃ契約魔法かけるぞ。それでも油断するなよ?」
「ははっ、手回しいいじゃねーか。つーかマジで何やりゃあんな頑固ジジイを説得できんだよ……」
「後でゆっくり話す。いやー、それにしても疲れたわー。」
気疲れって感じ? 魔力的には大して消耗してないってのにさ。はー、疲れたなぁもう。




