339、さし飲み希望
店のチョイスはスティード君任せ。私とアレクは風任せ。本日コーちゃん村長任せ。あとスサイエはリゼット任せ。今後の打ち合わせとかするらしい。
ふふ、もう酔ったかな?
あ、スサイエといえば、あいつちゃっかり上手くやったよなぁ。前払いで一発金貨二百枚とかさ。アルケミアル工房でそれなりに働いてたんだから貯金がゼロなわけないだろうに。昨日の昼だって『金貨二百枚貯まる見込みが……』とか言ってたし。その反面、長男派を強請りつつリゼットから金を引き出すことを考えてたってことは、短期間で真っ当には稼げない額が足りない……てことは少なくとも金貨百枚は持ってんじゃない?
私が気づいてるぐらいだからリゼットも当然気づいてるよね。まあ何にしても上手くやったもんだ。私の口利きも込みかな?
「カース君! ここ! 次ここにしよう! エールが美味しいらしいよ!」
「いいね! 行こう行こう。」
スティード君も張り切ってるね。来月になったらそうそう遊べなくなるもんね。就職って嫌だねぇ。でも近衞騎士って国中の若者の憧れだもんね。私としても親友がそんな身分になるなんて誇らしいのは間違いない。五年で辞めるなんてもったいない気もするなぁ。スティード君なら近衞騎士団長も目指せるんじゃない? あ、それだとウリエン兄上とかち合うんだろうか? 悩ましいね。
ふぅー。何軒目だっけ? 一軒あたり数杯しか飲んでないはずだけど、さすがにお腹がたぷたぷしてきちゃったな。辺りはもうすっかり暗いし、そろそろお開きかな? アレクだってそろそろ限界っぽいしね。
「ねえねえスティード君、締めはまたうちで飲もうよ。今度は食堂じゃなくって部屋でじっくりとさ。」
「それもいいね! カース君ちなら稽古だってできるもんね!」
やっぱ酔ってんなぁ。でもスティード君はこうじゃないとね。ちなみに通りでも店でもスティード君は剣を抜いてない。稽古しようと言ってくることもなかった。当たり前なのだろうか?
「アレク、歩ける? だめならおんぶするよ。」
「歩けるわ! でもして! お姫様のようにぎゅっと抱っこして!」
ここから家まで歩いて二、三十分……やってやるぜ!
「もちろんいいよ。アレクは羽のように軽いもんね。」
そもそもアレクはお姫様そのものなのでどう抱っこしようが必ずお姫様抱っこになってしまうな。
「そうなのー? アレックスちゃん身長は百六十五センチぐらいだよね。体重は五十五キロムってとこかな? 確かに軽そうだね!」
やっぱスティード君酔ってんなぁ。
「うふふー知らなーい! 最近計ってないもーん!」
私もだよ。身長はともかく体重って計量の魔道具で計るのが一般的だからなぁ。治療院とかに行かないと置いてないんだよね。そもそも自分の体重に興味がある王国民ってあんまりいないしさ。
もっとも、アレクの場合は『計量』の魔法があるから行く必要はないんだけどさ。
おっと、持った感じも五十キロムは超えてるかな。六十はなさそうだ。スティード君やるなぁ。相手の身長体重を見抜くのも強さのうちってことだね。
お帰りなさいませ。お風呂などいかがなされますか?」
到着。ダムートンが玄関でお出迎えだ。老練執事って雰囲気がビシバシだね。
「ただいま。あー、それいいな。ねえスティード君、お風呂で飲まない? 歩き回って汗もかいたしさ。」
「それいいね! そうしようそうしよう!」
これだけ酔った状態で風呂。しかもさらに飲むなんてね。私達なら問題ないからいいけどね。
「私はやめておくわ。だからカース、先に寝室に連れてってくれる?」
「分かったよ。じゃあスティード君、先に行ってて。ダムートンは浴室に冷たいお酒を運んでおいてくれるかい? エールがいいな。」
「分かった。先に入ってるね。」
「かしこまりました。ちょうど先日ダミアン様がお持ちになられたエールがございますので」
ほう。ダミアンめ、いいとこあるじゃないか。でも先日ってたぶん一ヶ月以上前だよな? まぁうちには性能のいい魔蔵庫があるから問題ないけどね。その代わりそこそこ魔石を食うんだったかな。
ダムートンだってそれなりに魔力あるし、いい感じに冷やしてくれるよね。
ふぅ。寝室に到着。あー重かっ、いやそんなことはない! 途中でこっそり身体強化を使ったなんてこともない!
アレクをベッドにゆっくりと降ろす。
「ふふ、カースありがとう。素敵な時間だったわ。」
私の首に回した手を離さずに、耳元で囁かれた。なんとも小悪魔な囁きだねぇ。
「ねぇ……行っちゃやだ……」
おうふ、これは破壊力がすごい……
スティード君が待ってるの知ってるくせに悪い子だなぁ。でももちろん行かないとも。急がず慌てずゆっくりじっくり楽しもうじゃないか。ごめんねスティード君……
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