330、心は乱れても剣は乱れない
十数人の騎士が一斉に突撃してくる。私の方だけでなく、仲間であるはずの副長のところにまで。
『榴弾』
だが、悪いな。まとめてやらせてもらうぜ? 下半身を狙いはしたけど、死んだらごめーんね。
「ぐうぅ……」
「くっ、うう……」
「なんの……」
ほう、やるねぇ。立ち止まりこそしたけど誰も倒れてない。それどころか剣を投げたり魔法を撃ってきたりするではないか。もちろん効かないけど。
『狙撃』
それに、動きが止まった以上もう終わりだ。全員の大腿部に穴を空けてやるよ。いくらフルプレート鎧でも今の私のライフル弾の前には紙のようなもんだ。ヒイズルに行ったり南の大陸に行ったりで威速度も威力もかなり上がってるからね。たぶん本物のライフル弾以上じゃないだろうか。
「まだやる気か? 分かってると思うがお前が無傷なのは偶然じゃないからな。偽印まで作ってマイコレイジ商会を乗っ取ろうとしたことを認めるなら無傷のまま帰してやる。それとも、とことんやるか?」
他の騎士たちは意識ある限り抵抗をしたいようだが、副長たち三人に拘束されつつある。早く治療院に連れてってあげなよ。
「こっ、この若僧が……連綿と続く偉大なる辺境伯家の歴史も知らぬくせに……よ、よくも……」
連綿と続くって言われてもなぁ。たかだか二百年だろ? それはそれですごいけど……じゃあ王家はもっとすごいね! って話にならないか? もちろん『たかだか』なんて口には出せないけどね。
それにさぁ……
「お前が無傷な理由は俺が辺境伯閣下に一定の敬意を持ってるからなんだが? でなきゃお前なんかとっくに殺してるぞ?」
あとダミアンの弟ってこともあるしね。
「魔王様! こやつらに情けをかけていただいたこと、感謝いたします!」
おっ、副長さんか。拘束し終わったんだね。
「ついでだから治療院まで運んであげるといいけど、外はまだちょっと明るいかな。まぁ、副長に任せるよ。」
「ありがとうございます!」
おや、魔力庫から取り出したのは……鉄パイプが二本? 三メイルはあるじゃん。その上に板を敷いて……怪我した騎士を横向きにどんどん乗せてる。
ほぉー、無理やりだけど十数人が全部乗ったじゃないか。これ下敷きになってる者は少しきついかもね。
『浮身』
担架のように前後を一人ずつが持って、副長は浮身担当ってわけね。
「それでは魔王様、一旦失礼します。こやつらを治療院に運んだ後に再び戻ってきますので」
「分かったよ。じゃ、後でね。」
「はっ! 失礼します!」
うーん手際いいね。騎士団の名誉より仲間の命を優先するなんていいとこもあるじゃん。いくらここから治療院までまあまあ近いとはいえさ。
「今のどさくさで逃げなかったのは褒めてやる。で、どうするんだ? さっさと吐いちまえよ。」
実は足がすくんで動けなかっただけじゃないだろうな?
「なっ、なぜだ! なぜダミアンなんかの味方をする! あのようないいかげんな男が広大なフランティアを背負えるものか!」
こいつ論点逸らすのが好きだなぁ……
「それを言ったら贋金に手を出したり偽印作って借用書を偽造するようなセコい奴にフランティアは背負えないと思うが……」
「そのようなことするはずがない! 先ほどから妄言ばかりべらべらと!」
『嘘の匂いが強くなってきておる。心が乱れておるわえ』
さすが村長、油断も隙もないね。
「自分の口から言えないんなら勝手に心を読ませてもらうぞ? あと魔力庫から勝手に偽印も抜くからな。構わんよな?」
「ふっ、ふざけるな! そのようなことができるとでも!」
「モーガンさんはできるらしいじゃん。俺だってできる人を四、五人知ってるし。そのついでに魔力庫の中身全部抜いちまうかも知れんなぁ。いいよな?」
他の悪事の証拠とか出てこないかな?
『烈火乱閃』
おっと、ついに剣を抜きやがった。抜くだけじゃなくて斬ってきたし。なかなか鋭い剣筋じゃん。一瞬で五回ぐらい斬ったんじゃない? 真っ赤な閃光がスパーっと走ったぞ。
「ようやく抜いたな。まあまあいい腕してんじゃん。」
「無傷……だと……!?」
もちろん自動防御を張ってるもん。ここからは体表密着型の方に切り替えるけどね。無敵の棍『不動』でお相手するからさ。
「ところでお前、今も魔力庫に偽印入れてんのか?」
「知らぬと言っているだろう!」
『嘘だの。おそらく持っておるぞえ』
ようやく読めたのね。ならば後は適当に気絶でもさせて村長に丸投げだな。辺境伯の息子だから気を遣うよなぁ。一定の敬意を持ってるってマジだからね。それに苦労人って応援したくなるし。
「来いよ。その剣叩き折ってやるからよ。」
『烈怒一閃」
斬るとなると容赦も躊躇もしないのね。その切り替えは褒めてやろう。
でもねぇ……




