322、手際の良いチンピラ
『狙撃』
「うっ、くっ……」
そりゃそうだよ。いくら麻痺から距離を取れたからってそこらのチンピラが十メイル程度の距離でライフル弾なんて避けられるかよ。大腿部、両脚とも穴を空けてやった。
カムイ、建物に入って怪しい奴らがいたら引きずり出してきな。面倒なら足首を噛み切っても構わんから。できれば殺さないでね。
「ガウガウ」
果たして何人が入り込んでるのやら。
「で、お前は何者だ?」
「くそが……言うと思うのかい……」
おーおー。さっきまでの緊張した声とは大違いだねぇ。見事な演技だったぜ?
「別に喋らなくてもいいけど俺のこと知らないの?」
「誰があんたなんか知っ……まさか、魔王……なのかい!?」
おや珍しい。なかなか鋭いじゃん。
「正解。依頼人から聞いてないのか? 俺はここのお得意様だぜ?
「そ、そんな……」
マジで知らなかったようだな。つーか何者だよ。わざわざこんな妙な時間に襲うって意味分からんな。普通もっと夜遅くだろ。
「で、どうする? 千杭刺しとかどうよ。体験してみたいだろ? 貴重な経験だと思うぜ?」
「ひっ、せ、千杭っ!?」
「返事がねえな? 喋るのか喋らないのかはっきりしろ。」
『氷槍』
股の間にずぶりとね。はしたなく大股広げて座り込んでるからだよ。
「ひっ、ひいいいい! しゃ、喋る! 喋りますっ!」
「約束だぜ? そしたら命は勘弁してやるからよ。」
「はっ、はいぃいいいいっんぎっ、んんっあぁぁっっ……」
よしオッケー。素直でいいねぇ。
「さて、目的は? 何人で来た?」
「こ、ここの従業員を人質に取ること、ご、五人で……」
人質?
「人質なんて取ってどうするんだ?」
「わっ、分かりません! 制圧して全員を地下に閉じ込めたら連絡する手筈で……」
「連絡? どこにどうやって?」
「そ、それは、フォークって奴が知ってます!」
「依頼主は誰だ?」
「そ、それもフォークが……」
面倒くせぇなー。でもカムイに殺していいって言わなくてよかったわ。危ないとこだったな。
それにしてもたった五人でここを制圧するとは、なかなかやるじゃん。ここって凄腕の護衛こそいないだろうけど、人数はそこそこ多いし護衛だって少しはいるだろうに。
「なぜこの時間なんだ?」
「中の人間が帰る前にって……人質は多いほどいいからって……」
そうなの? 多すぎても大変なだけって気がするけど……あ、まさか……
「何人か……殺したのか?」
「いっ、いやっ! わ、私は一人しか!」
こいつ……
『微毒』
『麻痺』
「げごぅごぉおおおおおっお……」
殺してやろうかと思ったけど、こんな奴でも情報源だからな。吐きたくても吐けない地獄でも味わってろ。クソったれが!
『カムイ! 何人か仕止めたか!?』
ふむふむ。とりあえず二人か。足首を両方とも噛み切ったのね。さすがだよ。
残り二人。
おっと、いきなり壁がぶっ壊れて人間が飛んできた。カムイの頭突きでもくらったか?
『麻痺』
これで四人目。
残るは一人。
たぶんカムイが先に見つけるだろうから、私は四人を集めておくとしよう。足首から下が失くなってようが口は無事なんだからな。
よし。集まった。全員庭に転がして麻痺と微毒をかけてやった。尋問は後でいいだろう。
それにしても、マイコレイジ商会の者を人質か。明らかにリゼット狙いじゃん。リゼットに何か言うことを聞かせたいんだろ。
しかし、なぜ今このタイミングで? もう四、五日もすれば支払い期限切れで合法的に全財産を奪えるってのに。それまで待てない事情でもできたか? 例えば、私が動いていることが知られたとか。
それにしても、この感じからするとリゼットは留守か。こいつらにしてみればリゼットがいればラッキーだけど、いなけりゃいないで構わないってとこか? どうせならいる時に来いってんだ。そうすりゃスティード君が皆殺しにしてくれただろうに。
『魔力探査』
さて、残り一人。怪しい魔力はどーこだ? まぁ、たぶん今頃もうカムイが見つけてるだろ。私は従業員のケアをしよう。まだ助かる者だっているかも知れないし。
『フェリクス、中に入ってきてくれる? 治癒をお願い』
『心得た』
『アレク、騎士団を呼んできてくれる? 賊は五人。制圧済み。従業員に被害ありで』
こちらは返事なし。アレクは伝言の受信はできても送信はできないからね。
では、従業員を探そう。魔力反応が弱いから目視で探した方が早いか?




