347、支配下
思い浮かばないからもうちょっとお喋りしよう。
「で、その『破戒の浄眼』だっけ? どんな効果があるの?」
「さすがに知らなかったようだな。これはな……あらゆる魔法効果の解呪だ。もっとも、実際には込められた魔力によるのだろうがな。だから今かけられている契約魔法が解呪できるかどうかは賭けになる……」
やっべ……やっぱマジモンの切り札じゃん。それで一瞬の機会を狙ってたってことだろ?
「てことは? 俺が迂闊に近づいて隙でも見せようもんなら、しれっと解呪する気だったってことか。そんで、そこから一撃で仕留める手段もあるってことだよな?」
「ふっ、その通りだ……念のためにと用意していたが、まさか使うことすらできないとはな……」
「で、どうやって一撃で仕留めるってんだよ? そっちの切り札もあるんだろ? 全部言ってもらおうか。」
このジジイなら私がきっちり自動防御を張ってることぐらい知ってるだろ。最初の火球だって私は無傷だったしさ。
「そこまで話させるのか……無慈悲なことを、まさに魔王よ。一つは短剣。いわゆる螺旋三稜剣だ……これを刺して捻れば、よほど優秀な治癒魔法使いでもない限り傷口が塞がることはない……もちろん猛毒も塗ってある……」
え、えげつねぇ……スパイラルダガーって断面がベンツのマークみたいな剣だよな? しかも刀身が螺旋上に流れてるから刺すだけでも自然と抉られるんだろ? それ私の最高級ポーションでもなかなか治らないやつじゃない? おまけに猛毒かよ……いくら効かないにしても傷口とセットだとダメージが長引きそうなやつじゃん……
まぁ、運良く自動防御は貫けてもドラゴンウエストコートまでは無理だろうな。
「で、他には?」
「亜空転移だ……知っておろう?」
げっ……ババア校長が使ってたやつ。空間ごと抉られるやつだろ? 当たれば即死じゃん。
「ああ、知ってる。でもあんた、それ溜めなしで使えるのか?」
「くく、無理に決まっておろう……だから近寄ってもらう必要があったのだ。螺旋三稜剣を突き刺して、痛みに悶えている隙に……な」
ああ、二段構えだったのね。私が来るかどうかも分からないのに、そこまで備えてたのね。やっぱ近寄らないで正解だな。
「それで以上か? 他に切り札はないのか?」
「ふ……あるわけなかろう。余生を過ごすための財産を注ぎ込んでこの様だ……辺境伯閣下には悪いが復旧の資金などとても弁償などできぬわ。だから、この身で「おーい、勝手に自決とかすんなよ?」ぐっ……うう、一死大罪を謝すことすら許してくれぬのか……」
何か難しいこと言ってるけど知るかってんだ。
「当たり前だろ。金がないなら働いてもらうぞ。当分ダミアンの配下な。」
「くっ、ぐぬっ、ぬぬぬぅぅ……」
めっちゃ魔力込めてるじゃん。あんま残ってないくせに。さすがにその程度じゃ私の契約魔法は破れないぞ?
つーかそんなに屈辱か? そりゃまあ分からんでもないが……
「契約魔法を解こうとするのも禁止な。こんだけ丸焼きにしといて逃げるのはなしだぜ?」
「く……」
「その代わり今回の件は辺境伯とかダミアン達以外には黙っておいてやるよ。孫娘の肩身が狭くなったら大変だろ?」
同じ魔法部隊の男と結婚するんだよな。いや、もうしたのかな?
このジジイはそんな孫娘の将来をどうする気だったんだろうね。自分が成功していれば次期領主はドストエフに決まるから問題ないってか? クタナツ代官対策はどうする気だったんだろうね。それともダミアンとなら差し違えてもいいとか思ったんだろうか。まぁ、ダミアンも狙ったんだろうけど本命はリゼットだよな。さすがのダミアンもリゼットの財布と頭脳がないときついもんなぁ……
「感謝……する……」
ほう。素直じゃないか。契約魔法がかかってるせいだけじゃないね。
さて、どうしてくれようか困っていたが、話の流れでダミアンの配下にするってことになったし。ひとまず一件落着ってことでいいかな。
まったく……苦労させやがって。まさかこのジジイがこうも無茶な実力行使をしてくるなんて予想だにしてなかったっつーの。やれやれだぜ……




