328、タイミングのいい乱入者
「副長さん、聞いたな。ドストエフったら借用書の偽造なんてことしたんだってさ。では、もう少し詳しく聞いていこうか。」
「い、一体何を……」
ふふふ。さすがの騎士もいきなりじゃあ理解ができないよな。領都の大店で暴れてるチンピラを捕まえに来たら自分とこの主筋の犯罪を聞かされたんだから。
「マイコレイジ商会を乗っ取る計画は誰から持ち込まれたんだ?」
「ぐっ、うぐぅおぉ……で、デルヌモン様から……」
おっと。ここでようやく五男の登場か。やっぱあいつ長男派だったんだな。
「もう少し詳しく話せ。いつどこでデルヌモンと出会ったのか、からだ。」
「は、半年前ぐらいに、サヌミチアニで……」
ほーう。ここ最近って何かあれば全部サヌミチアニってパターン多くない? あそこは冒険者の質が悪いし未だに貧民街がたくさんあるイメージなんだよな。
代官は辺境伯四男のドニデニスだったよな。真面目に統治してるって聞いたけど、それでも全然追いつかないってことか。
「つーかお前、商会の金持って逃げたって聞いたけどサヌミチアニにいたのか。なんでフランティア領内にいるんだよ。」
「あちこち転々としたけど、最近のフランティアは景気がいいってどこでも聞くから……」
あちこち転々ねぇ。どうせあちこちでやらかして居場所が失くなっただけだろ。まあ、そこら辺はどうでもいいや。
「お前はドストエフの口から偽の証文の話を聞いたか?」
「あ、ああ……一蓮托生だって。一緒にフランティアを支配しようってな! そうだよぉ! この俺によくもやったな! ぜってえドストエフ様に言ってやるからなぁ!」
『落雷』
「あばばばばばば……」
正直過ぎるのも考えものだね。思ったことは口に出さずにはいられないってわけか。なんて堪え性のない野郎だ……
「つまり証文を用意したのはドストエフだな? お前はそこに名前を書き、偽の商会印を押した。その商会印を用意したのもドストエフか?」
「あばば……あぁ……ドストエフ様が用意したようだ。商会印はデルヌモン様が持っていた……」
おやおや。五男は五男で大活躍してんじゃん。動きが見えないってリゼットが言ってたけど、領都の外で暗躍してたのかもね。
渡りの職人二人に依頼したのってもしかして五男の奴って可能性もあるしね。
「その偽印はまだデルヌモンが持っているのか?」
「た、たぶん……」
ふーむ。まだ弱いなぁ。もう勝ち確定と言いたいところだが、物的証拠がないもんなぁ。今回の偽証文に関しては問題ないとしても、長男ドストエフを追い詰めるにはまだ弱いか。
「なんだ? どうしたんだお前達?」
副長が何か言ってると思ったら騎士がぞろぞろ入ってきた。後はもう連行するだけなんだからそんな人数いらないぞ?
「デルヌモン様ぁ! たっ、助けてください! ちょっと冒険者を使って商会を乗っ取ろうとしただけなのに! 指を凍らされたんです! あとこいつドストエフ様とデルヌモン様のこと呼び捨てにしてましたぁぁ!」
ラルゴがまた元気になりやがった。デルヌモンだと? 五男野郎がまたしゃしゃり出てきやがったか。
「やあ魔王君。いつも君とは妙な場所で会うものだね」
「全然妙じゃないな。俺はここのお得意様だからさ。あんたこそ領都の貧民街だけじゃなくこんな大店まで顔を出すとは忙しいな?」
「てっ、てめえ! 平民の分際でデルヌモン様に対等な口利いてんじゃねーぞ!」
『フェリクス、こいつの心を読めるか試してみて』
『やるだけはやってみるがの』
さすがに辺境伯の五男だからなぁ。そこらの人間より魔力がだいぶ高いんだもん。
「では彼らの身柄は預かるよ。きっちり取り調べをしたいからね」
「だめに決まってんだろ。まだ尋問の途中なんだからな。それよりお前、マイコレイジ商会の偽印を作ったろ。いや、作らせたの間違いか。アレクサンドリアのアルケミアル工房の職人に。しかもご丁寧に二つも作らさるとはなぁ。まだ持ってんのか?」
「何をわけの分からないことを言っているのやら。それより連行の邪魔をするというのは騎士団に逆らうということ。ひいては父である辺境伯に刃を向けることと同義だが、いいのかい?」
『すまぬ。やはり読めぬわ』
くっ、さすがの村長でも心を読むのは簡単じゃないよな。
「ほーう? さすがこんな役立たずを利用してマイコレイジ商会を乗っ取ろうとしたお方は言うことが違うな。あんなクズのどこに白金貨千枚貸すような価値があるのか勉強させて欲しいもんだ。」
「お喋りはここまでだ。渡さないと言うなら実力行使といこう。総員、抜剣!」
あーあ、抜きやがった。
「なあ副長。これいいのか? 抜いたからには俺としてはお相手するしかないんだが。」
「あっ、あぁ……で、デルヌモン様! お気を確かに! この場は第一騎士団副長である私の管轄です! 横入りは無用に願います!」
「誰だ貴様? この僕に意見するとはさぞかしお偉い方のようだな?」
「うっ……」
副長も辛いねぇ。だからって私は手加減なんかしないぞ。巻き込まれる騎士さんには悪いけどね。
「やっちまってくださいデルヌモン様ぁ! ぎゃはははぁ! なぁにが魔王だオラぁ! 調子ん乗ってんじゃねーぞぉ!」
「あ。あの声そういえば……」
おっ? スサイエがぼそりとつぶやいたぞ? 聞き覚えでもあったか?




