336、ダミアンの懸念
さて、わいわいとしたムードだけど一応確認だけしておこうかな。
「なあダミアン。ここから先はもう俺らがいなくても大丈夫か?」
一週間かかると見てた今回の件がわずか二日で終わったから時間の余裕はあるんだけどね。
「おう。後はもう俺らだけで何とかなる……と言いたいところなんだがよ?」
「ん? まだ何かやばそうな事でもあるのか?」
「有り得ないとも言い切れないことなんだがよ。兄貴がとち狂っちまった場合だな?」
ん? なんだそれ?
「どういうことだ?」
「正直兄貴にゃあもう上がり目はねぇ。この先待ってんのは良くて部屋住み、悪けりゃ粛清だ。小さな頃から跡取り候補として生きてきた男がだぜ? そうなっちまったら後先考えずに動いてもおかしかぁねーだろ?」
一理どころか三理はあるな。
「そうだな。ちなみに何してくると思う?」
「俺が一番やって欲しくねぇことは、騎士団を動かすことだな。今なら兄貴でも数百騎は動かせるからなぁ。それで力押しで俺やリゼット、そしてカールスを狙われるってのは参るぜ?」
跡取り候補ナンバーワンだった男がやることじゃねぇ……でも追い詰められたらやってもおかしくないわな。
「ちなみにバーンズさん達を動かすことはできるか?」
「いや、無理だ。あっちはあっちでバーンズやら五等星連中がいなくなるとやべぇ。ありゃあ確か三ヶ月前だったか、ついに出やがったんだよ……サウザンドミヅチがよ?」
「げっ……大丈夫だったのか?」
強力な再生能力と強靭な皮膚を持つ、ドラゴンにも匹敵する魔物サウザンドミヅチ。土中深くで眠り続け、五十年から百年に一度目覚めては大暴れするんだったよな。王都で剣聖ヘイライト・モースフラット先生が退治したことでも有名だっけ。ちなみに私は超高温で蒸し殺しにしてやったよね。あれはいつのことだっけな……初等学校五年ぐらいか?
「ああ。そん時はバーンズだけじゃねぇ、エロイーズとゴモリエールの三人がかりで矢面に立ってよぉ? どうにか仕留めることができたぜ。あの三人がいなかったらも思うとゾッとすんぜ?」
「おぉ……サウザンドミヅチだもんなぁ。人数だけいても餌になるだけだわなぁ。」
さすがにクタナツの五等星トリオは違うな。爆炎バーンズ、双鞭エロイーズ、双拳エロイーズか。あれだけの人間を手配できたダミアンの勝利だな。
「もちろんやべーのはサウザンドミヅチだけじゃねーしな。さすがにドラゴンが来たことはねぇけどワイバーンなんか時々来るんだぜ? 数匹ぐれーなら問題ねぇんだが、たまに百匹単位で来やがるしよぉ……つーわけであっちの戦力を減らすわけにゃあいかねーってこった。」
「なるほどな……」
さすがにムリーマ山脈は甘くないよなぁ。魔物どもだってあそこに人間がたくさんいるって分かっちまってるだろうし。トンネル工事も楽じゃないね。
で、差し当たっての問題はダミアンか。ドストエフが後先考えず騎士団を動かすとやばいってことか。ダミアンだってある程度は動かせるだろうけど、まだドストエフの方が多いんだろうなぁ。領都の兵士を私物化すんじゃねーよ……まったく。
「それからなぁ……こっちも万が一の話だけどモーガン爺が動いたらやべぇ。あのジジイあれで兄貴派だからよ。だからって俺を直接狙うような無茶はしねぇとは思う、思うんだけどよぉ……」
「げっ……もしモーガンさんが動いたら魔法部隊まで動いたりするのか?」
「いや、それはねぇ。魔法部隊は完全に親父殿の直属だからな。つーかあいつらはノード川の橋工事があるしよ? さすがにそれどころじゃねーんだよ。」
おお、それがあったな。それに辺境伯本人もそっちにかかりっきりなんだったか。
「お前の読みだといつまで守りきれば決着が付くんだ?」
「そう遠かねぇぜ。今月末にでけぇパーティーがあってな。もちろん親父殿も兄貴も出席するぜ? そこにデルヌモンやラルゴを連れてって兄貴に引導渡してやるまでだな。さすがの兄貴も親父殿の前で暴れるわけにゃあいかねぇからよ。真っ当に追い詰めてやんぜ?」
「なるほどな……分かった。ならそれまで俺が守ってやるよ。スティード君はそろそろ王都に戻らないといけないし、俺もアレクもソルダーヌちゃんの結婚式に出席するからさ。三月末ならギリギリだな。」
やれやれ。慌ただしいなぁ。
えーっと、今日は三月二十六日だっけ? で、パーティーが月末三十日か。それまでにスティード君を王都に送っていかないとまずいな。明日か明後日だろうなぁ。スティード君の初出仕が四月一日だから。少しは休んでもらわないと……
「いいんかよ? 俺ぁ助かるけどよ?」
「仕方ないだろ。騎士団はともかく、もしモーガンさんが襲ってきた日にはあっさり全滅するだろ?」
「あー、違ぇねー。頼りにしてんぜ?」
「くくく、ダミアン殿よ。そなたはつくづく良い友を持ったのぉ。カース殿がそなたを守るということは必然的に儂もその場におることになる。堅牢無比ということになるかのぉ?」
マジかよ村長。そう言ってくれるとは助かるぜ。遊びに来たはずなのに悪いねぇ。コーちゃんにカムイもいるから大丈夫とは思うけどさ。でもかなり頼もしいじゃないか。
「いいんかよフェリクスぅ? そりゃ無敵すぎんぜ。ありがとよ! ほれもっと飲め飲め!」
「いただこう。モーガンと言ったか。なかなかの使い手らしいの。くくく、面白くなってきたのぉ?」
あら? もしかして村長ったら腕を振るいたかったりする? 別にバトル好きってタイプじゃないと思ってたけど……
モーガンは宮廷魔導士クラスだからなぁ。村長でも少しは手こずるんじゃないだろうか。まぁ、来る可能性はかなり低いんだろうけど。それに、もし来るなら……必勝必殺の態勢で来そうな気がするんだよね。
まったく……ドストエフが贋金に関わってたら報いをくれてやるとか言ってたくせにさー。どうなることやら……




