332、集う役者
「やあリゼットお帰り。例の件を報告しようと思って立ち寄ったらとんでもないことになってるぞ。色々と話すことはあるけど、先にあの二人を安置してやってくれ。」
いつまでも外に置きっぱなしってのは可哀想だろ。
「えっ、カース様!? 安置と言いますと……スザンナ! タチアナ! なんてこと……」
リゼットは従業員の名前をちゃんと覚えてるタイプか。やるなぁ。私は無理だ……
「魔王様、ただいま戻りました。それから……」
「ようカース。ちっと久しぶりか? どうなってんだこりゃあ?」
「血の匂いがするねぇ。さすがボスだねぇ?」
副長が戻ってきたと思ったらダミアンとラグナも一緒か。オールスターじゃん。いやダミアンもラグナも全然スターなんかじゃないけどさ。
「まとめて説明するわ。腹もへったし食べながらがいいな。こいつからきっちり話も聞かないといけないしな。」
「あぁん? お前デルヌモン、こんなとこで何してんだぁ?」
「くっ……ラルゴの身柄を取り返しにきたんだよ……そしたら魔王がいて……この様さ……」
契約魔法が効いてるから正直に喋っちゃうわな。
「ラルゴの身柄? だーめだ。全然意味分かんねー。おう、カースの言う通りだ。今夜はここで盛大にやるつもりだったんだしよ。酒の肴にデルヌモンの話でも聞くとするかぁ。なぁ?」
「そうだねぇ。散々舐めた真似ぇしてくれたみたいだしぃ? 本来ならこの『四つ斬りラグナ』姐さんが思い知らせてあげるとこだけどねぇ?」
さすがにダミアンは話が早いな。ラグナは証拠なんかなくてもデルヌモンを斬り捨てそうだし。まあ、私もどうにもならなければそうする気だったけどさ。
「魔王様、できればあの五人だけでも連行したいのですが……」
そいつらもいたね。実行犯が。
「いいよ。取り調べ後は奴隷として売っ払うだろうから代金はマイコレイジ商会に届けてくれるかい?」
「かしこまりました。よし、行くぞ!」
「はっ!」
「はっ!」
三人の騎士はてきぱきとあの五人を拘束して連れていった。ラルゴの依頼なんか受けたばっかりに人生終わっちゃったねぇ。上手くいけば白金貨使い放題の財布が手に入るところだったんだから悪い賭けじゃなかったんだけどさ。ちょっと大穴狙いが過ぎたようだねぇ?
つーかラルゴの狙いが全然読めない。マジでなぜわざわざこんなことを……
「カース様、この度はありがとうございました。だいたいの事情は聞きました。カース様はいつも私を助けてくださるんですね……本当に……」
「いや、大したことはできなかった。すまんな。もう少し早く来てたらあの二人も助かったと思うと……」
もちろん本音。二人で食い止めたんだから上出来だろ、とはさすがに思ってない。まぁ、二人で済んでまだよかったかな、とは思ってるけどさ。
「カース様……ありがとうございます……あの二人は、いえ、あの二人だけでなく他にも五人ほどいるのですが……皆カース様の楽園に行くことを希望していた者なんです。辛い境遇から逃れて、どこか遠くでやり直したいと……それなのに……」
「そうだったのか……」
なるほどね。やけに若い女の子が多いと思ったらそういうことか。楽園行き希望者を集めておいて、私が運ぶまでの間はここで働くってわけか。合理的だね。つーかここで働けるならわざわざあんな北の果てまで行かなくてもいいのに。リゼットなら大事に守ってくれるだろうになぁ。
「それを、それを……あんなクズのせいで!」
「おっと待てよ。まだ殺すなよ? 一応あれこれ吐いてもらわないといけないからな。」
だって胸元に手を入れてんだもん。今にもナイフか何か取り出しそうな顔してるし。
「分かって、おります……でも、私が甘い対応をしたばっかりに……あの時殺していれば……」
何回か店の金を盗んだとか言ってたもんなぁ。甘い顔してきちゃったんだろうね。私も他人事じゃないから気をつけないとなぁ……
「リゼットのせいじゃないさ。クズはいつまで経ってもクズなんだからさ。それに今回の件であいつの人生は終わりだしな。せいぜい死ぬまで鉱山で働いてもらおうぜ。」
「そうですね……あっさり殺すより、きっとその方が……」
どうでもいいけどリゼットはいつの間にやら私に抱きついてるんだよね。子持ちの人妻なんだから少しは自重すればいいのに。私もアレクもそのぐらい気にしないからいいと言えばいいんだけどさぁ……
「おうリゼット、行くぜ。今できることをしようぜ?」
「はい。そうですね! いつまでもくよくよしてたらカース様に笑われますもんね!」
いや、別に笑わないけど。でも切り替えが早いのはいいことだね。
そういやさっきダミアンが、今夜は盛大にやるって言ってたな。何かイベントでもあるのか?
「やあカース君。戻ってきたんだね。どうも大変なことになってたみたいだね。僕はこっちを守るべきだったのかな……」
おお、スティード君も。これならオールスターで間違いないな。
「なかなかそう上手くはいかないよね。リゼットが無事なんだからスティード君はよくやったんだと思うよ。」
ラルゴの野郎はここにリゼットがいないのを知って襲わせたのか、それともいないから襲わせたのか。実はそんなことすら考えてなかったって線もあるな。でも狙いは人質ってことは、いなくてもいい、ぐらいの考えだったのかな?
まあいい。今からじっくり聞き出してやるとするさ。もう勝ちは決まったんだからな。




