344、見えない刺客
着いた! 間違いない。リゼットんちが燃えてやがる……すぐに消してやるよ!
『水滴』
広範囲に大量の雨を降らす。
つーか人影が見えないな。誰も消火活動してないのかよ。
『魔力探査』
いるじゃん。かなり魔力高い奴が。こいつが犯人か……誰だろう?
『浮身』
『風操』
現在地から屋敷を挟んだ反対側。さあ、誰だ?
うおっ、火球が飛んできた。魔法使いか? おっ、生意気にホーミングかよ。うちの姉上オリジナルかと思ったけど、さすがにそう都合良くないわな。
居ない……しかし魔力反応はある……
『水球』
ホーミングが使えるのはお前だけじゃねーんだよ。魔力反応さえ分かればどこからでも当てられるぜ? だが……手応えがない。命中はした……しかし効いてない? 構うかよ。
『水球』
『水球』
『水球』
『水球』
上空からの乱れ撃ちだ。一つ一つが巨大鉄球並みの威力だぜ?
今度は手応えあり。致命傷かは分からないが……ん? 代わりに魔力反応が失くなった、だと? どうせ隠形でも使ってんだろうと思ったが、魔力反応まで隠せるってめちゃくちゃ上級者じゃん。そんなの私でも無理だぞ?
『燎原の火』
だったら周囲ごと燃やすしかないな。せっかく消えかけてたのにさぁ。幸いなのかここは庭が広いし周囲だって貧民街だし、おまけに何故か人影もないし。関係ない建物が少しぐらい燃えようが私は気にしないぜ?
ほぉら居たぁ!
『狙撃』
やはり手応えあり。
周囲を火だらけにするとな? そこに見えない誰かが居たとしてもうっすら見えるんだよ。透明度の低いガラス越しに見てる感じ?
『狙撃』
上級者っぽいからな。手は緩めん。お前の隠形が切れるか死ぬまで撃ち続けてやるよ。死にたくないなら隠形を解いて降伏しな?
『狙撃』
さすがに正確なシルエットまでは見えないからなぁ。ライフル弾がどこに当たっているか分からないんだよな。反撃が来ないのが気になるが……このまま押し切ってやる。
あ? マジか、完全に見えなくなった……どんだけ隠形が上手いんだよ? あ、違う。あれたぶん隠形じゃなくて『火遁』じゃない? だったら……
『吹雪ける氷嵐』
あらゆる場面で通用する『隠形』と違って周囲が火の時だけ有効に使える遁法系の魔法『火遁』。だったら無効にしてやるよ。
反撃してこないところを見ると徹底的に逃げに回ってるようだな。この手のタイプって一度逃すと二度と捕まえられないからね。ここで仕留めてやらねば。動かないならそのまま凍ってしまえよ。
『氷壁』
念のため周囲をがっちり囲っておこう。万が一にも逃がさないために。
動きがない。魔力反応もない。もしかして、もう凍ってしまったか? いや、それはない。もしそうだとしたらとっくに凍った人間の立像でも見えてるはずだ。
つまり、息を殺してチャンスを狙ってるってことだな。思えば最初に食らった火球はそれなりの威力だったもんな。不意打ちで食らったらアレクでさえ黒焦げになってもおかしくないほどに。
だめか。もう逃げられたのか?
吹雪ける氷嵐を放った瞬間ちらりとも見えなかったのは、もうとっくに逃げてしまったからなのか? 例えば短距離転移なんかで……いや、それもない。いくら熟練の隠形を使っていたとして転移系の魔法なんか使った日には魔力反応を隠せるはずがない。つまり、奴は動いていない。じっと身を潜めているはずだ……
潜める、どこに?
『風斬』
地面を切り割くように、いくつも放ちその場で回転させる。ヒイズルでも使った地面を耕すバージョンだ。
ここまで肉眼でも見えず魔力反応もないってことは地中に隠れてるってパターンと見たね。アレクも似たようなことやってたし。
ならば、氷壁で囲んだ一帯全てを掘り起こしてやるよ。いつまで隠れていられるかな? 我慢比べといこうか。
魔力反応あり! 防御に魔法を使いやがったな!
『火球』
防げるもんなら防いでみろ。鉄でも沸騰する極熱の火球をな!
見えた! ついに隠形に使う魔力を防御に回しやがったな? ん? あの服装……見覚えがあるような。
『狙撃』
手応えあり。今度こそ効いただろ。
『烈風』
さあ、煙が晴れる。顔を見せてみろ。近寄りはしないけどな。
なっ……マジで!? 嘘だろ……あのジジイが犯人……だと!?




