345、領都騎士団魔法部隊の顧問
マジなのか……見覚えがあると思ったらあの服装、騎士団魔法部隊のローブじゃん。魔法防御も高くて重宝するって聞いたことがある。
「あんた……何やってんだよ? 今そんなことしてる場合じゃないだろ?」
いくら長男派だからってこれはやり過ぎだ。
「ぐふっ……うぅ……まんまと嵌められたようだな……」
ローブはボロボロの丸焦げ。どう見ても満身創痍って感じだ。感じる魔力も弱々しい。
「答えてくれよモーガンさん。あんたほどの魔法使いが何やってんだよ?」
領都騎士団魔法部隊の顧問モーガン。今の宮廷魔導士長のライバルとも謳われた熟達の魔法使い。うちの楽園に排水の魔法を施してくれたこともあったのに。
「ごっほ……うぅ……決まっておろう。リゼット嬢の命をいただきに来たのだがな……」
そりゃそうだろうよ。まんまと嵌められたとか言ってたが……
「居ないことぐらい分かるだろ……なぜわざわざ火なんか着けたんだよ……」
このジジイの魔力探査なら簡単に分かるだろ?
「決まっておろう……命が取れないのであれば周りから崩すのが定石というものだ……」
そりゃそうかも知れないけどさ……今回は違うだろ。いくら広くて高そうな屋敷だからってここを丸焼きにしたぐらいでリゼットにダメージ行くかぁ? そりゃあ費用的にはかなり行きそうな気はするが……
まぁ、正直に言う気はないってことだな。つまり、まだ諦めてない。
「で、どうすんの? 死ぬまでやる気?」
「く……まだ死ぬわけにはいかぬ……」
だろうね。満身創痍のくせにこれっぽっちも諦めてなさそうだもん。アレだって絶対持ってるだろうし。まだまだ油断はできない。
「でも降伏しないよね? 隙あらば反撃するよね?」
隙がなくても反撃するんだろうけどさ。
「くっ……なぜ、なぜだ……なぜダミアンなどに味方する……長子相続が世の慣いではないか……」
「知らないって。それを言うならなぜ贋金や偽証文を使うドストエフなんかの味方するのよ? 明らかに辺境伯の器じゃないじゃん。」
しかもドストエフの奴、一人になったってのに自分で突撃しないのかよ。どうやったのか知らないがモーガンを動かすなんてさぁ。
「勝つために手段を選ばぬのが勝者というものだろう……」
「それならそれでいいんだけどさぁ。でもそこまでやって負けてれば世話ないよね。モーガンさん、あんた辺境伯家に恩があるとかって聞いたけどそれで当代の辺境伯閣下の足引っ張ってどうすんのよ?」
「……聞き捨てならぬな……どこが閣下の足を引っ張ることになるのか……」
「え? ここ燃やしたじゃん。火は消えてるし全焼じゃないけど明らかにもう住めないじゃん? ここに住んでるのってリゼット一家だけじゃなくて貧民街の多くの子供達もだよ? それを騎士団魔法部隊の重鎮たるあんたが燃やしたんだよ。どう考えても弁償するのは閣下じゃん。それともここを建て直すぐらいの財産でもあるの?」
ただでさえ懐具合が苦しい辺境伯の足を引っ張ってるよなぁ。
「ふ……やはりそなたの口を封じるしかないようだな……」
『風斬』
「動くなよ。今飲もうとしたよな? アレ、持ってんだろ?」
腕が不審な動きをしたからな。斬り落とすつもりで風斬を撃った。残念ながら切断には至らず、手に持ってた何かを落としただけだったが。
「このような年寄りを相手に……やけに警戒するではないか。魔王がそんなに臆病とは聞き及んでなかったがな……」
「あんたそこらの年寄りじゃないじゃん。ゼマティスのじいちゃんを相手にするつもりでやってんだよ。だからもう時間切れ。まともに話す気がないなら死んでもらうよ。」
本当はがちがちに契約魔法をかけたいが、このジジイ相手にそんな悠長なことはできない。殺せる時に殺しておかないとな。だって呑気に話してる間にだいぶ血が止まってるし傷だって減ってる。さすがに魔力まで回復しちゃあいないけどさ。
『火球』
何を落としたかは知らないが燃やしておく。
「ふむ……何が聞きたいのだ?」
『狙撃』
「ぐがぁっ!? くっ……儂ごとき近寄らずとも、いつでも殺せるというわけか……」
「時間稼ぎはやめろ。喋りたいんなら約束しろ。俺に逆らわず正直に話すとな。」
「いいだろっぐぉががぁぁあががぁがががっおお……ごふっごはっ……ふぅ……なんという魔力か……たかだか年寄り一人を戒めるためにこれほどの魔力を込めるとは……」
あれ? 効いちゃったぞ? 嘘だろ? 勝ってしまったのか? 絶対切り札持ってると思ったのに。もしかして落とした奴がラスト一個だったとか?
ちょっと信じられないけど、契約魔法が効いたのは間違いないから……あれこれ質問タイムといくか。何から聞くべきか……




