320、二人のラルゴ
「話をまとめさせてくれ……デルヌモンテ様に口を利いてくれる条件は俺達がウプーセ村まで引っ越すことか?」
おっと、私も説明不足だったな。なんせ思いついたことを言っただけなんだからさ。
「いや違う。引っ越しの件はお前らで話し合って決めたらいい。もしやるなら協力はする。口利きの件はお前の娘とスサイエの結婚が条件だ。」
だってアレクがこの二人を応援してやってくれって顔してんだもん。めっちゃ私に期待してる感じで。だったら多少のごり押しぐらいするさ。
「くっ……だがよお! 吹けば飛ぶような職人風情に俺の大事な娘え嫁がせるわけにゃあいかねえ! あん時も言ったよなあ!? 娘が欲しけりゃ金貨二百枚積んでみせろってなあ!」
あらら。そんな条件があったのか。早く言えよ。
「どうなんだスサイエ? おっと、もう面倒だからスサイエでいいだろ。」
「ああ、いい。金は……ない。本当なら今頃には貯まってるはずだったが……アルケミアル工房があの様で……」
あらまぁ。ツイてないなぁ。
「金策の当てとかないのか?」
金貨二百枚なんて真っ当に貯めようと思ったら何年かかることやら。つーかいくら村長の娘だからって平民女にその額は吹っかけすぎだろ。うちのマリーでさえ金貨百枚だったのにさぁ。
「ある。だから俺はラルゴって名乗ってんだ」
ん? どういうことだ?
「あるのか。じゃあもう解決か?」
「い、いや……それなんだが……俺を、フランティアの領都まで連れてってくれないか?」
んん? どういうことだ?
「それは別に構わんけどさぁ。お前この村に来たかったんじゃないのか?」
「それも含めて説明する。声が漏れないやつ、やってくれるか……」
贅沢な奴だなぁ。アレクやこっちの村長には聞こえる範囲でやるけどさ。
『消音』
「いいぞ。話してみな。」
「俺がラルゴと名乗って理由なんだが……実はマイコレイジ商会の現会長には兄がいる。その兄の名前がラルゴなんだ」
おや?
「ああ、それは知ってる。リゼットから聞いたから。てことはお前わざとその名前にしたって事だな。」
「なっ!? あの瞬腕リゼットを知っているのか!?」
知ってるに決まってんだろ。私達が道楽で偽印の証拠を集めてるとでも思ってたのか? つーかリゼットにも二つ名ってあるんだなぁ。初耳だわ。商人なのにすごいな。まるで凄腕の冒険者じゃん。
「まあそれはどうでもいいだろ。で、続きは?」
「あ、ああそうだな。例の偽印の依頼を受けた時、俺はピンと来たんだ。これは絶対あのラルゴだってな。どうせろくでもないことを企んでるんだろうってな…
「ほう、それから?」
「あいつを、強請るつもりだったんだ……マイコレイジ商会の規模からすれば俺の口を塞ぐ金なん端金だろう」
うわぁ……それは悪手だろ。即死コースじゃん……
「どう考えても上手くいくわけないだろ……殺されて終わりだと思うぞ?」
「いや、勝算はある……先にリゼット会長に話を通しておけば、きっと俺を守ってくれるはずだ」
「あー……それはそうかもな。」
てことは何だ? こいつリゼットにバラした上で兄貴側を強請ろうとしてんのか。それ兄貴側は口止め料払っても意味ないってことじゃん。完全に騙し取る気満々かよ。渡りの職人ってクズかよ。思春期の中学生みたいな頭の中身してるくせにさぁ。
まあリゼット側としては証拠が増えるのは悪くない。まだ勝ち目十割には届かないけどさ。
「で、どうだ? 連れてってくれるのか?」
「んー、まあいいだろ。でもさぁ、今回の件ってわざわざ兄貴側を強請らなくてもすっきり解決したらリゼットは金貨二百枚ぐらい喜んで払ってくれると思うぞ?」
下手にチョロチョロされると邪魔だしね。まあ逆に兄貴側の注意を分散できるかも知れないが。
「それも悪くないが打てる手は打っておきたい。でも魔王、あんたの邪魔になるのであればやるまい。どうだろうか?」
たかが強請りのくせにえらくカッコいいこと言うじゃないの。つまりどちらからも金をゲットしたいってわけだな。正直でよろしい。
「まあいいだろ。連れてってやるよ。お前の使い道はたぶんリゼットが考えるだろうよ。その通りに動けよ?」
「わ、分かった。よろしく頼む……」
結局ラルゴと名乗ってる理由はよく分からなかったが……もっと長期的な計画だったんだろうか? 兄貴が商会を乗っ取ってしばらく経った頃を狙うとかさ。まあどうでもいいや。
『消音解除』
「待たせたな村長。こいつたぶん金貨二百枚積むと思うぞ? だから心の準備だけはしておいた方がいいだろうよ。」
「んなっ、ま、マジか……くっ、だが目の前に積まれるまでは信じねえからよ!」
「ありがとうございます! 分かりました! スサイエ、待ってるからね!」
「ああ! 俺はきっとやってみせるからな!」
所詮は強請りなんだけどね……




