341、領都騎士団の動員
寝室を出て廊下を歩いていたらダムートンと遭遇。こんな時間から仕事熱心だねぇ。
「旦那様、おはようございます。念のためと思いましてお知らせしようかと思いましたが、さすがのご対応でございますな」
「おはよ。ちょっと気になってさ。何事か分かる?」
「いえ。分かりますのは多くの方が行政府に集まっているということぐらいでして」
なるほど、分からん。やけに大勢の人間が動いてるってことぐらいか。朝っぱらから何事やらねぇ。
「分かった。ちょっと出てくるからアレクとスティード君を頼むね。ちなみに今日はマーリンは?」
「マーリンさんは昼前に来られるご予定となっております。旦那様方に昼食を作るんだと張り切っておられました」
ふふ、マーリンの出勤はフレックスか? ということは昼までに帰ってこないといけないな。スティード君が起きたらすぐ王都に向かうとしよう。
屋敷の外に出てみると確かにあちこちで人の移動があるようだ。ここは貴族街だってのに朝っぱらから何事なんだろ? 比較的若い者が多いってことは……みんな騎士か? ちょっと聞いてみようか。
「おはよー。朝からみんなでどこに向かってるんだい?」
「ん? あぁ、おはよ……えっ、魔王様!?」
さすが若い貴族だけあって一発で気づいてくれたね。装備のおかげだろうか。
「うん。その通り。朝から行政府に集合だって? もしかして騎士団は全員集合?」
その割にみんな軽装なんだよね。制服ですらない。というかむしろラフと言っていいレベルじゃん。
「あ、あぁ、その通りです。実は昨夜急遽号令がかかりまして、領都の守備を残して全軍が出征することとなりました」
「え、出征? どこか攻めるの?」
マジで?
「あっ、いえ、言い方が悪かったです。ただの出動です。ちょっとカッコつけてしまいました。魔王様の御前なもので……あは、はは」
はは、私はそんな偉い人間じゃないってのに。でも若者らしくていいね。二十代前半と見た。私も愛想笑いぐらいしておこう。
「あはは、そんなこともあるんだね。で、全軍でどこに出動?」
「ノード川の工事です。何でも人数と力が必要な場面らしくてですね。冒険者にまで招集がかかっているそうです」
へー。橋の工事にねぇ。そんな人数が要るような工事もあるんだね。魔法部隊がいれば解決しそうなもんだが。
「そうなんだね。わざわざありがと。時間取らせたね。じゃ、がんばってね。」
「はっ。こちらこそ魔王様にお声掛けいただき光栄です。行って参ります」
びしっとしてるなぁ。ここら辺の住人ってことは絶対ただの騎士じゃないよね。そこそこ高位の貴族だろうによく私にそこまで遜れるなぁ。タメ口でいいのに。悪い気はしないけどね。
それにしても冒険者まで招集するとか、辺境伯のおっさんたら本気だな。でもしまったなぁ。ギルドに顔を出しておけば気づけたってことだよな。そりゃまあ、そんな暇はなかったわけだが……
どんなことするんだろうなぁ。少し興味はあるけど今日は時間ないしね。つーか月末まで時間ないのか。久々に仕事するって気分になってくるなぁ。勲章の年金だってあるから贅沢しなければ働かずに暮らせるけどさぁ。でもさすがにそれじゃあ面白くないよね。アレクにドレスだって作りたいし。どっさりとさ。
よし、戻ろう。戻ってスティード君を起こして王都に行くぜ。
さて、スティード君とアレクを乗せてミスリルボードは南へ。ペースはゆっくりめ。しばらくスティード君と会えなくなるわけだしね。
ちなみに今の話題は先程の件。領都の騎士が土木工事をするのって最近は珍しいみたいなんだよね。
「さすが辺境伯ね。たぶんその動員は月末のパーティーまでかかるわよ。」
おお? さすがはアレク。辺境伯の狙いが分かるんだね。
「月末まで……あっ、僕も分かった!」
なん……だと……? スティード君まで? ぐぬぬぬ……
月末……パーティーまで……
ぐぬぬぅ……分からん!




