331、勝ち確
悪いな。スティード君みたいな化け物を相手にしてきた私だぜ? よほどの不意打ちでもない限りお前程度の剣なんて余裕で見切れるんだよ。
確かに一瞬で何度も切り返しできるのはすごいぜ? すごいけど……
「また、無傷だと……?」
「お前、人間とか魔物とか斬ったことないだろ。間合いが空きすぎだぞ?」
いわゆる道場剣術ってやつかな。左右に幅広く攻撃するのはいいけどさぁ、間合いが空いてるせいで見やすいんだよな。あれがもう一歩半ほど近ければ一気に見切りにくくなるんだろうけど。
でもねぇ……
「くっ、なめるな!」
『烈怒乱舞』
おぉー、赤い閃光が縦横無尽って感じ? でもさぁ、まだ遠いんだって。もっと近寄れ、おっと。
「ぐぼぉお……」
うかつに近寄るとそうなるんだよ。こっちは棍なんだからさ。腹にめり込んではいるけど穴は空いてないだろ。
「まだやるか?」
「あっ、当たり前、ぐぶっおぉ……」
同じところをもう一回突いた。やはりまだ穴は空いてない。
「まだやるか?」
「やっ、やめ、やめろっごぉおぉ……」
「まだやるか?」
「やめっ、やめってくれげぉぉごごぉ……」
腹の同じポイントを四回ほど突いてやった。我ながら狙いが正確だわ。
「やめてもいいけどちゃんと吐けよ?」
「わかっ、がぼぉおお……」
五回目。腹に穴は空いてないけど口から血を吐いてるね。こいつ魔力高いんだから剣なんか使わないで魔法を撃ってくればよかったのにね。まあ、だから私は剣を叩き折ってやるって挑発したんだけどさ。
「約束しろよ? 正直に答えるってな?」
「わ、わかっ、たっごぼぁああるぁあ……」
かかった。ついにやったぜ。こいつの口からなら、さぞかし核心に迫る情報が出てきそうだな。
「アルケミアル工房の職人にマイコレイジ商会の偽印作りを依頼したのはお前だな?」
「そ、ぐっ、ううぅ……そ、そうだ……」
おぉー。魔力が高いだけあって契約魔法にも抵抗するじゃん。
「その偽印まだ持ってるか?」
「あ、ぐぐぉ……ある……」
勝った。これなら間違いなく勝てるだろ。
「出しな。」
嫌だと言っても村長が何とかしちゃうけど。
「ぐ、うぉおっ……こ、れ……」
「よし。どれどれ……」
『火槍』
私の視線を片方の手に誘導しつつ、もう片方の手から貫通力のある魔法かよ。でも魔力を練ったらバレバレだっつーの。だから敢えて避けなかった。だって避けたら建物に穴が空いたあげく火事になるじゃん。あれが無防備な人間に当たると五、六人の腹ぐらい余裕で貫くだろうし。
「こいつが偽印だな。没収しとくぜ。」
「こ、これも効かないのか……」
「顔にくらったら危なかったかもな。」
嘘だけど。どっちにしても自動防御を張ってるから無傷だよ。
「それより偽印は一つだけか? 二つ作ったんだろ?」
「わ、私が持ってるのは、それだけだ……」
「もう一つは?」
「ぐ、あ、ど、ドストエフ兄上が持っている……」
一つずつか。共犯の証拠をそれぞれが持って罪を分け合う的なやつか?
それよりもこの偽印は……
『顕微』
なるほどね。
「偽証文に押したのはどっちが持ってる方だ?」
「あ、ぐぐ、兄上だ……」
こいつまだ抵抗しようとしてやがる。しぶといなぁ。
だが、勝ちは決まったな。今持ってるこの偽印はスサイエが作った方だ。四隅に小さく『ラ』『ル』『ゴ』が見えたからな。つーかスサイエこんな小さい文字をよく彫れたもんだな。肉眼じゃ絶対見えないだろ。
つまり、偽証文に押された方はマルテア製の偽印だ。そっちの方ならマルテアから借りた魔道具で証明できる。長かったぜ……これで勝てる確率百パーセントだな。
この際だからあれこれ聞いておきたいが……もう暗くなっちゃったしなぁ。腹もへってきたし、お開きにしたい気分ではあるが……そうはいかないね。
勝ちが決まった以上はとことんやっておかないとなぁ。
「ラルゴがここを襲ったのはお前かドストエフの指示か?」
「違う! そんな指示など出すはずがない!」
だろうね。勝ちは目前だったんだからさ。わざわざ危ない橋を渡るわけがない。
てことは、ラルゴの独断ってことになるな。やっぱあいつ頭が悪すぎだろ。
そういや、さっきまでやかましかったけど今は静かじゃん? あ、寝てる。というかアレクが眠らせたのかな。邪魔だったもんなぁ。
「こ、これは何事ですか!」
おっ、これはタイムリー。リゼットが帰ってきた。役者が揃ってきたねぇ。




